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2023年04月07日10:24

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「妖怪の孫」感想

 これは、「パンケーキを毒見する」に続く、内山監督の政治ドキュメンタリー第2弾。
 本作の企画・製作は「かぞくのくに」「新聞記者」「i 新聞記者ドキュメント」など数々の問題作を生み出してきたスターサンズの河村光庸。

 連続在任日数2822日を誇った元総理大臣・故安倍晋三。総理退任後も、凶弾に倒れるまで、群を抜く影響力を維持していた。そんな彼の母方の祖父・岸信介。その風貌と社会の表と裏を渡り歩き、政財界を操る実力者としての異名から“昭和の妖怪”と呼ばれ、第56・57代内閣総理大臣を務めた。 
 この映画は、“美しき国、日本”をスローガンに掲げていた安倍元総理とはいったい何者であったのか、この国に遺したものは何だったのかを描く。

 この映画、菅政権に焦点を絞った前作「パンケーキを毒見する」に対し、安倍晋三の人生と、その政治まで広範囲に描くもの故、描写の浅さが気になる……ここは思い切って絞り込むことが必要だったのではないか?
 実際、岸信介の娘として、息子よりも政治に夢中で、2人の息子を郷里に置き去りにして東京で、安倍慎太郎を支えた母への反感から、安倍晋三は、母の敬愛する祖父・岸信介を超える事を人生の目標としていた、と言うテーマには見応えがあるのだから……

 しかし、その岸信介を超える為の憲法改正――岸が目指していたのは明治政府の「大日本帝国憲法」の復活だったが、それを超える自主憲法……これを政治も歴史も知らない安倍が主導して作ったのだから大変だ。
 現行憲法99条に、「天皇と(国会議員も含む)全ての公務員は、憲法を尊重し、これを守る義務がある」と定めている。
 これを、安倍は「全ての国民は憲法を守る義務がある」とし、「公務員は、国民をそうさせる義務を負う」と改めようとしているのだ。
 つまり、現憲法では、国家と国旗、国歌、憲法を尊重するのは公務員であり、国民は含まれない。国旗を掲揚しないのも、国歌を歌わないのも、それは、国民の思想・行動の自由として、憲法で保証されている。これを、国民は憲法により、国歌を歌う義務があり、公務員には、それを歌わせる義務がある、と変えようとしているのだ。
 こんな噴飯ものの憲法、憲政史上は勿論、世界にも例がない(中国・北朝鮮を除く)、恥ずべきものだ。
 某憲法学者は、これに呆れ、更に、それを指摘した際の、
 学者:「政治家は憲法を守らなきゃならんのです。憲法とは権力者を縛るものなのだから」
 議員:「なんで我々が縛られなければならないのか。主権が国民にある方がおかしい」
 と言うやり取りに失望して、憲法審査会から、距離を置く事にした、と言う……

 そして、映画は結論を出さずに終わる。
 内山監督、「私にも妻と娘がいる、この映画の事は言ってない」――これは、なかなか怖い終わり方だった。
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