土曜、ブルク13で、
「THE FIRST SLAM DUNK」。
これは、井上雄彦の大ヒット少年漫画「スラムダンク」を、井上雄彦自身が監督を務めてあらためてアニメ映画化したもの。
以前製作されたアニメ版と声優や音楽が異なる事、また、公開まで内容を明らかにしないしないプロモーション手法が、本作のファンからは非難されていると言う。
神奈川県代表としてインターハイに出場した湘北高校バスケ部は、二回戦で、高校バスケ最強と言われる秋田県代表・山王工業高校と対戦する事になる。
そんな湘北高校2年の宮城リョータは、この対戦に並々ならぬ決意で臨んでいた――
自分は、原作漫画・アニメ版とも未見。高校バスケを描いた漫画らしい、くらいの予備知識しかなく、この映画版に対するバッシングも全く意味が判らないままに劇場に足を運んだ。
物語は、原作でも描かれた試合のエピソードを軸に、原作漫画主人公の桜木花道から、原作では過去エピソードが描かれなかった宮城リョータの過去を絡めて描くものだと言う。
この内容には批判も多いようだが、原作未見の自分としては、下手に長大な物語の一部を切り取って見せられるよりも、1試合に新エピソードを絡めて描くと言う内容は入りやすかったし、その中で兄の死を乗り越えた少年が家族を再構築するエピソードと、強敵との戦いの中で、チームとして再構築されていく湘北高校バスケ部を平行させ、それをバスケの試合の高揚感に併せて盛り上げて行く……と言うのは、ストーリー構成の巧みさを感じたし、なかなか感動的。
自分は、井上雄彦の漫画は食わず嫌いで、「スラムダンク」も「バガボンド」も未見なのだが、この物語の巧みさには、井上雄彦の人気の一因を感じた。
アニメとしては、これはモーションキャプチャーを使い、極めてリアルな動きを実現している――それもまた「アニメ版と違う」と非難の対象となっているが……
モーションキャプチャーを元にリアルな3Dアニメとするのではなく、本作では動きがリアルなのだけど、アニメとして動かす絵としてはあくまで井上雄彦の絵。まるで、漫画のカラーページの中から、抜け出して来たような絵がリアルに動く……これは確かに今までにないアニメで、なるほど、これが井上雄彦のやりたかった表現か、と納得をした。
今までに観た事のないアニメーション表現に、王道のスポーツ青春ドラマ……しかも、第一級の、となればこれは一見の価値あり。
確かに、原作漫画やアニメ版のファンには馴染めなかったりもするのだろうけれど、それらを知らない自分には非常に面白く観る事が出来た。
その後、シネマジャック&ベティで、
「空のない世界から」。
これは、元HKT48の兒玉遥が無戸籍の娘を持つシングルマザーを演じるドラマ。
監督は、俳優・小沢仁志の弟で、自身も俳優として活動しながら、「覇王」シリーズなどの監督も務める小澤和義。
DVを受け、身重の身体で夫の下から逃げ出してきた麻衣香は、やっとの思いで郊外にポツリと佇む寂れたラブホテルに辿り着く。
支配人の北岡に助けられ、住み込みで働き、既に7年が過ぎた。しかし、生まれた娘のさくらの出生届も出せず、存在を誰にも知らされないようひっそりと暮らしていた麻衣香だったが……
この映画、日本でも数万人存在すると言われる無戸籍者を取り上げた作品、と言う事で期待していたのですが、これは完全に期待外れの内容。
確かに、無戸籍者の少女、DV被害を受けて来たその母親、更に同性愛者、セックスワーカー、外国人労働者……と、社会弱者を並べてはいるのだが、これがドラマとして全く機能していないのだ。
麻衣香は、夫が追って来る事を恐れて偽名を名乗り、娘の出生届も出せずにいた、と言う設定はいい……だが、住み込みで働くホテルから買い物で外出する際はメイクして着飾り、アイドル然として日傘まで差して出かける、と言うのが筋が通らない。しかも、就学年齢に達した娘の戸籍がないから、と学校へも行かせないのは、これもまたDVに該当する――これでは感情移入のしようもない。
むしろ、そんな父母からの二重のDVを受けて育った娘の視点から物語を構築すればまだ訴えかけるものになったように思うが……
映画は尺も短いが、そんな弱者が寄り集まったホテルの危機を描き、しかも、その危機に向き合うこともせず、漠然とした希望を描いて終わってしまう。
この最後にも唖然とするばかり――一体、何がやりたかったのか……これでは、兒玉遥主演のアイドル映画(それも出来の悪い)でしかないだろう。
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