これは、自主製作の中編映画ながら、海外の映画祭で各種賞の受賞に輝くなど話題となった映画。
監督は、宮城県仙台市出身の映像ディレクター、堀江貴。出演は、元AKB48メンバーで、仙台市出身の岩田華怜、「侍タイムスリッパー」の冨家ノリマサ。
深夜の駅前で客待ちの間、タクシードライバーの遠藤は、同僚から最近話題の幽霊譚を聞く――人気のない街頭に立つ若い女性が、津波に被災した浜町まで乗せて行って、と言うのだ。
終電の時間も過ぎ、流しで客を拾おうと走り出した遠藤は、噂のあった通りの辺りで女性客を乗せた。女性は顔を隠すように乗り込んできて、浜町まで行くよう告げた。
走り出したところに小さな女の子とその母親が飛び出してきて、どうしても乗せて欲しいと懇願。やむなく同乗させると、二人の目的地もまた浜町だった……
東日本震災の被災地が舞台、しかも、冒頭から前振りがあって、これが幽霊譚と言うのは察しがつく。物語としては、ひとひねりあるのだけどそれもまぁ、驚くほどの仕掛けではない。そもそも、この物語、幽霊譚だけど怖くはなく、震災による津波が奪った想いで、幽霊となって彷徨う魂を描くものなのだ。
それは、渡せなかった手紙、救えなかった命、帰れなかった家――そんな想いが、霊魂を、この地に留まらせるのだが、それは生きる人も同じなのだ、と言うのが、この映画ならではの部分であり、「3.11」に縛られ、頑張れと言われてももう頑張れない、と言う想いを吐き出すシーンにはハッとさせられた。
そうした、今語るべきテーマを持つ本作だが、その語り口は朴訥で、しかも、55分しかないのに冗長に感じるのはちょっと気になった所だ。
映画は、最後、昇る朝日に背を向けて歩き出す主人公の姿で終わる。背を向けたのは、もうひとつ、海――そこに込めた様々な想いを感じつつ、それでも前を向いて歩き出す、その意思には静かな感動があった。
PS
映画エンドロールには、震災がれきから掘り出された家族の写真が映し出される……津波が奪った想いと、それでも生きて、紡がれて行く想いの数々に胸を打たれる。
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