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2024年11月04日23:33

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「十一人の賊軍」感想

 これは、「仁義なき戦い」で知られる脚本家・笠原和夫の残した集団抗争時代劇でありながら、埋もれて来た脚本を、「孤狼の血」シリーズの脚本家・池上純哉と白石和彌監督コンビが製作した映画となる。
 出演は、山田孝之、仲野太賀、阿部サダヲ、野村周平と個性的なキャストが揃った。

 1868年、戊辰戦争の最中、北陸から新潟へ進攻する薩摩・長州を中心とする新政府軍(官軍)を迎え撃つ幕府軍は奥羽越列藩同盟軍を結成――その中で、新潟を領地とする新発田藩は、戦に巻き込まれる事を避けるべく、密かに官軍と通じて裏切りを画策。
 幕府軍と官軍が城下で衝突するのを避けるべく、捕らえられていた罪人を長岡藩の残党に見せかけた「決死隊」に仕立て、官軍進路の砦に配置して時間稼ぎを行う事にする。
 そして、十人の罪人たちは、「砦を守り切ったら無罪放免」と言う言葉を信じて国境の砦に向かったが……

 集団抗争時代劇とは、時代劇の定番である「主人公と仇敵との対決」に対して、集団同士の戦いを描いた時代劇であり、刀を振るった小規模な戦争映画と言ってもいい。代表的なのは工藤栄一監督の「十三人の刺客」であり、本作も、そのタイトルからも同路線を狙ったものの、侍の矜持を持たず、大儀さえ知らずに死地に放り込まれる罪人たちの戦いが、あまりに時代劇の方向性からズレていた為にボツにされたものと思われる。
 実際、本作を観た観客からは、本作が「故郷を戦乱から守って散った感動的な物語」でない事を批判する声も少なくない――だが、戦いを好み、戦争を美化する令和の日本人と異なり、戦争の記憶を残していた昭和の日本人はかくも反戦的であり、大儀なき戦場で死ぬ空しさこそ映画が描く価値があるものだった、と言う事は理解しておく必要があるだろう。
 これは、笠原和夫作品の「二百三高地」や「零戦燃ゆ」に通じるもので、何も知らない庶民が、上層部の思惑に振り回され、死んでいくものなのだ。

 そんな映画は、155分にもなる大作で、しかも、物語はかなり血生臭いアクションの連続……ただ、そんな砦での攻防戦と、新発田城内での阿部サダヲ演じる家老・溝口内匠が幕府軍と官軍の狭間にあって右往左往する様を交互に描いて、巧みにサスペンスを盛り上げているのも面白い工夫に思えた。しかし、白石和彌監督はコメディが苦手なようで、阿部サダヲを起用しながらも笑えるには至らないのが惜しく、それならば、こちらも幕府軍と官軍相手にコンゲームを仕掛ける、と言うサスペンスフルな演出にしてもよかったのではないだろうか?
 あと、溝口内匠の娘が、罪人らの監督役である許嫁の侍に会う為に砦にやって来る、と言う展開も、物語上、巧く活かせていないのが勿体ない……この辺り、脚本の練り込み不足を感じるところだ。

 出演者としては、砦の決死隊長、鷲尾兵士郎を演じた仲野太賀がいい――ちょっと垢抜けない顔立ちの仲野太賀だが、その無骨さが、若い頃の三船敏郎と言うと誉め過ぎかも知れないが、これが、ちょっと古風な侍役として実に様になっているし、何とも格好がいい。本作では彼が事実上の主役だろう。クレジット上では主役扱いの山田孝之も、完全にいい所を持っていかれた感じだ。

 映画としては見せ場も多く見応えは十分にあるし、その反戦的なテーマは、今の世に合っているとは思う。かつての東映映画らしさを随所に感じさせる作りも面白い。ただ、物語としては時代劇と言うより戦争映画で、笠原和夫作品としては時代劇から戦争映画への過渡にあるものと言える内容で、そのどっちつかずな感じが観客を選ぶような気がする。
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