これは、元・NHKディレクターで、中国在住のドキュメンタリー監督で人気の旅行インフルエンサー・竹内亮による2024年の映画で、今回、竹内亮監督の「名無しの子」の公開に合わせ、劇場で再上映された。
中国の母なる大河・長江――上海、南京、武漢、重慶、雲南、チベット高原まで、広大な中国大陸を横断するアジア最大の大河だ。
この映画は、2011年に竹内監督がNHK時代に撮影した長江を巡る旅の再現で、10年前に会った人々を訪ねながら10年前に出来なかった、長江の最初の一滴を目指す6300kmの旅路を記録した2021年のドキュメンタリー・「再会長江」を劇場版として再編集したものとなる。
映画は、旅の終末に近い長江源流域のチベット高原で遭難しかけたエピソードに始まり、その場面での回想から、この旅を振り返るものとなる……旅の始まりの上海で、10年で明確にビルの密度が増した街の変化を見せ、赤壁など「三国志」の舞台となった地を巡り、世界最大規模を誇る三峡ダムの全景を捉えたカットや、3000tまでの船舶を上げ下ろしするエレベーターなど、あまり見た事がない光景を見せて、一気に長江の旅へ引き込んで行く……さすが人気の旅行インフルエンサー・竹内亮の手腕を感じる部分だ。
竹内亮は、フレデリック・ワイズマンなどとは真逆のアプローチで、竹内監督が積極的にカメラに映り、その反応を見せると共に、取材相手に積極的に関わって行く姿を見せる……こうしたやり方は、正にyoutuber的な振舞いでもあり、それもまた人気の一因であろうか?
また、面白いのは、この映画、中国映画でありながら、監督は主観的には日本語で話し、ナレーションも日本語で語られ、それに中国語字幕をつけると言うものになっている事……これが中国映画なのだから、これを通した事には感心するやら呆れるやら。
印象的だったのは、10年前、長江上流域の”シャングリラ”で出合った18歳のチベット族の少女・ツームー。彼女は、日本でもアイドルが務まると思われるほどのかわいらしさで、また、上海に連れて来た時の初心な反応がいい――本作では、それから10年を経た彼女に会いに行くのだが、これが本作のひとつのクライマックスと言っていいだろう。
先に述べたように、竹内監督は取材相手に積極的に関わるのだが、ツームーこそ、竹内監督によって人生が変わってしまったのだ。それは決して悪い事ではなく、引っ込み思案で、言いたい事も言えずに17歳で親の言うままに結婚した少女が、大きな夢を持つようになり、映画に出たのをきっかけに、その夢をかなえたのには感動した。
他にも、長江流域の開発による変貌、知られざる中国の環境対応、女人国・モソ族の現状など、日頃、まず知る事のない、中国の実態は、興味深くもあり、感動的でもあった。
映画は、最後、10年前に辿り着けなかった長江の最初の一滴に辿りつく……そこにも現れる地球温暖化による環境変化の影響に漠然とした不安を感じつつも、この雄大な大河と共に生きる、それが「中国」なのだ、と思い知らされる。
これは、色々な意味で圧倒される映画体験だった。
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