これは、今年のアカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞を受賞するなど、世界各地の映画祭で高い注目を集めている話題のドキュメンタリー映画。
パレスチナ人青年バーセル・アドラーとイスラエル人ジャーナリストのユヴァル・アブラハームが、イスラエル・ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住区の実情を4年に渡って記録したものとなる。
尚、監督には、彼らのほか、ハムダーン・バラールとラヘル・ショールが加わり、パレスチナ人2人とイスラエル人2人の計4人が名を連ねている。
ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区“マサーフェル・ヤッタ”で生まれ育ったパレスチナ人青年バーセルは、パレスチナ人居住区へのイスラエル人入植により、村人たちの家が壊されていく故郷の様子をカメラに記録し、世界に発信してきた。
そんな彼の前に現れたのが、イスラエル人ジャーナリストのユヴァル。非人道的なイスラエル政府の行いに心を痛めていたユヴァルは、バーセルの活動に協力しようと、危険を冒してこの村にやってきたのだ。
同じ想いで行動を共にし、少しずつ互いの境遇や気持ちを語り合ううちに、ふたりの間には思いがけない友情が芽生えていくのだが……
イスラエル領内のパレスチナ自治区は東西二つの地区に分断されている。西南部の狭くて細長い地区がガザで、東側はそれよりずっと広い面積の地域で、ヨルダン川西岸地区と呼ばれている。
ガザは現在紛争の最中にあり、ニュースでも度々取り上げられるなど国際社会からの注目度も高い。では、ヨルダン川西岸地区はどうなのか?――確かに紛争は起きていない。だが、西岸地区のパレスチナ人たちも、酷い目に遭わされている、と言う事をレポートしているのがこの映画なのだ。
西岸地区では今現在も、イスラエル軍と入植者による不法な土地の収奪が進められている。軍と政府は1枚の令状で住居を取り壊し、学校を破壊し、水道を切断し、井戸をコンクリートで埋める。
旧約聖書の創世記には、ユダヤ人の父祖・イサクが掘った井戸を、ペリシテ人(=パレスチナ人)たちが埋めてしまう話が出てくるが、それを立場を変えてイスラエルは行っているのだ。
パレスチナ人には異議を申し立てる事も出来ない。抵抗すれば拘束され、逃げ出そうにも居住区は壁とフェンスで封鎖されている。留まれば入植者に銃で追われる……結果、獣のように電気も水もない洞窟で暮らす羽目になる。
それがヨルダン川西岸地区の現状なのだ。
バーセルは、それをただ記録するだけ。世界に発信しても、救いを求めても、手が差し伸べられる事はない。そんな彼の行為に、イスラエルの青年、ユヴァルが同情して協力する。イスラエル人なのに?……いや、当然だろう。狂っているのは国であり組織なのだ。イスラエルの人が狂っている訳ではない。
そんな彼らの映画は世界の各地で高く評価された。だが、現状は変わらない――共同監督のハムダーン・バラールは、アカデミー賞受賞後に、入植者に襲撃され、軍に拘束されてしまった。
ジャーナリズムと映画の限界、と言うか無力さを感じるが、それでも撮り続けるし、語り続けるしかない……恐らく、それこそが正気を保つ術なのだろうから。
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