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2025年10月23日21:30

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「ホーリー・カウ」感想

 これは、フランスの畜産農家を舞台に若者たちの日常を描いた青春映画。
 監督は、ジュラ地方の農家育ちの新鋭ルイーズ・クルヴォワジエ。初長編監督作の本作で、数多の映画祭で新人監督賞を獲得し、昨年のカンヌでも「ある視点」部門のユース賞を受賞している。
 原題の“Vingt Dieux”はフランス語で「信じられない!」といった驚きや感嘆を表す言葉で、邦題ともなっている英題の“HOLY COW”も同じ意味のスラングだと言う。

 フランスを代表する熟成ハードチーズである、コンテチーズの産地であるジュラ地方で、18歳のトトンヌは、仲間と酒を飲み、自由気ままに過ごしていた。
 だが、ある日チーズ職人の父が飲酒運転による事故で亡くなり、トトンヌは7歳の妹の面倒を見ながら、一家を支える事態になる。トラックやトラクタ、チーズ作りの設備を売り払い、トトンヌは村のチーズ工房で働くが、未熟さに加え暴力沙汰を起こしてすぐにクビになってしまう。
 そんな時、チーズのコンテストで優勝すれば3万ユーロの賞金が出ることを知り、トトンヌは、悪友と共に大金をせしめるべくコンテチーズを作ることにする。
 村でも評判のマリー=ルイーズの牧場から牛乳を盗み、機材は売り払ってしまったので鍋ひとつでチーズ作りに奮闘するトトンヌだが……

 この映画、トトンヌが手作りでチーズを作ろうと奮闘するのを描くのだが、映画の方も同様。トトンヌ始め、キャストには地元の演技未経験者を起用――それでも、マリー・ルーズ役のマイウェン・バルテレミはセザール賞新星女優賞を獲得……実際にジュラ地方で農場を営む監督の家族が音楽や美術スタッフとして参加し、正に家族がかりの「手作り」で、農村のリアルな暮らしを映し出している。

 トトンヌは遊び呆けているけれど、不良には至らない、田舎のやんちゃ坊主、と言った感じで、顔立ち自体はよく見るとなかなかの美少年。根は真面目で父親譲りの職人気質であり、その辺りがマリー=ルイーズに情をかけて貰えた理由だろうか。
 だが、とにかくトトンヌはやる事成す事、雑でいい加減……チーズを作る、と決めても(当座の生活には困らないくらい)金はあるのに、ろくに準備もしないで取り掛かり、牛乳も盗んで来る始末……付け焼刃のやっつけ仕事に、嘘と言い訳ばかりのトトンヌはさすがに格好悪いし、いい所がまるでないのだ――だが、若い頃と言うのは、このように無様でいい加減なのだ、と、残酷なまでにリアルに、正に地に足つけて描いているのは、この映画の手作り感覚故の事か、ルイーズ・クルヴォワジエの女性としての「男の子なんてのはこんなもの」と言う達観だろうか?――この辺り、何処かマリー=ルイーズの視点と重なっているかも……

 映画は。酪農家の生活、手作りチーズの製造などリアルに描くが、ドラマとしては盛り上げない。
 最後になんとか作り上げたチーズにしても、「熟成が足りない。食えたもんじゃないな」と言われる始末なのだけど、「歯ごたえは悪くない」と言う一言に希望を滲ませた程度。
 それでも、仲間との友情を取り戻し、マリー=ルイーズの“Vingt Dieux”な笑顔で、トトンヌもちょっとは“大人”になれただろうか?
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