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2022年09月04日23:34

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先週の映画

 先週の映画は……

 まず金曜、仕事を早めに上がり、シネマジャック&ベティで、
 「ジャバーウォッキー」

 これは、ルイス・キャロルによる「不思議な国のアリス」中の詩を基に、チャールズ・アルバーソンとテリー・ギリアムが脚色。テリー・ギリアム監督で、「モンティ・パイソン」とほぼ同じスタッフで製作した映画。
 テリー・ギリアム監督としては、初の単独監督作となる。

 中世のとある王国、城外の農村地域にジャバーウォッキーと言う怪物が現われて、人々を不安にさせていた。
 一方、そんな騒動から無縁の村に、樽職人の息子、デニスがいた。
 人はいいが能なしのデニスに、父は絶望して勘当、惚れ込んでいる村娘にも振られたデニスは、商売で成功しよう、と城下町へと向かった。
 その城下町では、ジャバーウォッキー退治の騎士を選ぶトーナメントが開催されており、デニスは何時の間にか騎士の従者として、ジャバーウォッキー退治に向かう事になり……

 この映画、汚くて、カッコ悪い中世絵巻。
 デニスのうすのろっぷりは感情移入を阻むレベルだし、怪物を倒し、王女様と結ばれる……と言うおとぎ話のハッピーエンドを、デニスはそうと理解しない、と言う物語否定とも思える内容……この後のテリー・ギリアム映画に通じるものがある、と思った。 


 その後、ブルク13に移動、
 「シーフォーミー」

 これは、盲目の少女が、視覚障碍者サポートアプリ「シーフォーミー」を相棒に、侵入者に立ち向かうサスペンス。
 主演は、実際に視覚障碍者のスカイラー・ダヴェンポート。これまで主に声優の仕事をしていたが、本作が映画初主演の座を掴みとった。
 監督は、日系カナダ人のランドール・オキタ。

 留守宅の猫シッターのアルバイトで、人里離れた豪邸を訪れた盲目の少女ソフィ。ソフィは、視覚障碍を逆手に取り、金目のものを盗み出そうとしていた。
 ところが夜半、何者かが屋敷内に侵入。目的は、隠し金庫だ。この危機に、ソフィは「シーフォーミー」を起動し、元軍人のゲームプレーヤー、ケリーに助けを求めるが……

 この映画、「ホームアローン」のような閉鎖空間サスペンス。
 主人公のソフィが視界障碍のある少女、しかも慣れぬ他人の家、と幾つもハンデを負わせた上で、銃を持つ侵入者と対峙させる……ソフィの手助けが、タイトルにもなっている「シーフォーミー」で、これでゲーマーのケリーが、まるでゲームのキャラクターのように、ソフィを“操作”する、と言うのがこの映画独自のアイデアで、これが見せ場となる。
 これは面白い工夫なのだが、映画全体としては、盛り込まれたアイデアや要素がどうにも活かされていない感じ――ソフィが将来を期待されたスキー選手、と言うスキルは活かされないし、彼女が猫シッターをしている理由が、窃盗と言うのもすっきりしない。また、命を軽く扱い、人を殺し過ぎるのも問題だと思う。
 むしろ、このアイデアはこのまま、人を殺すまでには至らない攻防の中で、ソフィのトラウマ解消と、新たな一歩を踏み出す……と言うように出来なかったものだろうか?惜しい。


 土曜日、Kinoシネマみなとみらいで、
 「グリーン・バレット」

 これは、「ベイビーわるきゅーれ」の阪元裕吾監督の新作で、殺し屋の日常を描いた「最強殺し屋伝説国岡 完全版」の続編。

 殺し屋志望の少女6人が参加する訓練合宿に、京都最強の殺し屋・国岡が招かれ、阪元監督もその様子を撮影すべく、新人アシスタントと共に現場へ向かった。
 だが、個性の強すぎる少女たちには、さすがの田岡も手を焼き、それでも迎えた合宿最終日、少女らを募集した殺し屋事務所の所長が思わぬ事を言い出して……

 うん、今回もまた面白い。
 アクションの見せ方もよい。
 「ベイビーわるきゅーれ」では、伊澤彩織の本格アクションと、その一方で、女子2人の日常描写の対比が妙だったが、本作では、個性的な女子が6人――その個性が頭に入るまで、少しモタついた感じにもなったが――彼女らが引き起こす、殺し屋訓練とのミスマッチ、そして、本格アクションとしては、国岡を前作に続き、伊能昌幸がキレッキレのアクションを見せるのだ。
 見せる所、見せない所のバランスもよく、ガールズアクションとして完成度は高い――少女らは、体格や体力に差があり、演じる女優も高いアクションスキルがある訳ではないので、ガンアクションを中心にし、ドツキ合いは、伊能昌幸が演る……こうした説得力のある演出が、低予算ながら迫力があるアクションシーンを生み出すのだ。
 先日の「バイオレンスアクション」とは正に次元の違う出来、やはり、阪元裕吾監督はさすがだと思う。


 日曜、ブルク13で、
 「アキラとあきら」

 これは、「空飛ぶタイヤ」や、「半沢直樹」シリーズで知られるベストセラー作家・池井戸潤の同題小説を映画化。
 対照的な宿命を背負った二人の若者が、メガバンクを舞台に、情熱と信念で現実に立ち向かう社会派エンターテインメント。
 監督はこの夏、「今夜、世界からこの恋が消えても」「TANG タング」と、立て続けに3本の映画が公開される三木孝浩。

 小さな町工場の息子・山崎瑛と、大手海運会社の御曹司・階堂彬。同じ社長の息子同士でも、家柄も育ちもまったく違う二人が、破産寸前の企業グループの未来と4800人の人生を救うため、奇跡の大逆転劇を起こす。

 やはり、池井戸潤の話は面白い。
 だが、本作は、TV版「半沢直樹」シリーズのような濃い顔のおじさん達の顔芸と腹の探り合いではなく、タイプの違う爽やか青年2人の話なので、大分すっきり・薄味に感じてしまうが、これは三木孝浩監督の持ち味でもあるので仕方のない所か。
 ただ、青春恋愛映画の名手でもある三木監督にして恋愛要素は皆無だが、2人の青年の間にBL的な要素は感じる女子は少なくなさそうだ。


 月曜、この日、仕事で外出、仕事の後、ブルク13で、 
 「異動辞令は音楽隊!」

 これは、「ミッドナイトスワン」の内田英治監督が、YouTubeで偶然目にした警察音楽隊のフラッシュモブ演奏の映像から着想を得たオリジナル脚本&監督作。

 犯罪捜査一筋30年の鬼刑事、成瀬司は部下に厳しく、犯人逮捕のためなら違法すれすれの捜査も辞さない男。
 家族もろくに構わず一人娘・法子からはとうに愛想をつかされている。 そんな成瀬は高齢者を狙った「アポ電強盗事件」が相次ぐ中、成瀬は5年間追っていたホシが事件の首謀者だと目星をつける。
 だが、コンプライアンスを無視した行動が仇となり、本部長から異動を命ぜられた。刑事部内での異動だろうと高をくくっていた成瀬だったが、異動先はまさかの広報部付警察音楽隊だった。

 これは初老のサラリーマンに響く映画だと思う。

 主人公は、50過ぎのベテラン、その仕事スタイルは、時代に合わなくなって来ており。同僚からのパワハラ告発で、閑職にトバされた。
 仕事一筋で家庭を顧みなかったせいで妻は家を出て行き、娘からも縁を切られ、実母は認知症が進んで息子の現状を理解していない。
 慣れない仕事には身が入らず、かと言って、元同僚は「あんたはもう部外者だ」と口も聞いてくれず……30余年積み上げた仕事だけでなく、家庭も仲間も全てを失い、失意の挙句、男は命の次に大事な警察手帳を飲み屋に忘れてしまう……

 このどん底からの再出発が、映画の見せ場だ。
 「トップガン」では、マーヴェリックは生き方を変えようとしなかったが、こちらは、それを変えざるを得なかった男の話……現実には、むしろこちらの方がありがちだろう。
 そんな局面で、男は、自分の子供のような年齢の新しい同僚に頭を下げるのだ。
 「オレが間違っていた。すまなかった」と。
 これもまた、マーヴェリックの姿同様、中年男にはなかなか出来る事じゃない……でも、それをしなければ変わらないのだ。

 これは、そんな男の再出発の物語で、この物語、そこから最後は満面の笑みになる、これは熱くなる。
 そして、阿部寛は、そんな男、成瀬を全力で演じ、映画の中の成瀬同様、ゼロからドラムを練習、吹き替えなしで、最後の演奏まで演じ切ったのだから、見事と言う他はない。
 観客をかなり限定するとは思うが、これはいい映画だと思う。

 
 もう1本、ブルク13のIMAXで、
 「NOPE」

 これは、「ゲット・アウト」「アス」のジョーダン・ピール監督が放つSFスリラー。

 ロス郊外で牧場を経営するオーティス・ジュニアは、雲に覆われた巨大な飛行物体のようなものを目撃したことをエメラルドに明かす。
 やがて兄妹はその飛行物体の物的証拠を収める“バズり動画”を撮影することを思いつく……

 ジョーダン・ピール監督映画の第三作目は、これまでの2本とは趣を変え、ホラー映画と言うよりは、怪獣映画的な内容。
 あまり怖くない内容にがっかりする人もいるかも知れないが、ジョーダン・ピール監督らしさはしっかり感じさせるものとなっている。
 それは、ひとつの事象に対し、相反する2つの想いを描く、と言うこと――「ゲット・アウト」なら、黒人をテーマに、差別と憧憬を描き、「アス」は、格差社会をテーマに、豊かでいる事への安堵と、逆転する事の恐怖を描いていた。
 今回のテーマはずばり、「見る」事で、見世物(あるいはショービズ)を見る楽しみと、見られる恐怖、或いは見世物になる恐怖、と言う、物事の表裏を描こうとしている。
 また、黒人の立場と視点に立脚するのも変わらずだが、今回のテーマとは、係わりの必然に欠けたようにも思えた。

 従前2作のヒットにより、予算規模を拡大、ジョーダン・ピール監督、かなりやりたい事をやっているんじゃないか、と思う。「AKIRA」のオマージュシーンもあるし、終盤、怪物が変形して襲って来る辺りは、「エヴァンゲリオン」の使徒をイメージしたものだ、と言う――それが、「3メートルの宇宙人 」の名で知られる 。 フラットウッズ・モンスター状に変形するのには笑ってしまったけど。
 ただ、そうした“何でも出来る”状態が、映画の印象をぼやかしてしまったようにも思えるし、そもそも、ホラー映画で売り出したジョーダン・ピール監督の路線変更に、違和感を覚える人もいるのは判る――まぁ、はらはホラー苦手なので、今回の映画はむしろ楽しめはしたのだけど。
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