これは、共に2度のオスカー受賞歴を持つ名優、マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンの50年ぶりの共演作にして2人の引退作。
監督は「ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬」のオリヴァー・パーカー。
2014年6月、イギリス。ブライトンの老人ホームで、寄り添いながら日々を過ごす老夫婦、バーナードとレネ。
バーナードはノルマンディ上陸作戦の70周年記念式典に応募していたが、それは叶えられなかった。失望するバーナードだったが、レネの言葉に背中を押されるように、ある決断をする――
これは、実話の映画化で、映画に描かれているのは概ね事実そのままなのだと言う。
物語は、戦争でトラウマを抱え込んだ男が、誰にも明かせなかった、その過去に向き合う、と言うもの――配給会社は、本作を夫婦の絆を確かめる為に年老いた夫が旅に出る「君を想いバスに乗る」や「ハロルド・フライのまさかの旅立ち」と同じような映画だと宣伝しているが、その内容は大きく異なっており、観る人を戸惑わせるのではないだろうか?
マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンの2人だが、ほぼ90歳と言う高齢であり、さすがに衰えは隠せないが、それでもどこか1本筋の通った矜持と、ユーモアを忘れない辺りはさすがの一言に尽きる。これぞ、正に名優の最後の花道と言えるだろう。
バーナードが抱えるトラウマとはノルマンディーの戦いでの彼の指示で言葉を交わしたひとりの若者が死に、そして、彼の願いも叶える事が出来なかった、と言う悔恨……「あの時、彼の代わりに自分が死ねばよかったのだ」と言う想いが、70年もの間、バーナードを苦しめている。
それは、ノルマンディへの旅路で知り合った空軍兵や、式典のボランティアスタッフの若い傷痍軍人によって補強される……戦争とは、生き残った者にも、大きな傷跡を残すのだ、と……
この映画を観て連想したのは、「プライベート・ライアン」だ。救出に向かった兵士の命を犠牲にして帰還したライアン二等兵の戦後も、このようなものだったのだろう、と……
バーナードは戦没者墓地で亡くなった兵士に詫びるのだけど、それで彼の心が癒される事はない――彼を救うのは、彼を待ち続けた妻・レネなのだ。「あなたの人生は無意味じゃない」……そんな妻と共に見る朝日に、自身の人生を肯定する事が出来たバーナードの姿に、静かな感動があった。
PS
マイケル・ケインは朝鮮戦争に従軍しており、その体験は彼に大きな心の傷を残したらしい――この映画が、そんな彼の心を癒し、また、その想いを後世に伝えるものになる事を願って止まない。
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