mixiユーザー(id:124952)

2022年07月10日23:10

122 view

最近観た映画

 最近観た映画の感想。

◇「メタモルフォーゼの縁側」

 これは、鶴谷香央理の同名コミックを芦田愛菜と宮本信子のダブル主演で映画化したもの。共演は「偶然と想像」の古川琴音。監督は「青くて痛くて脆い」の狩山俊輔。

 17歳の佐山うららは、こっそりBLコミックを読むことが唯一の楽しみの女子高生。75歳の市野井雪は、夫に先立たれ、独り暮らしを送る老婦人。まったく縁のなかった2人だが、雪がある日、うららのバイト先の本屋でBL本を手にした事をきっかけに、ふたりはBL愛を語り合う友だちとなる……

 これは、共通の趣味が、世代を超えた友情を生む、と言うハートウォーミングな物語であり、同時に、創作物が人の心を動かし、その人生までも変えてしまう力を持つ事を描くもの。
 また、何事にも自信のないポンコツ女子高校生が一歩踏み出す青春映画的な物語でもあるのだが……それを演じるのが”スーパー女子高生”の芦田愛菜ではリアリティってもんがないのでないか、と思ってしまったり……


◇「峠 〜最後のサムライ」

 これは、司馬遼太郎の小説「峠」の映画化。監督・脚本は「蜩ノ記」の小泉堯史。出演は、役所広司に松たか子。

 慶応3年、大政奉還により徳川幕府は終焉を迎え、諸藩は東軍と西軍に二分していく。戊辰戦争が勃発すると、越後長岡藩の家老・河井継之助は民の暮らしを守るため、いずれにも属さない武装中立を目指すが……

 時代劇の名匠、小泉堯史監督だが、これはいささか疑問の残る出来映え。
 まぁ、元々、河井継之助は、長岡を無用の戦乱に巻き込んだとして、評価の分かれる人物であり、その戦いも小規模なもの。また、歴史上の存在感としても、映画コピーで言う「坂本龍馬と並び称された」人物ではない。
 和平を口にしながらも徳川家と主君への忠義の為に戦端を開くと言うのも、侍の生き様としてはともかく、現在となっては判りにくいものだろう。
 更に、ロケを重視した映像は、こじんまりとまとまり、特に戦乱シーンでのダイナミズムに欠ける印象だ。

 また、この映画に限った話ではないのだが、最近、日本の時代劇の文化を支えてきた基盤が失われつつあると思えてならない。
 まぁ、確かに時代劇と言うものが、時代に合わせアップデートされ、既婚夫人のお歯黒など描かれなくなっているものも多いのだが……最近の時代劇に多いとは言え、小泉堯史監督の、この本格時代劇映画で尚、武士が月代を剃らない、と言うのは本当に勘弁して欲しい、と言うか危機感を覚える。
 確かに、官軍側が剃らないのは判る……武士の世を終わらせようとする立場なのだから。
 だが、河井継之助は古い武士で“最後のサムライ”と銘打っているのだ。月代を剃るべきではないのか?――実際、遺された本人の写真を見ても、月代は剃っているのだし。

 また、河井継之助は当時41歳。対峙する官軍の代表である岩村精一郎は20そこそこの若さ。
 これを役所広司と吉岡秀隆が演じるのもどうなのだろうか――これを、例えば、実年齢の近い、岡田准一と神尾楓珠で演じたらどうだろう……恐らく、若さ故の頑なさや、勢いと言うものが出て、説得力が出たのではないだろうか?
 また、そうする事でまた新たなファンを獲得出来たのではないだろうか?


◇ 「PLAN75」

 これは、是枝裕和が総合監修を務めたオムニバス「十年 Ten Years Japan」の一編を元に長編映画化したもの。監督の早川千絵にとっては初の長編映画となる。

 超高齢化社会に対応して日本政府は75歳以上の高齢者が自ら死を選ぶ制度“PLAN75”を導入した。
 78歳の角谷ミチは、夫と死別後、ホテルの客室清掃の仕事をしながら長年、独り暮らしを続けて来たが、ある日、「高齢者を働かせるなんて」と言うホテルへのクレームが原因で失職――更に、住む場所さえ失いそうになったミチは、“PLAN75”の申請手続きを申し込む事になる。
 市役所で、申請者のサポート業務を担当する成宮瑶子は、ミチのサポートを担当。50以上の年の離れたミチから“先生”と呼ばれ、親しまれるようになる。
 また、フィリピンから出稼ぎに来ていたマリアは高待遇の職を求め、“PLAN75”関連施設で働く事になるが……

 主人公のミチを演じるのは「男はつらいよ」の倍賞千恵子。年を重ねながらも凛とした美しさが健在だ。
 また、瑶子を演じるのは、「サマーフィルムにのって」、「ちょっと思い出しただけ」の河合優実……相変わらず、要注目の映画には確実に顔を出している。河合優実の出る映画にはハズレなし、だ。

 この映画、現代版“姥捨て山”とでもいうべき“PLAN75”のインパクトが全てだと思う。
 超高齢化社会と、老人の生き辛さ、国家存亡の為、老人を切り捨てる政府……と言う舞台設定は秀逸で、それをリアリティある描写で描くのもいい。
 カンヌで評価されたのも、正にその視点であろうし、これを活かすドラマがあれば、「わたしは、ダニエル・ブレイク」のようにパルムドールだって手の届く内容と思う……だが、この映画の問題は、正にそのドラマの希薄さにある。
 登場人物は、当事者である高齢者と、制度に疑問を持つ若者、そして傍観者である外国人であり、PLAN75の推進者の“顔”がない――対立軸のない物語構図が、ドラマを平板にしているように思う。
 確かに、ミチを真綿で首を締めるように追い詰める社会の酷薄さには見るべきものがあるし、遺体処理の仕事の中で、高齢者の私物を我が物にしてしまう描写は、ナチスのホロコーストの一場面のようで、衝撃的でもある。
 ただ、瑶子のラストカット、ただ観客の方を無言で見詰めるシーンや、ラストシーンのミチの行く末などは、問いかけでも何でもなく、問題を観客に丸投げしているように思える。 
 勿論、観客に考えさせるのはありだろう。だが、この映画、インパクトのある“設定”を見せるだけなのだ……これでは映画の意味がないのではないだろうか?


◇「パスカヴィル家の犬 劇場版シャーロック」

 これは、コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズを原案とし、ディーン・フジオカ演じる誉獅子雄と、岩田剛典演じる若宮潤一が、唯一無二の名探偵バディとして数々の難事件を解決するフジテレビ系月9ドラマ「シャーロック」の劇場版。
 監督は「容疑者Xの献身」「昼顔」などの西谷弘。

 瀬戸内海の離島で、日本有数の資産家・蓮壁千鶴男が、莫大な遺産を遺して変死を遂げる。
 蓮壁千鶴男は死の直前、娘の紅の誘拐未遂事件の犯人捜索を若宮に依頼していた。真相を探るため、獅子雄と若宮は蓮壁家に向かったが……

 この映画だが、リアリティのない設定と展開、浮世離れした人物と、その人物の起こす意味不明な行動と思わせ振りなエピソード……それに、説明台詞と説明映像、更に、後だしじゃんけんの大盤振る舞いで、正に観客を馬鹿にしているとしか思えない。
 事件を解決する所か、次々に関係者が殺されると言う無能っぷりを見せる探偵コンビ、最後には関係者全員死亡と言う後味の悪さ。
 まったく、これはどうしたもんだか。

◇「恋の光」

 これは、秋★枝による同名人気コミックを「殺さない彼と死なない彼女」の小林啓一監督が映画化。
 主演は神尾楓珠。共演は西野七瀬、平祐奈、馬場ふみかと言うハーレム状態。

 “恋する女性が光って視える”特異体質を持つ大学生・西条。恋愛とは無縁の学生生活を送っていたある日、文学少女・東雲と出会い一目惚れ、恋の定義を語り合う交換日記を始める。
 そんな2人の様子は、西条の幼なじみの北代の心をざわつかせるのだった。そして、他人の恋人が羨ましく、略奪愛を繰り返す宿木は、そんな西条に猛アプローチを開始して…… 

 これは面白い。
 浮世離れした文学青年の固っ苦しく、何処かズレた恋愛劇。

 神尾楓珠が、まるでタイムスリップして来たサムライのような佇まいを見せるのも面白く、「孤狼の血 LEVEL2」では、力不足を露呈した西野七瀬も、北代と言う、等身大の役を演じる本作では、生き生きとしてその魅力を存分に発揮している。

 小林啓一監督は「殺さない彼と死なない彼女」もなかなかのものだったが、これはいいぞ。

◇「ナワリヌイ」

 これは、ロシアの弁護士で政治活動家で、プーチンの最大のライバルとされるアレクセイ・ナワリヌイの毒殺未遂事件に迫るドキュメンタリー。
 監督は「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」のダニエル・ロアー。事件の直後からナワリヌイや家族、調査チームに密着し、本作を極秘裏に製作した。

 ロシアで、プーチン政権への痛烈な批判を行い、“反体制のカリスマ”として支持を集めるロシア人政治活動家のアレクセイ・ナワリヌイ。
 2020年8月、ナワリヌイが飛行機の中で突如瀕死の状態に陥った。奇跡的に一命を取り留めるが、ロシアの情報機関のみが使用する毒物“ノビチョク”が彼の体内から検出されて……

 この映画、ナワリヌイ自身の魅力もさることながら、面白いのは、事件の解析に当たる、民間団体”ベリング・キャット”の存在だ。
 スパイ活動ではなく、インターネット上の様々な情報や、一見関係のないビッグデータを解析する事で隠された真実を浮かび上がらせる、その手法は正に新しい時代を感じさせる。
 クライマックスは、ベリング・キャットの活動で、暗殺実行犯グループを突き止め、裏取の確認をする場面だ。
 ここで、信じがたい事だが、ナワリヌイ自身が暗殺者たちに電話をしてしまうのだ。
 「ナワリヌイだけど。君は何でオレを暗殺しようとしたんだい?……あ、電話切られた」
 ――まぁ、普通切られるわな。
 そこで、作戦を変更、今度は政府高官に扮して、
 「本件は大統領に報告せねばならん。私が報告書をまとめるから、何故、作戦が失敗したのか、説明して貰おう」
 と質問し、答えを引き出してしまうのだ。そして、電話を切った後で、
 「彼、喋っちゃったねぇ。こりゃ消されるなぁ……気の毒だから、亡命を持ちかけるか」
 これがフィクションではなく、リアルなのだから、もう、面白いったらない。

 現在のロシアの一面を垣間見る、と言う意味でも興味深い1本だ。
1 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2022年07月>
日 月 火 水 木 金 土
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

過去の日記

2026年
2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年