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2025年05月02日23:16

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「ボサノヴァ 〜撃たれたピアニスト」感想

 これは、スペインのアニメ作家、フェルナンド・トルエバ監督とハビエル・マリスカル監督が、ボサノヴァ黄金期のブラジル人ピアニスト、テノーリオ・ジュニオルと、彼の失踪の謎に迫る長編アニメーション。
 声の出演は、ジェフ・ゴールドブラム。

 ニューヨークの音楽ジャーナリスト、ジェフ・ハリスは、1959年、ブラジルのボサノヴァが世界の音楽を変えた、そのムーブメントについて調べるためリオデジャネイロを訪れた。彼はそこで、ボサノヴァ音楽で重要な役割を果たした天才ピアニスト、テノーリオ・ジュニオルの存在を知る。
 だが、彼はブエノスアイレスでのツアー中に謎の失踪を遂げていた――何時しかボサノヴァ音楽から、テノーリオの生涯と謎の失踪を追うようになったジェフ・ハリスが辿り着いた真実とは……

 この映画、ジェフ・ハリスと言う架空のジャーナリストを主人公に、残された既存の(そして、恐らくは本物の)インタビュー音声を使い、アニメで架空のドキュメンタリーを作ってしまう、と言う異色の内容となっている。
 テノーリオが活躍したのは1960年代で、十分な映像資料が残っていないが、アニメーションならば絵で書いてしまえばよく、現存する音源を使えば、当時の演奏の様子も再現出来てしまう……一種のフェイク・ドキュメンタリーではあるが、語られている内容は事実に沿っている、と言う何とも奇妙な内容だ。

 取り組みとしては面白い、と思うが、自分にボサノヴァ音楽に対する知識と、音楽としての馴染がなかったせいで、ボサノヴァのポピュラー音楽史における位置づけを語る前半はちょっと退屈にも感じた。
 後半、テノーリオ失踪の背景にある、アメリカの対共政策が後押しした中南米の軍事独裁政権が生み出した悲劇を描く辺りで、自分としては盛り返した感があった――当時、南米の軍事独裁政権による強権的な反共運動は、共産主義者ばかりか、多くの学生やアーティストなどの自由を求める人々をも犠牲としていった。後に「汚い戦争」と呼ばれる災厄のような流れにテノーリオも呑み込まれてしまったのだ。

 ポップな印象を与える絵柄と、タイトルのせいもあって、ミステリー要素のある娯楽作を期待していると裏切られるだろう。
 内容としては興味深い部分もあり、ドキュメンタリー映画としては異色の存在ではあるが、これは客を選ぶ映画ではないか、と思う。
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