これは、ジェンダーギャップの少ない国として知られるアイスランドが、その変革のきっかけとなった前代未聞のムーブメント“女性の休日”を記録したドキュメンタリー。
監督は、ニュース&ドキュメンタリーでエミー賞を受賞したアメリカ人ジャーナリストのパメラ・ホーガン。
アイスランドは1980年に世界初の女性大統領が誕生し、2024年時点で、ジェンダーギャップ指数1位を15年連続で維持している、「ジェンダー平等が最も進んだ国」として知られている。
だが、かつてのアイスランドは、祖先のヴァイキング文化を色濃く受け継ぐ男性社会で、それを変えたのが、1975年10月34日。アイスランド全女性の90%が仕事や家事を一斉に休むと言う、“女性の休日”と呼ばれるムーブメントが起きたのだ。
「女に何が出来る」と鼻で笑っていた男性たちは、この事態に大混乱に陥り、アイスランドは、その日、機能不全となってしまった……そして、女性が社会に必要不可欠な存在であることが証明されたのだ――
この映画は、“女性の休日”を当時の記録映像と、当事者たちのインタビュー、そして、アニメーションで再現して、「その前」と「その後」を描いて行く――これは、正に絶妙のタイミングであったろう。50年前だから当事者はまだまだ現存しているし、記録映像にTV・ラジオなど報道記録も数多く存在するからだ。
映画は、パメラ・ホーガン監督のセンスでもあるのだろうが、決して力まず、むしろ軽妙に、まるで楽しい出来事であったかのように、“女性の休日”に向かう、それ以前から、当日までを語って行く。
そして、本作には、ドキュメンタリー映画の力を感じた。記録映像に残る、“女性の休日”の集会に集まった女性たちの輝くような表情は、正に心震える感動を与え、これは再現不可能だと思わせる――これが正に、「報道」の意義であり、その場で起きていた事実を記録し、そして伝える事の価値なのだ。
また、その背面で起きていた、国家としてのアイスランドの機能不全……ここまでやった女性が凄いのか、女性頼りの男たちが情けないのか……これが現実に起きた事にも驚かされる。
エピローグである「その後」の物語も感動的だ――インタビューされる女性のプロフィールを映画は示さずに進めるのだが、これが伏線となっている。
「弁護士になりたい」と言ったのに「女の子には法衣ではなくウェディングがお似合い」と言われた少女は、最高裁判事となった。
船乗りに憧れ、夢は「船長になる」だった少女は、「女に舵取りは出来ない」と言われても諦めず、やがて、大統領となって世界の荒波の中でアイスランドの舵を取る事になるのだ。
これが感動的なのは、人の可能性を見せる物語である事で、その可能性の発露の為には、平等で公正な社会が必要……そして、それを求める人が、自らの手でそれを勝ち取った、そこに痛快さと感動があるのだと思う。
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