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2024年12月15日16:47

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「山逢いのホテルで」感想

 これは、「ボレロ 永遠の旋律」のジャンヌ・バリバール主演で贈る大人のラブストーリー。
 監督・脚本は、ファッションデザイナーとして活躍した後、本作で長編監督デビューを果たしたスイスの新鋭マキシム・ラッパズ。

 スイスの小さな町で、障碍のある息子を一人で育てる仕立て屋のクローディーヌ。
 毎週火曜日、白いワンピースを着た彼女は山間のダム湖のほとりにあるホテルで、一人旅の男性客を選んでは、その場限りの情交に浸るのだった。
 そんなある日、ある男性との出逢いが、彼女の日常を大きく揺さぶることに……

 この映画だが、子供のあるシングルマザーがその場限りの情事にふけると言う、ありがちな物語を、雄大な風景と、繊細に作り込まれたドラマ、そしてジャンヌ・バリバールの熱演で、見応えのあるメロドラマとしている。
 物語の軸となるのは、人間の持つ二面性で、本作では「母」と「女」と言うふたつの顔を、白いワンピースと言うモチーフで描き分けている――ダム湖のある麓の村から登山鉄道で山を上り、そしてまた、ダムの下へとケーブルカーで下る、その上下運動にも意図があるように思うのだけど、そこはちょっと読み切れなかった印象……とにかく、本作のマキシム・ラッパズ監督は、映像に語らせるタイプで、新人ながら己の表現に自信を見せ、説明を最小限にするものだから尚更だ。

 クローディアを演じたジャンヌ・バリバールだが、濃厚なラブシーンやヌードシーンもあり、さすがに老いを感じさせてしまう部分もあり、正直、もっと若い女優が演じていれば、と思わなくもないのだが、フランスでは「50歳過ぎた女優には重要な役が回って来ない」と言う風潮を打ち消すように本作主演に挑んだ、その決意を思えば、さすがに何も言えなくなってしまう。

 物語はクローディーヌが、ひとりの男性と「その場限り」と言うルールを破った事で迎える人生の転機を描く――それまで、ふたつの顔を使い分け、情交相手には自分を語らず、息子には物語を語って、「真実」を己の中に閉じ込めて、一方的なコミュニケーションに徹していたクローディアが、最後、新たな一歩を踏み出せずに「母」に戻ろうとした時、正にそのディスコミュニケーションによって居場所をなくす、と言う展開は、クローディアの“ふたつの顔を持つ人生”に対する代償でしょうか……最後の彼女の絶叫には、それを受けた衝撃と絶望が込められているように感じた。
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