これは、「佐々木、イン、マイマイン」の内山拓也監督初のの商業長編映画。
出演は、「月」、「正欲」の磯村勇斗、「ケイコ 目を澄ませて」の岸井ゆきの。
風間彩人は、亡き父の借金を背負い、昼は工事現場、夜は父親が開いたカラオケバーで働きながら、精神を病んだ母・麻美と暮らしている。
看護師で恋人の日向は、そんな彩人を心配して気遣うが、その助けを受け入れようとはしなかった。
同居する弟・壮平は、父も歩んだ総合格闘技の選手の道に進み、勝ち進んでタイトルマッチが近い――それぞれの日々が過ぎて行き、彩人の親友・大和の結婚を祝う宴会の夜、悲劇が起こった……
これは、現在の若者が抱えるどうにもならない閉塞感を描いたものだが、物語のディティールにまるで説得力がなく、結果、空虚でバラバラな物語となっている印象だ。
主人公の彩人が直面する、親の借金による貧困の連鎖、ヤングケアラーの苦労、と言う苦難は、一見、現実社会において若者を苦しめる問題を反映しているように見えて、しかし、そこには説得力も、リアリティもない――借金の要因である父の残した店を維持する切実な動機も描かれないのでは、感情移入のしようがないし、あの状態の母親を施設にも入れずに自由にさせておける訳がないし、彩人の恋人で頻繁に家に訪れ、母の状態をしっている日向は看護師であり、介護の専門家なのだ。
結局、彩人を追い込んでいるのは、世の不条理や、若者の困窮と言う普遍的な問題ではなく、作者が作為的に生み出した“設定”でしかないのか、と思えてしまい、どうにも見方が醒めてしまう。
そして、終盤、彩人を襲う悲劇は、警官による拘束死で、これまた、アメリカでBLMの着火点となったジョージ・フロイド事件をいささか安易に模倣しただけ、としか思えない。
また、終盤の壮平の総合格闘技の試合は、殆どノーカットで見せる迫力のあるもので、力の入ったものであるのは理解出来るが、これもまた、この映画の中に収まりが悪いと言わざるを得ないだろう。
初の商業作品と言う事で、実力あるキャストを揃え、様々な見せ場も工夫して盛り込みはした……ただ、これまで内山拓也監督が描いて来た、時代をリアルに反映する事と見失い、現代の若者を苦しめているものの本質に迫らず、表面だけを掬い取ってまとめたような空虚な映画では、人の心を捉える事は出来ないだろう。
作られたものとは言え、重苦しく、やりきれない描写が続き疲労も感じる映画だけに、この内容の薄っぺらさはどうにも受け入れる事が出来なかった。
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