土曜、午後、Kinoシネマみなとみらいで、
「窓辺にて」。
これは、「街の上で」の今泉力哉監督が完全オリジナル脚本で描く大人のラブストーリー。
フリーライターの市川茂巳は、編集者である妻・紗衣が担当している若手の売れっ子小説家と浮気をしているのを知った時、怒りを覚えなかった事にショックを受け、妻にその事を切り出せずに悩んでいた。
ある日、文学賞の授賞式で、高校生作家・久保留亜と出会う。彼女の受賞作「ラ・フランス」に惹かれた市川は、その小説の主人公にモデルがいるのであれば会わせてほしいと留亜に尋ねて……
これは、なんとも今泉力哉らしい映画。
固定カメラの長回しで写し出す会話劇。激しい動きも、感情の迸りもなく、淡々と続く言葉のやり取りは、退屈に思う人もいるだろうが、自分は全く退屈しなかった。今泉脚本ならではの、とりとめもなく漂うような展開は、その会話劇をサスペンスにしてしまうのだ。
また、物語自体、何処へ行くかも怪しい事の多い今泉映画の中で、本作は、「妻の浮気に怒れない男」の苦悩の行き着く果てを描くもので、ある意味、ゴールは見えている。しかし、そこにどのように着地するかが見通せないのは、やはり今泉監督映画だ、と思うし、実際、事実上のクライマックスとなる夫婦の会話を、12分もの長回しで撮ったシーンもサスペンスがある。
ユーモアに乏しいのがちょっと残念ではあるが、嫉妬や激情のない、今泉監督ならではのラブストーリーに仕上がっていると思う。
主演の稲垣吾郎は、アテ書きされただけに、低体温で感情の起伏に乏しい辺り、正に本人も同様と感じさせるハマリ役――もっとも、それだけに終盤、「サイコパス」だの、「ありえない」とか言われてしまうのが気の毒だったり……
物語としてのヒロインは、中村ゆり演じる紗衣になるのだが、映画の中では、留亜を演じた玉城ティナの存在感が出色。最近の彼女の出演作の中でもピカイチだ。
あと、志田未来が子持ち人妻役を演るようになったんだなぁ……てっきり、佐津川愛美かと思ってしまった。
今日は、もう1本、
「ヒューマン・ボイス」。
これは、ジャン・コクトーの戯曲「人間の声」を「ペイン・アンド・グローリー」の名匠、ペドロ・アルモドバルが翻案し、初の全編英語で映画化した短編。
主演は、ティルダ・スウィントン。
女は姿を消した恋人からの連絡を待っている。これまで、恋人の男は、いなくなっても3日で戻って来たが、その3日は既に過ぎた。無力感に苛まれ、絶望を味わい、理性を失う女。様々な感情を体験したところに、やっと元恋人から電話がかかってくるが……
この映画、殆どのシーンが犬――とは言え、大変な名優ぶりを見せてはいるが――だけが共演相手、と言うティルダ・スウィントンの事実上のひとり芝居。
男に去られた中年女の感情のうねりは確かに見物であるし、ペドロ・アルモドバル監督ならではの鮮やかな色彩で彩られ、外連味のある舞台設定など、らしさも充分だ。
元は、電話での通話であり、会話劇となる所を、スマホとワイヤレスイヤホンにより、主人公が動き回る事を可能とした脚色も効いている。
30分と言う短編ではあるが、その中で絶望と希望、怒りと愛情、様々な感情の揺れを描き、最後には再出発までを描いて見せた。小品ではあるが、それでも監督のらしさが溢れる1本になっているように思う。
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