これは、「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督が、ハリウッドで手掛けたSFエンターテインメント大作。
原作は、エドワード・アシュトンのSF小説「ミッキー7」。
出演は、「TENET テネット」のいロバート・パティソン、「ホイットニー・ヒューストン」のナオミ・アッキー、「ミナリ」のスティーヴン・ユァン。
近未来、人体コピー技術が開発されるが、人道的観点から、その実用は地球上では認められなかった。
そんな折、マーシャル連邦議員が指揮する恒星間移民計画が立ち上がり、借金取りに追われるミッキーは、「何でもいいから」と契約書を読まずに計画に参加する事になる――だが、その任務とは、人体コピー技術を用い、必死の任務や人体実験に供される苛酷なものだった……
本作は、現実社会への強烈な、そしていささか直接的な風刺作品であり、同時に悪趣味なブラックコメディとなっている――その意味で、その意味で、本作は観客をかなり選ぶだろう、と思う。
正にトランプ大統領をカリカチュアライズしたような空虚なポピュリストの指導者と、その強権支配を打ち砕くのが黒人女性と言う図式もそうだし、移民星で遭遇した平和的な先住知的生命体への差別と処遇など、これは何を意味するのか、と言う描写がこれでもか、と盛り込まれている。
惜しいのはそうした物語設定と背景の中で、中心となるべき、人体コピーにおける人としてのアイデンティティを問う哲学的なテーマが何時しかすっ飛んでしまい、これを活かせていなこと。
特に中盤、17番目のミッキーが死ぬ前に18番目が作られて、2人が同時存在するようになった、それをギャグとしてしか扱っていないのは、SFとしては勿体ない限りだ。
また、コメディでありながら、本作はテンポが悪く冗長なのも問題だと思う――確かに、ポン・ジュノのシーンで見せる抒情性は理解するし、情感たっぷりに描く韓国映画ならではの描写の中では、それもまた情緒と余韻を感じさせるものと思うが、コメディならばもっとテンポよく見せて欲しかった所だ。
あと、クライマックスの展開は、異星の生命体の外見がほぼ王蟲であるのに加え、展開も「風の谷のナウシカ」そのまま、とは……ここでのコピーの扱いの軽さも物足りなく、これなら人体コピーと言う設定がなくとも成り立つ話なのでは、と思ってしまった。
本作が豪華なキャストで、大仕掛けのSF大作となったのは、「パラサイト」の大成功があったからだろうが……ポン・ジュノ監督、この大舞台をいささか持て余しているようにも感じた。
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