これは、「東京バタフライ」の佐近圭太郎監督によるヒューマンドラマ。主演は、若手バイプレイヤーの森田想で、彼女は、本作でマドリード国際映画祭外国語映画部門で主演女優賞を受賞している。
熊野遥風は学生時代に立ち上げたベンチャー企業で辣腕を揮っていたが、目的達成のために手段を選ばない性格のせいで、パワハラで告発される。これで反省する遥風ではなく、自ら辞職すると、自ら起業して見返そうとする。
そこへ舞い込んだ母の訃報。実家に戻った遥風は、母が切り盛りしていたうどん屋兼雑貨店を売り、現金化することを提案、相続した遺産を起業資金とする事を目論む――だが、店を継ぐ、と言う長兄とニートの次兄は断固反対、店を手伝っている出戻りの姉も興味を示さない。しかし、自分の為、そして、将来性もない田舎の雑貨屋に可能性を見いだせない遥風は、三兄弟の家族自立化計画を始めるが……
これ、正に現代社会を、ある一家に押し込んだ風刺劇。
主人公はベンチャー企業のスターターと言う、現代社会を代表するような存在で、一方、雑貨屋を営む長兄(小売業)、うどん屋を手伝う姉(飲食店)、次兄(ひきこもり)、長兄の婚約者(農家)と、更に、死亡退場しているが主人公の母(高齢者)と、家族それぞれが日本における弱者として位置づけられ、これを、まるで竹中平蔵理念そのままの主人公がバシバシ切りまくっていく、と言う話になっている。
勿論、これを痛快、と見る人もいるだろう。地方や、既存の社会の閉鎖性は、このくらい強引にやらないと変わらないのだ、と……だが、それ以上に、主人公の見ている(それはつまり現代日本の向いている)ものだけが、社会の全てではない、と思わせる、これはなかなか考えさせられる内容。
遥風が最後、自分のした事に直面するシーンで、薄ら寒い気持ちにさせられる人は少なくないハズだ。
主演が森田想。その上司がカトウシンスケ……こんなキャストからも、低予算インディーズ映画なのは明かだが、主張のあるテーマ、無駄のないシナリオとショットで、4兄弟が絡み合う家族劇を82分でまとめて見せたのもいい。これは見応えのある映画だ。
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