これは、「新橋探偵物語」の横山翔一が、成人雑誌出版の苦悩や問題点を多数の関係者から取材して自主制作した人間ドラマ。
出演は、「瀬戸内海賊物語」の杏花、現役AV女優の架乃ゆら。
大学で文学を学んだ詩織は、先輩の紹介もあって都内の出版社に就職……だが、詩織が働くことになったのは男性向け成人雑誌の編集部で、そこは卑猥な写真と猥雑な言葉が飛び交うようなところだった。それでも、女性編集長の澤木や女性ライターのハルなど、女性がエロを追求している姿に刺激を受けつつ、詩織は次第にその世界に馴染んでいった。
しかし、東京五輪開催に向けた“配慮”でコンビニから成人雑誌が排除され、部数が縮小する中で、同僚が続々と退社して行き……
この映画は、衰退産業に捧げる鎮魂歌であり、言い方を変えれば負け戦の映画だ。
勝ち戦は痛快だが、負け戦にはドラマがある。もう駄目だ、お終いだと判っていても、そこで踏ん張ってしまうのが人間なのだ――正直、ここで“男”なのだ、と書きかけたのだが、この映画の主人公は女性、それも、エロ本と言う“男社会”の中で奮闘する女性を描く、異色のドラマになっている。
物語としては、主人公が、何も判らずに現場に放り込まれ、仕事と、やり方を覚えて一人前になって行くのが前半、そして、中盤以降は衰退する現場での”撤退戦”を描くものとなる。
前半・後半ともサラリーマンには”あるある”のエピソードの連続で、思わず力の入る場面もあれば、胸を打たれ、切なくなるシーンも、特に後半は立て続けだ。
また、この映画、見せ方のセンスがいい。自主製作の低予算映画ながら、取材に基づくリアルさで、編集部の描写などはしっかりしたものとなっているし、東京五輪を機に海外の人々への配慮としてコンビニからエロ本が排除される、と言う説明を、米国人AV女優に海外向けコンテンツとして英語で解説させるなど、説明臭くなく描くのには感心した。
主演の杏花は、これは大したもの。また、まだ若い彼女にあんな台詞を言わせるなど、ハラスメントにならないのか、と心配もしてしまったり……
これは面白い。そして、エロと言う、人が隠しながらも避けては通れないものの存在意義を問う、広く観る価値のある一本だと思う。
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