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2022年02月06日23:06

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水曜は……

 水曜は、在宅勤務。
 今日は、思い切って仕事を早めに切り上げ、夕方、ブルク13で映画2本。

 まず、1本目は、
 「クレッシェンド 音楽の架け橋」。

 これは、実在する中東の障壁を打ち破る為に設立されたウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団をモデルにした人間ドラマ。
 イスラエル・テルアビブ出身のドロール・ザハヴィ監督によるドイツ映画だ。
 
 世界的指揮者のエドゥアルト・スポルクは、紛争中のパレスチナとイスラエルの双方から若者たちを集めてオーケストラを編成、平和を祈ってコンサートを開くというプロジェクトを引き受ける。
 家族の反対や軍の検問を乗り越えてオーディションにやって来た若者らのうちから、スポルクは20余人を楽団員に選ぶが、互いに憎み合う両陣営は激しく衝突、練習さえままならない。
 そこでスポルクは楽団員を連れ出し南チロルで合宿することに。寝食を共にし、互いの音に耳を傾け、経験を語り合ううちに、楽団員たちは少しずつ憎しみや葛藤を乗り越えて行くが……

 これは、非常に重いテーマを扱う映画。
 いがみ合い、憎しみ合う、イスラエルとパレスチナの若者たちだが、それは、日本の若者の“嫌韓”感情などとは最早、レベルが違う。
 それは、冒頭のイスラエルの検問所での描写に明かなのだが、イスラエル軍兵士のパレスチナ市民に向ける態度は酷いもの、だが、それも恐怖の裏返しなのだ。
 個人のレベルを超え、社会として、国家として、対立し、衝突する事を強いられた、その現場に居合わせた市民に、どれほどの人間らしさが残るものだろうか?

 この映画は、そうした現実を踏まえ、音楽と言う芸術が何を出来るか、何を出来ないかを描いていく。
 そうしたテーマならば、綺麗事としてまとめそうな所だが、これはドイツ映画……ユダヤ人に対し、他人事ではいられない立場だからこそ、向き合う問題は切実だし、画く内容は決して綺麗事には流されない。

 楽団員の中で、徴兵年齢に達しない、最も若いふたりが打ち解け、やがて恋に落ちるのだけど、それが出来たのは幼さ故で、その先に未来を描きようがない、と言うのも苦しい現実だし、残酷な結末を迎えるのも痛い。

 映画の最後、楽団員が初めてひとつとなったボレロの演奏は感動的ではあったが、それとて、ひとつの悲劇を共有したから持ち得た絆に過ぎない、と言う描写には考え込まされてしまう……ここまで至らなければ、人はわかり合えないのではないか、と言う事に……


 そして、本日2本目は、
 「ノイズ」。

 これは、「グランドジャンプ」連載の筒井哲也による同題漫画を、「さよなら歌舞伎町」の廣木隆一監督が映画化。
 「デスノート」の藤原竜也・松山ケンイチのW主演、神木隆之介共演のサスペンスだ。

 三河湾に浮かぶ猪狩島――過疎化に苦しむ島だったが、島の青年・泉圭太が生産を始めた「黒イチジク」が高く評価され、島には地方創生特別交付金5億円の支給も決まり、島民たちの間には復興という希望が見えていた。
 そんな島の平和はひとりの男によって破られる。男の名前は、御坂睦雄。圭太と彼の幼馴染の猟師・田辺純、新米警察官の守屋真一郎の3人は、小御坂の不審な言動からもみ合いとなり、誤って小御坂を殺してしまう。
 島の未来、そして家族を守るため、真一郎の進言で、3人はこの殺人を隠すことにするが……

 この物語、モチーフとなるのは、圭太が栽培し、島の希望となっているイチジク――無花果と書かれる、その果実の花は実の中に隠されて人目に触れる事は無い……これは、そうして「隠された」ものが引き起こす物語なのだ。
 圭太が隠した御坂睦雄の死……だがそれが、更に2人を死に至らしめ、死人の人数が増える毎にそれに係わる、秘密を共有する人も増えて行く……それはあたかもイチジクの実が成熟していくかのようだ。
 島の中の、つまり、秘密を共有する人の間では筋道の通っている事も、島の外からやって来た畠山刑事には通じない。それは、畠山が、圭太のイチジクを割って「気持ち悪い」と吐き捨てる事で強調される。
 これを、閉鎖的なコミュニティが、その共有する秘密で以て外部の人間を拒絶する……と見て、日本社会への風刺と見る事も可能だろうが、そうまでしなくとも、隠す事が、実りある結果に繋がるのか?と言う疑問への答えだけで、この物語が問いかけるものの価値はあるのではないか、と思う。

 主要キャストの藤原竜也・松山ケンイチ、それに神木隆之介だけでなく、周囲も演技巧者で固めているだけに、見応えはあるし、日本映画やドラマにありがちな過剰な演出が抑えられ、繊細な演技でサスペンスを見せていく辺りにも好感は持てるのだが、納得出来なかったのは、最後の締めくくりだ。
 この騒動を仕掛け、そして演出した男、彼に対する報いが描かれない事に大いに不満だし、圭太の妻の加奈が、イチジクにイメージされる閉ざされた島社会から逃げ出す、と言う事を描かなかったのも不満。
 この映画に必要だったのは、因果応報に基づき、隠蔽と裏切りによって果実を手にしようとした男の手に入るものは、その行為をイメージするイチジクだけ、と言うラストシーンであり、妙に感動的な演出ではなかったように思う。
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