これは、コロナ禍に見舞われた2020年を生きる中高生たちの青春を描く辻村深月の同題小説を実写映画化したもの。
出演は、「大きな玉ねぎの下で」の桜田ひよりの他、「おいしくて泣くとき」の水沢林太郎、「怪物」や「国宝」の黒川想矢、「PERFECT DAYS」の中野有紗、「違国日記」の早瀬憩ら、実力ある若手が揃った。
監督を務めるのは、本作が初の劇場長編映画となる山元環。
2019年、茨城県砂浦第三高校に通う溪本亜紗は、宇宙飛行士を目指し、天文部に入部。
だが、2020年、コロナ禍により部活動は制限されてしまう。だが、亜紗は諦める事無く、天文部の山崎先輩や凛久と共に、夏の天文部イベント“スターキャッチコンテスト”のオンライン開催を思いつく。
そしてそれは、東京の孤独な中学生の真宙や、長崎の五島で孤立に苦悩する円華ら全国の学生たちが参加するものとなって……
“スターキャッチコンテスト”とは手作りの天体望遠鏡で、指定された天体を如何に早く望遠鏡の視野に捉え、ピントを合わせるか(これを「導入」と言う)を競う、モデルとなった土浦高校で実際に行われているイベントなのだそうだ。(実際には空気の澄む冬に行うらしい)
天体観測は、当然屋外で行うし、星は空を見上げれば、何処でも観られる。各地元からリモートで参加するなら密にもならない、と言われてみればコロナ禍でも出来るイベントなのだが、仕事上のリモート会議でさえ試行錯誤しながらやっていた2020年に高校生がなかなか思いつける事ではないだろう。
ただ、この映画、中心となるのは、この“スターキャッチコンテスト”ではなく、コロナ禍における「青春」なのだ――俗に“コロナ世代”とか言われる、コロナ禍で学生時代を過ごした彼らだが、「かわいそう」と憐まれるだけの存在ではなく、それでもちゃんと「青春」していた、と言う、変則的な「青春映画」となっているのが本作だと思う。
また、本作を安易に恋愛ものとしていないのも好印象。亜紗と凛久は、同い年の男女で共に同じ時間を過ごしているけれど、そこにあるのは恋心ではなく、宇宙に対する夢と憧れをを共有する同志としての絆なのだ。そして、そんな凛久を月に例えて「一番近くて遠い星」と言い、その裏側を決して見せない事に重ねて、終盤のドラマに繋げて行くのも巧い。
また、本作は、かなり「君の名は。」を意識しているそうで、アニメのように夜間でも風景や人物をしっかり見せる為に、昼間撮影した映像を画像処理で明度を落として空に星空を合成するなど凝った事もやっているし、望遠鏡組み立てキットの発送と受け取りを望遠鏡視点で見せるスタイリッシュさや、繰り返される円のモチーフ、それに音楽の使い方など、正にアニメのように作り込まれたシーンや見せ方が散見される。それを「まるでTV−CMのよう」と批判する人もいるが、この映像センスは評価して然るべきものと思うし、その上で語るべきドラマが出来ているならば、問題にするようなものではないと思う。
気になったのは、ロケに十分な時間をとれなかったせいか、綺麗な空が撮れているのが案外少なく、曇天の空が多い事……でもまぁ、それが実写の難しさか……
また、“スターキャッチコンテスト”も、実際の競技とは少し異なるものであるようだし、最後の「ISS導入」は、物語上必要なのは判るが、ちょっと無理を感じた。
それでも、最後に交わされる「よいお年を!」の声かけは感動だ。
抑えられ、或いは孤立させられ、先の見えない日々を過ごしても、それでも「希望」を胸に前に進む――それは、そんな「近くて遠い」コロナ禍の青春を描いた見事な青春映画だと思う。
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