これは、いましろたかしによる同題漫画を原作に、「れいこいるか」のいまおかしんじが脚本を執筆、「花とアリス殺人事件」でもロトスコープ監督を務めた気鋭のクリエイター久野遥子が監督し、「カラオケ行こ!」の山下敦弘が実写監督を務めた異色アニメ……この顔ぶれで判るように、これは単なる子供向けアニメでは済まされない。
本作では実写で撮影した映像をトレースしてアニメーションにする「ロトスコープ」という手法を採用ており、出演の「ほかげ」の森山未來、「1秒先の彼」の五藤希愛、「ミッシング」の青木崇高ら俳優は、声の出演だけでなく、実写での演技も行っていると言う。
ある夏の日、田舎町の古寺に、長い間行方知れずだった和尚さんの息子の哲也が、11歳になる娘のかりんを連れて帰って来る。だが、借金取りに追われる哲也は、かりんを寺に置いて姿を消してしまう。母を亡くし、ここで父にも捨てられて荒んだ心境のかりんの前に現れたのは人型の猫、“あんずちゃん”。
かつて、和尚さんに拾われ、哲也と共に育った猫は、何時までも死なず、30年を生きたある日、人間の言葉を話し、人間のように暮らす“化け猫”になったのだ。
和尚さんから、かりんの面倒を見るよう頼まれたあんずちゃんと、かりんの夏休みはこうして始まった……
原作漫画は未読。その原作漫画では、あんずちゃんが主人公で、かりんは登場しない、と言う。
映画は、化け猫が人々の暮らしに溶け込んでいる、と言う原作漫画の世界に、予備知識のない観客を導く案内役として、あんずちゃんの事を何も知らない、かりんを主人公としており、この改変は、悪くないアレンジとは思う――ただ、孤独な少女が見ず知らずの田舎で、思いがけない冒険を繰り広げる、と言う展開は、正に“よくある話”となって新味に欠けるようにも思うのだが。
温い展開と笑いが持ち味の山下敦弘監督と、原作漫画の描く世界の相性もよく、あんずちゃん役の森山未来の好演もあって、独自の世界観を作り出している。
ただ、あんずちゃんを始め、登場するキャラクターの多くがかなりデフォルメされたもので、これを果たしてロトスコープで描く必要があったのだろうか……?
映画後半は、かりんのわがままに付き合う形での地獄巡りとなり、描き出された地獄のビジュアルと言い、その後の展開といい、これは脚本のいまおかしんじの個性を感じるもので、その後のドタバタ追走劇を含め、アニメならではのダイナミックな展開となる。
もっとも、そんな大騒動を起こした割にはぬるっと元の生活に戻ってしまうのと、あれだけ母に会いたがったかりんが、騒動のツケで絶対に酷い目に遭わされるであろう母の事を気に掛ける様子がない辺り、どうにも腑に落ちず、もやもやしたものが残ってしまうのもいまおか脚本らしさだが、それでも、最後に自分の居場所を自分で選んだかりんの決断がすがすがしく思えた。
ログインしてコメントを確認・投稿する