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2022年02月23日08:01

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土曜は……

 土曜は、映画2本。
 
 1本目は、横浜シネマリンで、
 「なれのはて」。

 これは、何らかの理由で帰国せずフィリピンのスラムで日銭を稼ぎ細々と暮らす高齢の日本人男性たちを7年追い、第3回東京ドキュメンタリー映画祭長編部門グランプリ・観客賞をW受賞したドキュメンタリー。
 監督は、フリーの助監督として数々の劇映画に参加する一方、テレビ番組のディレクターを務めてきた粂田剛。

 フィリピンの首都マニラの貧民街……その路地の奥でひっそりと住む高齢の日本人男性たち。”困窮邦人”と呼ばれる彼らは、かつて日本で警察官、暴力団員、証券会社員、トラック運転手などの仕事をしていたが、国を捨て、家族を捨て、ここフィリピンで、人生の最後となるであろう日々を送っている。映画は、その暮らしを7年に渡って追いかけたものとなる。
 撮影スタッフを伴わず、それどころか現地ガイドや通訳もつけずに、単身彼らの生活域に飛び込む、粂田監督の体当たり取材には感心するしかない。

 取材開始時、男たちの年齢は58〜64歳。歳も近いので、これは決して他人事ではないな、と観ていた。
 最底辺の生活を送る男たち……落ちる所まで落ちたように思うのだけど、なぜか、その暮らしは不幸そうには見えない。20ペソ(=45円)で排泄物処理や体洗ってくれる近所の人がいて、具合が悪くなって動けなくなれば近所のおばちゃんが様子見かねて食事を差し入れてくれる……日本で孤独死するのと、最後まで人としてコミュニティの一員となる方のどちらが幸せなのか?……これは、我々の行く先にある暮らしの“豊かさ”を突き付けてくるように思えた。

 「なれのはて」とは失礼なタイトルとも思ったが、7年もの時間をかけて地道な取材を続け、最後、その行きつく果てまで写し撮る、そんな製作者の気概を見ると何も言えなくなってしまう。


 本日2本目は、Kinoシネマみなとみらいで、
 「声もなく」。

 これは、韓国の女性監督ホン・ウィジョンのオリジナル脚本による長篇デビュー作。
 主演は、「バーニング 劇場版」のユ・アイン。

 口のきけない青年テインは、犯罪組織の下請けで死体処理に手を染めている、チャンボクの手伝いをしている。
 ある日、チャンボクは身代金目的で誘拐された11歳の少女チョヒを1日だけ預かることになるが、組織内のイザコザで誘拐を仕掛けた当人が殺されて計画はとん挫し、チョヒを預かるチャンボクとテインのふたりは途方に暮れる。
 ふたりは自力で少女の親から身代金をとろうとするのだが、女児であるが故に父親は身代金を出し渋る一方で、家庭に居場所のないチョヒも、テインの妹の面倒を見るなどして仲良くなり、いつしか疑似家族のようになっていくが……

 この映画、韓国映画ならでは血みどろクライム映画と見せつつ、格差や貧困、そして女性差別など韓国の社会問題の要素を盛り込みながらもコミカルに仕上げた意欲作。
 犯罪組織における殺人と死体処理を、残酷ではなく、日常描写のように、おかしみさえ含めて描く、その描写センスは数多ある韓国クライム映画とはひと味違うもの……それ生み出すのは、女性故のものか、ホン・ウィジョン監督のセンスなのか……?

 キャストは、台詞なし、表情や身振りのみで物語を表現したユ・アイン、11歳にして達観した大人の顔をする少女チョヒを演じたムン・スンアの存在感が際立つが、脇役までしっかりキャラが立っているのも見事。

 犯罪組織と言う裏家業の人間が、更に弱者を食い物としようとする中、その弱者が結びついて疑似家族のようになって行く描写には繊細な美しさがあるが、それは正に薄氷の上の幸福……その終わりを「裏切り」ととらえた少女の一言と、その表情が印象に残る。
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