mixiユーザー(id:124952)

2025年05月24日08:51

62 view

「新世紀ロマンティクス」感想

 これは、巨匠ジャ・ジャンクーが、21世紀の幕開けからの20年を通して、中国社会の変化を浮き彫りにした一大映像叙事詩。

 新世紀を迎えた2001年、チャオは、「一旗上げる」と言って大同を出て戻らない恋人のビンを探し、奉節へ向かう。
 2008年、長江・三峡ダム建設のため、百万を超える人々が移住を余儀なくされる混乱中、ビンは仕事を求めてマカオに隣接する経済特区・珠海を訪れるが……
 それから更に時は流れ、中国が目覚ましい経済発展を遂げた2022年、2人は再び大同で出会う……

 本作の主演は、ジャ・ジャンクー監督の妻で、彼の映画のミューズでもあるチャオ・タオ。本作は、そんな彼女を主役に、「青の稲妻」や「帰れない二人」などで撮影した素材など、過去の映像をコラージュして21世紀の中国を描いている。
 先日公開された「HERE」が、CGを駆使して作り上げたのと同じ事を、実際に22年の歳月を重ね“本物”で描き切る力技は、やはり中国、いや、ジャ・ジャンクーならでは、と言う所か……
 演じるチャオ・タオを始め、演者が重ねた歳月や、セットやCGでなく当時を記録した映像には、“本物”ならではの重みと力強さがあり、その変化にはあらためて驚かされる。

 本作のコラージュされた映像はストーリー性が希薄だし、しかも、台詞も少なく、まるでサイレント映画のように台詞がテロップで示されたりもする……だが、この作品が描こうとするものを理解する事は容易いと思う。
 画面に映し出されるのは、長江とチャオ・タン……もう、これだけでジャ・ジャンクーだという事が判る―― 静かだけど、決して揺るがない作家性……押井守に通じるものを感じる。押井守の「犬と鳥と橋」に対し、ジャ・ジャンクーは「河と女」……古今東西を問わず、映画の重要なモチーフであるのは共通している。
 そして、共通するのは「変わりゆく街と社会への哀歌」だろうか……

 映画は、急速な近代化・現代化によって変容する現代中国をスクリーンに焼き付け、そこに流れる時間と変化する社会、その中から零れ落ちて行くものたちを描く。それに重ねられる普遍的な女と男のメロドラマ……そして、最後は「それでも前を向く」と、まとめあげた辺りに力強さを感じる映画だった。
2 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2025年05月>
日 月 火 水 木 金 土
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

過去の日記

2026年
2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年