これは、警視庁・捜査一課の取調専門チーム「緊急事案対応取調班=通称・キントリ」の活躍を描くTVドラマ「緊急取調室」シリーズ完結となる劇場版。
この完結編については、2022年に製作された当初内容が、安倍元首相銃撃事件を思わせるものであった事から改変を強いられ、翌2023年には、市川猿之助による自殺幇助事件、永山絢斗の大麻取締法違反と出演者による不祥事が相次ぎ、新たに構成とキャスティングを見直しての仕切り直しになったのが本作なのだ、と言う――劇中台詞ではないが「悪あがきです、最後の」と言う所だろう
出演は、天海祐希、田中哲司、速水もこみち、鈴木浩介、大倉孝二、塚地武雅らドラマ版レギュラー陣が続投。猿之助の代役は石丸幹二が演じる。監督は、本シリーズで演出を務めた常廣丈太。
超大型台風が連続発生、更に台風による大規模事故が発生し、非常事態宣言が発布される中、内閣総理大臣・長内洋次郎は、災害対策会議に10分遅れて到着するのだった……
さらに、その翌日、被災者の見舞いの為に病院を訪れた長内総理が襲われる――犯人の森下弘道は、その場で確保されたが、警視庁・警備部は、本件にテロ事件との疑義をかけ、緊急事案対応取調班の招集を決定。真壁有希子らのチームは取調べを開始するが、森下は犯行動機を語らないどころか、長内総理に会わせろ、と言う無謀な要求を繰り返す。
そして、森下の取調べが進展するうち、長内総理に“ある疑惑”が浮かび上がり……
本作は、TVシリーズ未見、劇場版だけを観た印象だが、結論を先に言うと、これはなかなか面白かった。
刑事ドラマと言えば、クライマックスが容疑者逮捕、となるのものが多い中、本作は逮捕後の取り調べが主であり、それも、定められた聴取時間内で、第三者的視点を入れても公正な可視化された環境下で、どのように供述を取って行くのかを見せるこのドラマ……いかにもテレビ朝日製作ドラマらしく、お堅い印象はあるものの、日本の犯罪捜査に一石を投じるものとなっているようには思う――もっとも、本作とて、法令の範囲内での理想像を描いているに過ぎず、先進国並みの取調べ環境とするなら、最低でもこれに加え弁護士同席が必要になるだろうが……
本作はTVシリーズの最後を締めくくる作品として位置づけられるものとなるため、緊急取調室と、その中での攻防をしっかり描くと共に、捜査員や関係者の出番を作る必要があるが、これが散漫な印象とならず、夫々が必要なピースとして機能するちゃんとした群像劇になっているのにも感心した――脚本は、評価の高い井上由美子か……なるほど。
気になったのは、クライマックスとなる緊急取調室に総理を誘う辺りの展開がさすがに苦しい事……こんなの話を聞くだけなのだから、官邸に押しかけてもいいんじゃないか、とは思うが、やはり緊急取調室に総理がいる、と言う絵が欲しかった、と言う事か……
あと、後述する台詞に繋げる意味での、自衛隊の防衛出動命令と、それにより救われた命(そこには真壁の娘も含まれるのだ)、のエピソードをもっと強調してもよかったように思う。
思わず感動してしまったのは、総理との対峙で、真壁の言う台詞、
「それでも、私たちがトップに仰ぐ人物は正しくあらねばならない」
……この台詞については「国益に資する人物に難癖付けて追い落とす偏執狂」と非難される朝日新聞/TV朝日の体質が出ている、と批判する声も多い――しかし、それは“当たり前”の事ではないのだろうか、と思わざるを得ない。
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