これは、第2次世界大戦下のウクライナで、同じアパートに住んでいたウクライナ人、ユダヤ人、ポーランド人の3家族の民族を超えた愛と、ウクライナの歌<キャロル・オブ・ザベル>に込められた希望を描くヒューマン・ドラマ。
監督は、現在もキーウに住み、子どもを持つ母親でもあるオレシア・モルグレッツ=イサイェンコで、本作はウクライナとポーランドの共同製作映画となる。
1938年、ウクライナ。ユダヤ人が所有するアパートにウクライナ人音楽家と、亡命ポーランド軍将校一家が越して来る。
14歳のユダヤ人、10歳のウクライナ人、8歳のポーランド人少女は音楽を通じ、姉妹のように仲良くなる。だが、1939年、ウクライナがソ連に併合され、ポーランド人将校夫妻は拘束され、娘は「親戚の娘だ」と偽ってウクライナ人夫妻が預かる事になる……次いで1941年、ドイツが進攻して来て、ユダヤ人狩りを行い、ウクライナ人夫妻は今度はユダヤ人の娘を匿う事になる……更に1944年、ソ連の反攻によりドイツ人が追い出され、ウクライナは再びソ連領となってしまう。ロシア人たちは、「ウクライナ語もウクライナ文化も、音楽も存在しない」と言い張り、音楽家だった夫婦を反社会活動家として処分、娘も収容所送りにしてしまい……
この映画が企画されたのは2019年で、2021年には完成していた、と言う。
映画内容は、非常に痛々しい、大国に翻弄されるウクライナと市民を描く映画で、大国の横暴と暴力に対し、「歌」と言う美しくも強かなもので抗う様を描くものとなっている。
それにしても、ロシア人がウクライナの子供を連れ去り、ロシア化教育を行う事で「同化」と言う名の文化侵略を行った、と言う再び起こしてはならない悪夢として描く本作だが、映画が完成して1年かそこらで、またロシア人が攻めて来て、正に同様の文化侵略をも繰り広げる事になるとは、これこそ正に現実に進行している悪夢そのものと思い、暗澹たる気分にさせられる。
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