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2022年08月21日12:30

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夏休み2日目

 夏休み2日目の日曜、午後、映画を観に行く。
 今日は、シネマジャック&ベティで2本。

 まず、1本目は、
 「アウシュヴィッツのチャンピオン」。

 これは、第2次世界大戦下のアウシュヴィッツ強制収容所で、不屈の闘志と尊厳をもって、リングに立ち続けたボクサーの実話を基にしたヒューマンドラマ。
 主演は、60本近くのポーランド映画に出演して来た名優、ピョートル・グウォヴァツキ。

 1940年。アウシュヴィッツで収容所の建設に動員されたポーランド人受刑者の中に、戦前のワルシャワで“テディ”の愛称で親しまれたボクサー、タデウシュ・ピトロシュコスキがいた。
 ユダヤ人のようにガス室送りされる訳ではないが、ろくな食事も与えられず、過酷な労働を強いられ囚人たちも次々に死んで行く。そんな中で、タデウシュは、ボクシングの素養を見せた事で、ドイツ軍守備兵たちの娯楽としてリングに立つ事になる。
 次々と勝利を重ねるテディは、少年ヤネックや囚人仲間たちに、戦利品として手に入れた食料や薬を分け与えていくが……

 これは異色のボクシング映画。人を人と思わない環境で次々に人が殺される……それが”戦争”、と言うものであり、“政治”の一面でもある。そんな巨大な力に対し、スポーツが、ボクシングが、どれ程の力を持つものなのか……男は、その“ワルシャワ最強の拳”を以てしても、己の命を救う事しか出来なかったのだ――これは己の拳に絶望をさせられるボクサーの話であり、これは見応えのある話だと思う。

 だが、気になったのは、この映画、いささか脚色が過ぎるのではないだろうか?
 映画では、平和に親子で暮らしていたタデウシュが突如ナチスに拘束され、息子と引き離されたように描いており、その罪状が判らない――調べてみたら、タデウシュはポーランド軍で戦っており、敗戦後、亡命しようとしてハンガリーで捕まり、脱走兵として服役していたのだ。
 映画の描写は、引き離された息子と、少年受刑者ヤネックを重ねる為の”設定”なのだ。そのヤネックと少女の淡い恋愛と、その後の悲劇……更に、ナチス親衛隊将校の息子の死など、子供を殺して心を揺さぶろうとする仕掛けは、確かにドラマチックではあるが、作為的なものを感じてしまう。しかも、エピローグとして、戦後のタデウシュが、子供向けボクシング教室を開いていた……と言う描写で念押しされた感じだ。
 確かに、”子供”に未来のイメージを重ねるのはありだと思う。だが、これはやり過ぎに思えてしまってならない。


 2本目は、韓国映画の、
 「なまず」。

 これは、遊び心溢れた映像と物語が反響を呼び、韓国で異例のロングランヒットを記録した新感覚ムービー。
 「なまず」、「シンクホール」、「ゴリラ」など、理解不能な謎満載で、本国ではリピーターが続出した、と言う。
 監督は、これがデビュー作となるイ・オクソプ。「新感染半島 ファイナル・ステージ」のク・ギョファンが、本作の製作・脚本・編集・出演と、マルチな才能を見せている。
 主演は「野球少女」のイ・ジュヨン。更に、「オアシス」のムン・ソリ、「雨とあなたの物語」のチョン・ウヒら、キャストも意外な程に豪華。

 看護師のユニョンは、自分と彼氏のソンウォンのセックスが盗撮されたレントゲン写真が流出した、と誤解し、辞職届けを出すが、イ副院長は、彼女に自宅待機を命じる。
 その頃、突如シンクホールが出現する怪現象が発生。無職のソンウォンは埋め戻し工事のおかげで仕事につけたが、職場で大切な指輪を紛失してしまう。ソンウォンは言えない過去を持つ同僚を疑い、ユニョンは見え透いた嘘をつくソンウォンを疑う。
 ユニョンを癒してきたなまずは、病室の水槽からそんなゴタゴタを見つめていた……

 この映画、「人を信じる事」のテーマとした、国家人権委員会の企画と言うが……そんな堅苦しい背景などまるで感じさせないトボけた味わいが何とも魅力的だ。
 冒頭、いきなり「レントゲン室は宇宙船だ」と始まり、レントゲン室での秘め事と盗撮、そのレントゲン写真の流出……と、予測のつかない方向へ物語は転がって行く。しかも、その物語の語り手となるのは、病室で飼われているなまずなのだ。
 会話シーンには、痛さに加え、ブラックユーモアも満載で、社会風刺も含まれているのにかかわらず、意外と毒を感じない。韓国映画らしくないのは、感情を剥き出しにしたぶつかり合いがない辺りもそうで、何とも軽妙でポップなコメディになっている――それにしても、国家人権委員会企画作品で、これをやってしまう、イ・オクソプ×ク・ギョファンのコンビ、恐るべし、だ。

 主役となるユニョンを演じたイ・ジュヨンは、韓国女優にはあまりない、ボーイッシュな雰囲気。年齢不詳で、性的な感じがあまりしないのもいい。本作の軽妙な雰囲気を、なまずの声を演じたチョン・ウヒと共に演出していると思う。
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