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2025年10月14日23:45

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「ワン・バトル・アフター・アナザー」感想

 これは、ポール・トーマス・アンダーソン監督が、主演のレオナルド・ディカプリオをはじめとする豪華キャストで作り上げたアクション・サスペンス。
 フォト
 近未来、政府の排外主義政策が布かれたアメリカで、移民解放運動の過激派・“フレンチ75”で爆弾闘争を繰り広げていたボブだが、ひとり娘のウィラの誕生後は一線を退き、隠遁生活を送るうち、酒と麻薬に溺れるようになっていた。
 そんなある日、ウィラが武装警察に追われ、ボブと“フレンチ75”の残党は、ウィラを守る為の戦いに身を投じる事になる。
 そして、異常な執着でウィラを追う、武装警察の指揮官“ロック・ジョー”の狙いは……

 ポール・トーマス・アンダーソン、通称PTAの映画は、傑出した若しくは特異な人物を中心に据えた時に難解に思える重厚なドラマと、軽妙な群像劇の何方かになるように思うが、これは完全に後者の方で、決して難しく構える必要のない、追いつ追われつの闘争、もとい逃走劇。
 移民を強圧的に取り締まる国家権力と、それに対抗する反体制組織、と言う構図から、本作に対しては、やれ「反トランプ」、「反体制」だの、或いは「リベラル傾倒」だと言われたりもするが、実は、そうした政治風刺や、政治思想的なメッセージは希薄――それを物足りなく思う人もいるのだろうが、本作にとっては、それらは所詮、極端なキャラクターを登場させる為の“背景”でしかない、と思った方がよいだろう。

 描かれるのは、立場と個性の著しい食い違いが見せる悲喜劇、だろうか――快楽主義者で支配欲の強いサディストの反体制闘士、マゾヒストの武装警察指揮官、家族愛に溢れる爆弾魔、などなど……もう、上手く行くはずがない、と言う齟齬がそこにあり、それが生み出す軋轢を、ノンストップの逃走劇の中で見せて行くのだ。
 この構図で描かれる悲喜劇に、乗っかってしまえば、これはもう、極上の映画体験と言えるだろう。スピルバーグが絶賛した、と言うのも頷ける。
 その一方で、「反体制的」とか「政治思想が描かれていない」と些細な事で引っかかって楽しめない(そして、それは決して少数ではない)とか、昨今の社会の“ホワイト化”により「テロリストは許されない」と、感情的に排除してしまうのは勿体ない事のように思える。

 演者としては、やはりレオナルド・ディカプリオを誉めるべきだろう。まるで、ジャック・ブラックが演るのがお似合いのような、ウザくて、不器用で、小心者のおじさんになり切っているのは、かつての彼を知る者を驚かせるだろう。
 勿論、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロの曲者っぷりも申し分なく、そして、冒頭の展開を正に支配するテヤナ・テイラーには文句のつけようもない。
 その中で、新鮮な存在感を見せたのがウィラ役のチェイス・インフィニティ。“無限を追いかけて”と言う、それが本名だと言うのだから恐れ入る。
 (両親が「トイ・ストーリー」の熱烈なファンだったらしい)
 曲者揃いのキャストの中で、名前に恥じぬ立派な存在感を見せていたと思う。


PS
 タイトルの「ワン・バトル・アフター・アナザー」は、言い回しとしては「一難去ってまた一難」と言う感じだそうで、「バトル」と言ってる事から、直訳すれば「戦い、また戦い」となるだろうか。
 これはさすがに気の利いた邦題をつけて欲しかった所だが……
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