これは、カナダ人作家キャサリン・エルナンデスの実体験に基づく小説「Scarborough」を、「Frame394」(日本未公開)でアカデミー賞短編ドキュメンタリー部門にノミネートされた、シャシャ・ナカイとリッチ・ウィリアムソンの2人が監督して映画化したもの。
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多様な民族の人々が暮らす、カナダ・トロント東部に位置するスカボロー。そこに暮らす3人の小学生の子供たち。
父親の暴力から逃げてこの町に来たフィリピン人のビンには、更に人に言えない悩みがあった。先住民のシルヴィーは、4歳になる弟に発達障害があって未だに喋れず、終日母親による世話が必要で、父親も多動症で事故ばかり起こして働けず、シェルター暮らし。そして、母親にネグレクトされ、粗暴な父親に押し付けられたローラは、文字が読めず、他者とのコミュニケーションにも支障を来していた。
そんな3人が安心して過ごせるのは、献身的なヒナ先生が担当する公立の教育センターだったが……
この映画、3人の子供たちが主人公、と言う事で、日本映画の「ふつうの子ども」のような映画、と思っていると、この映画、状況がまったく「普通じゃない」――なにしろ、冒頭から、ビンと母親が父親のDVから逃げ出す夜逃げと、ローラと母親の、これまた夜逃げに始まるのだ。
これは社会の底辺で、貧困や暴力など、様々な障害に虐げられながら生きる子供たちを描くものなのだ。
この物語を、ドキュメンタリー映画出身のシャシャ・ナカイとリッチ・ウィリアムソン監督は、まるでドキュメンタリー映画のような撮り方で見せて行く……そうして、子供たちの自然な表情を収めて行く一方で、苛酷な現実や暴力に晒されるのも描いているのだが、ここでは、ローラ役のアンナ・クレア・ベイテルの演技に感嘆した――子供同士、遊んでいる時に見せる笑顔の一方で、母親に殴られ、父親に怒鳴られる時に見せる、魂の抜けたような虚ろな表情……DVを受けた子供が見せる、精神的な逃避状態に入った事を感じさせる目の演技、これは天才だろう――実際、彼女は4歳で子役デビュー、現在では脚本や小説を執筆していたりするそうだ……
そんなローラが、文字と言葉の概念を学び、初めて文字を読んだシーンは、この映画で最も感動的なシーンだろう――しかし、その後が……ではあるのだが。
映画は、そんな困難の中を生きる子供たちだけでなく、親や学校など、大人たちをも子細に描いて行く……多民族共生の中で生じる差別や偏見、大人の身勝手さや、親の資格を問われかねない未熟さや粗暴ぶり……また、規則に縛られたり、見栄を張ったりした結果が、子供たちにとって理不尽さを生んでしまうなど、大人の愚かさを嫌と言う程見せるのだ。
勿論、サナ先生のように、子供たちを第一に考える大人もいるし、勿論、子を思う親心も描かれる……それが生んだある奇跡は感動的でもある。
映画としては粗削りで、時間軸を入れ替えて描く部分など判り辛い描写もあるし、子供(特にローラ)への暴力など、憤りを覚えずにはいられないようなシーンもあって、これは万人向けとは言えないだろう。
しかし、しっかりと時間をかけた撮影で、子供たちの生き様と成長を見せて行く、見応えがあり、力の入った映画だと思う。
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