先々週、20日水曜、イオンシネマ港北で、
「ボイリング・ポイント/沸騰」。
これは、ロンドンの高級レストランを舞台に、公私双方で追い詰められたシェフの予測不能な一夜を、90分間全編ワンショットで描いた人間ドラマ。
監督は、かつてシェフだったと言う経歴を持つ、新鋭フィリップ・バランティーニ。
一年で最も賑わうクリスマス前の金曜日、ロンドンの人気高級レストラン。
妻子と別居し、心労の続くオーナーシェフのアンディは、仕込みに立ち会えず、衛生管理検査では評価を下げられ、食材のストックも怪しい。気を取り直して開店するも、予約過多でスタッフたちはてんてこ舞い。
そんな中、アンディのライバルシェフ・アリステアが有名なグルメ評論家サラを連れてサプライズ来店。さらに、脅迫まがいの取引を持ちかけて来て……
この映画、最近多い疑似ワンショット映画ではなく、正真正銘のノー編集、ノーCGと言うから凄い。また、シェフが店に入ってからはほぼダレる事もなく、次々に出来事が発生し、正に息つく間もない、と言う展開も、繁盛店の繁忙時には、そんなものか、と思わせて違和感がない。人物、そしてカメラが店内からバックヤードまで回遊して違和感のないレストランのセットから、多人数の登場人物に個性を割り振り、それを的確に発揮させる辺りも含め、これはもう名人芸の域だろう。
物語の方は、公私に問題を抱えるシェフを中心には置くが、それ以外の人物も様々な問題を抱え、更に、人種差別からSNS社会が生む歪みなど社会問題も盛り込み、それを互いに苛々させる言動のやり取りで過熱させる――そして、沸点に達するのは……と言うクライマックスに到達するのだ。
正に社会の縮図のような90分――これは面白い映画だ。ただ、このレストランで食事をしたいとは思わないが。
先週水曜、27日は、シネマジャック&ベティで、
「ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行」。
これは、映画を取り巻く環境や手法が変化を見せた最近10年に公開された映画111本を取り上げ、「映画言語の拡張」、「我々は何を探ってきたのか」という2部構成で検証していく異色のドキュメンタリー。監督は毎日欠かさず新たな映画を視聴し、これまで16000本以上を観たと言う映画オタクの英国人マーク・カズンズ。
映画は、一見、縁のなさそうな、「ジョーカー」と「アナと雪の女王」の2本から“主人公の解放”と言う共通テーマを、映画が如何に語るのか、から始まり、“動く写真”として始まった映画が、如何にして言葉や文字のように心を動かして行くのかを語って行く――だが、これは決して映画史ではなく、ここ10年で監督の観た映画から感じた事を喋っているに過ぎない。
だが、これは面白い。
実際、映画は、それそのものも面白いのだが、それを語り合うのもまた面白いのだ。
これは、一級の映画オタクであるカズンズ監督の映画語り……語り合う事が出来ないのは残念だが、その代わり、豊富な映像と、膨大な引用はそれを補って余りある。
映画好きならば、観て損のない1本だろう。
PS
カズンズ監督は、これまで16000本以上の映画を観た、と言う。自分もこれまでに4500本以上は観て来た……のだが、111本のうち、大半が観た事もない映画なのには参りました、と言う感じ……自分の知る映画の世界が、まだまだ狭いものだ、と言う事を思い知らされた感じだ。
ログインしてコメントを確認・投稿する