これは、中條ていによる同題小説を、「彼女が好きなものは」の草野翔吾監督が黒木華主演で映画化したもの。
本作は、「台風家族」の市井昌秀が脚本の骨組みを作り、「ツレがうつになりまして。」などの故・佐々部清監督が魂を注いだ企画を受け継いで完成させたものだと言う。
ウェディングプランナーとして働く秋村梓は、“医者の不養生”よろしく交際中の小山澄人との結婚に踏み出せないでいる。
そんな引っ込み思案の梓を、時に支え、共に歩んで来たのが親友でカメラマンの郷田叶海だったが、叶海は、海外での取材旅行の最中に事故で命を落としてしまう。
しかし、梓は、叶海の死後も、生前、叶海と交わしていたトーク画面に日々の何気ない出来事や、思う事を記したメッセージを送り続ける――だが、叶海の不在は梓を苦しめ、ある日「叶海がいないと前に進めないよ」というメッセージを送る。
そして梓は気づく、読まれるはずのない送信済みのメッセージに既読がついている事を……
原作小説は未読ですが、原作は複数の主人公それぞれの視点から別々の物語が語られ、最後に合流するオムニバス形式の構成との事だが、映画は、黒木華が演じる秋村梓を軸にして、彼女が直面する現実と、時に過去を振り返りながら描く、と言う構成だが、実は、彼女は“狂言回し”だと言うのが、この映画の工夫だろう……実は、この映画の中心にいるのは、冒頭で亡くなる叶海なのだ。叶海の死によって、ぽっかりと空いた穴に、ある者は引き寄せられ、ある者は覗き込んで、その穴をやがて埋めて行く事になる――叶海の両親は、彼女の歩みを確かめる事で、新たな出会いを得、梓は、叶海の想いを引き継ぐようにして人生の決断をする事になる……これは、そんな風にして、人の「死」と言うものを描こうとしているように思えた。
だが、この映画、そうした特色ある構成と、実力あるキャストに支えられてはいるが、出来はあまりよくないのでは、と思う。物語の転がし方が拙く、語り口も朴訥だ。ただ、全編を貫く真摯さと、人の心の動きを丁寧に切り取る演出で、奇跡のような出会いを、“叶海が引き寄せた縁”として自然に受け止めさせるのだ。
これは確かに“いい映画”であり、中盤以降は目頭の熱くなるシーンの連続で、最後には間違いなく感動させられるだろう。
PS
エンドロールで流れるテーマ曲「夜明けのマイウェイ」を歌うのは主演の黒木華。本職の歌手のような巧さはないが、正に劇中で梓を演じたように真摯に歌うその声もまた心を打つものだった。
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