mixiユーザー(id:124952)

2024年09月02日21:32

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「ソウルの春」感想

 これは、「粛軍クーデター」として知られる韓国民主主義の存亡を揺るがした実際の事件を描く社会派エンターテインメント。
 出演は、名優、ファン・ジョンミン、「ハント」のチョン・ウソン。監督は「アシュラ」のキム・ソンス。

 1979年10月26日、韓国。軍事独裁化を進め“独裁者”とまで言われた大統領が、側近に暗殺された。国内では、反動的に民主化を期待する国民の声が高まっていく。
 しかし、事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官は、陸軍内の非公然組織“ハナ会”の将校たちを率い、自らが軍の主導権を握るべく、12月12日に、反対派の参謀総長を拘束する。
 これに対して、高潔な軍人として知られる首都警備司令官イ・テシンは、部下の中にハナ会のメンバーが潜む圧倒的不利な状況下、己の信念に基づき、“反逆者”チョン・ドゥグァンの暴走を食い止めようと立ち上がるが……

 「粛軍クーデター」は、韓国人ならば多くの人が知る事件だが、映画は実際の事件をかなり脚色しており、登場人物の名前も変えている――ハナ会のリーダーで、後に大統領になるチョン・ドゥファン(全斗煥)はチョン・ドゥグァンに、ナンバー2でやはり大統領になるノ・テウ(盧泰愚)はノ・テゴンに、参謀総長のチョン・スンファはチョン・サンホ、首都警備司令官のチャン・テワンがイ・テシンとされた。
 この辺り、ハリウッドなら実名で作ってしまう所だろうが、ここで名前を敢えて変えてフィクションにしてしまっているのは、関係者に配慮、と言うよりも史実を変えてでもドラマティックにする、この内容でさえエンターテイメントにしてしまうのが、韓国映画らしさだろうか。

 尚、韓国軍政時代の末期騒乱は、パク大統領暗殺が「KCIA 南山の部長たち」、光州事件については「光州5・18」、「タクシー運転手」などで映画化されていたが、「粛軍クーデター」を描く本作で空白が埋まったように思う。

 映画は、敢えてフィクションとしてドラマチックに仕立てただけに、大変に面白いものになっている。ハナ会の組織力を背景に、宥めすかしかと思えば脅す、口八丁手八丁なチョン・ドゥグァンと、堅物のイ・テシンと言う対立軸を作り、最終盤まで、どちらに転ぶか判らない状況を作り出して引っ張るのだ。
 それでも、観客が感情移入をするのは、イ・テシンら反クーデター勢力になり、それが勝てない、と言うラストは、カタルシスも何もあったものではないが、そうなるのは史実を知る者には当然だろうし、だからこそ、チョン・ドゥグァンを名優、ファン・ジョンミンが演じるのだ。
 つまり、これは韓国の民主主義が負けた映画であり、だからこそ、現在の民主化された社会がかけがけのないものだ、と訴えるものになっている、と言う事だろう。

 非常に完成度の高い映画だが、冒頭から最後までずっと続く緊張度の高さと、ほぼ軍人と政治家しか出て来ない物語には、ちょっと「シン・ゴジラ」を連想してしまったりもした。
 いずれにしても、面白く、そして歴史を知る意味でも興味深い1本で、これは韓国で大ヒットした、と言うのにも頷ける。
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