を読んだ。R・A・ラファティ著/浅倉久志訳。
SF界きっての奇想作家として名の知れた著者の作品を読んだことがなかったので、どれどれと短編集を手にとってみた。
九百人お祖母さん
特殊様相調査員のセラン・スワイスグッドは、上司からもっと強面のする名前に変えろと言われていたが、本名のままで通していた。
そんな彼が興味を持ったのは、プロアヴィタスという小惑星の原住民に寿命がないと言われていることで、それが本当なら原初の祖先と話をすれば知的生命の発生の秘密を聞き出せるかも知れないと思い・・・。
寿命のない種族の最初の先祖は発生の真実を知っているというのは目の付け所が面白い。
そしてその祖先たちの描写がビジュアル的に面白く、世界の空間体積的にも筋も通っている(笑)
しかしそこまで奇想かというと、そうでもない。
日本の古典作家も書きそう。
・・・と、思ったら本作は、表題作でもあるのにこの短編集で最もおとなしい内容なのだった(笑)
巨馬の国
北インドの砂漠に雷鳴が鳴り響き、蜃気楼が実像を伴い出す。
一方世界では一定の条件に符合する人々の大移動が始まっていた。
彼らはみなこう言う。
「故郷に帰る」と。
オチの「第2の実験」の顛末が面白すぎる。
日の当たるジニー
ミンデン博士は近所付き合いをしているディスマス博士に、近々発表する予定の論文のことを話していた。
それは人類の進化における常識を覆すセンセーショナルな内容だったが、事態はすでに彼らの子供たちによって新たな局面に進行していた・・・。
そもそも博士が覆そうとしているのが、人類の祖先はザウエン人という遺骨が100体ほど発見されている猿人であるという常識(笑)の内容であり、前提からして人を食っている。そしていきなりなだれ込む終局の始まり。
いやいやそうだったら「進化」という試み自体が今まで成功してないでしょう(笑)
時の六本指
ある朝チャールズ・ヴィンセントが目覚めると、世界は彼を除いて時間がすぎるのが1/60ほどの速度になっていた・・・。
ラファティ版「お助け」(笑)
奇しくも両作は同じ1960年に発表されている。
しかし切り口は「お助け」と同じでも、その後の展開はラファティの方はまさに斜め上の方に進み、予想しない場所に着地する。
筒井がおかしいのはよく知られていることだが(笑)、ラファティはその斜め上を行く。
山上の蛙
「わたしは宇宙空間が憎い」と宣言したガラマスクは、パラヴァータという惑星に降り立ち、そこで3つのレベルの目的を達するべく行動を開始する・・・。
上記の説明だと内容が一切伝わらない。そもそも「わたしは宇宙空間が憎い」というセリフは物語と全く関係ないのだ(笑)
しかしそれは読者である化夢宇留仁にとっても同じことで、その後の叙事詩のような展開にはクラクラさせられ、種明かしではなるほどとなったが、結局冒頭のシーンはなんのためにあったのか・・・(笑)?
一切衆生
アンソニー・トロッツは3人の人間にインタビューを行ったが、自分に起きている異常事態を説明することはできなかった。
彼は世界中の人々を知っていたのだ。彼らが誰で、今何をしているのかも・・・。
冒頭のインタビューシーンがものすごく面白い。
しかしその後の本編はいささか普通(?)な感じ。
カミロイ人の初等教育
アイオワ州ダビュークから惑星カミロイにPTAの調査団が訪れた。
カミロイではあらゆることが地球の常識では図り難く、まず彼らに対応するために通りがかりが数名集められて現地のPTAが組織され、現地の教育について教えてくれることに・・・。
なんだかよくわからないけど滅茶苦茶面白い(笑)
スロー・チューズデー・ナイト
乞食であるバジル・ベイグルベイカーは、夜の間に株で4度も億万長者となり、4度も失敗して朝には乞食になっていた。
イエウデファンサ・インパーラは成功を収めた男性と結婚してはハネムーンに旅立ち、帰ってきて離婚し、また新たな成功者と結婚した。
100階建てのビルは取り壊され、全く新しいビルが建った。
それらは一夜のできごとで・・・。
ものすごく目まぐるしくて読んでいても目が回ってくる(汗)
普通は不可能としてボツになるアイデアだと思うが、そこを普通に形にしてしまうのがラファティなところなのだろう。
ちうかこんな短編で群像劇というのも珍しい(笑)
スナッフルズ
ミスター・キャロルは惑星ベロータは宇宙で唯一冗談半分で作られた世界だと言った。
そこは確かに重力からして奇妙で、なにもかもが常識と反していた。
調査に降りた一行は、そこでスナッフルズという熊のような巨体で高度な知性を持った動物と遭遇する・・・。
ラファティ版「走る取的」(笑)?
ちうか作品に悪口言われて怒ったのか(笑)
われらかくシャルルマーニュを悩ませり
グレゴリー・スミルノフをはじめとした「研究所」の面々と、高度なコンピューターであるエピクティステス(エピクト)は、過去の改変実験を行おうとしていた。
その内容は西暦778年のフランク軍への待ち伏せを失敗に終わらせ、その後のキリスト教と回教徒との断絶を無かったことにしようというものだった。
彼らは歴史が記された詩篇を前に、またそれ以外にも外の景色やメンバーなど、改変の結果が反映されるであろうものを予測し、注意していた。
果たして実験は成功し・・・。
誰か実行する前にその可能性に気づけよ(笑)
藤子・F・不二雄だったかで似たような話を読んだような気もする。
ちうか第2実験の結果が面白すぎる。話し管って(笑)
蛇の名
法王があらゆる場所であらゆる民に教えを授けるように命を出したので、バーナビィ神父は惑星アナロスにやってきた。
アナロス人はガーゴイルそっくりの不気味な見た目をしていたが、陽気で人懐っこく、高度な知性を持っていた・・・。
「カミロイ人の初等教育」と同じような展開かと思わせておいて、ラストでぶっ飛ばされる。
これは予定調和(笑)?
せまい谷
1893年。ポーニー族の生き残りの1人であるクラレンス・ビッグ=サドルは、与えられた土地160エーカーにうろ覚えの魔法をかけた。
谷が実り多くよいものであり、しかしよそ者が来たときには狭くなるように。
現代。160エーカーの政府管理地があるのに気づいたランパート一家が、その土地の入植権を手に入れ、意気込んで現地に行ってみると・・・。
ビジュアルが奇妙で面白い。
しかしなにより奇妙なのは、理由もなく変すぎるランパートの奥さんと子供たちの方だったりする(笑)
カミロイ人の行政組織と慣習
今度は行政分析調査の一団がカミロイに到着した。
カミロイの行政は、もちろん地球のそれとは全く異なっており・・・。
個人の能力に大きく依存する、やっぱり滅茶苦茶なカミロイの行政制度だが、あの教育制度が土台であれば意外にうまくいきそう(笑)
うちの町内
アート・スリックはジム・ブーマーとともに、通りの果てで線路の土手とぶつかっている行き止まりのブロックに行く。
そこではいつの間にか多数の人々が住み着いており、いくつもの店や工場?を運営していた。彼らのやることは物理的に無理と思えるところが目についたが有能で、なんだか似たような顔をしていた・・・。
なんか全然語られないけどすごい侵略が行われているような・・・(笑)
この話はなんだかとても楽しい。
ブタっ腹のかあちゃん
ジョー・スペードは脳みそがパンパンに詰まっていたので、ときどき能天気師に診てもらっていた。分析精神医つまり能天気師に「男やもめに蛆がわく」という格言を授かったジョーは、それを相棒を探せという意味だと受け取り、グログリーの酒場でモーリス・マルトゥラヴァースという男を捕まえる。
2人で完成させたのは必要なものとそうでないものを判断できる消去機械だった・・・。
機械が完成するまでの流れを書いたが、これは基本的には物語と関係ない(笑)
ただやたらとへんてこなキャラクターの紹介には役立っているが。
こういう変なところにダラダラと項数をかけるところが面白いが、星新一なら最初の1行目で博士が機械を完成させているところである(笑)
ちなみにオチも星新一っぽい(笑)
7日間の恐怖
9歳のクラレンス・ウイロビーは消去機を作った。
彼はそれを使って手始めに消火栓を消し、辺りを水浸しにした。その後他の物も次々と消し、街は大混乱に陥った。
その事態を正確に把握しているのは、彼の妹のクラリッサだけだった・・・。
最後のセリフがすごすぎる(笑)
それにしてもラファティはなにかを消すのが好きだな。
町かどの穴
ホーマー・フースが仕事を終えて家に帰ってくると、愛しい妻レジナが悲鳴をあげた。
彼はホーマーではないという。確かに全身緑色で触手が生えてはいたが。
そこにもう一人のホーマーが帰ってきて大騒ぎになるが、ホーマーはどちらも相手がホーマーだと思い、家族もだんだんどっちが本物のホーマーかわからなくなってきた。
そこで医者に相談してみるが・・・。
レジナの「ゼッキョー、ゼッキョー」という絶叫(笑)のあとの、「ふーっ、とってもよかったわ、ホーマー!」というセリフでひっくりがえった(笑)
そして最後も。
なんじゃこれは(笑)
その町の名は?
「研究所」のグレゴリー・スミルノフがエピクトに指示した研究は「失われたがそれがなにかわからないもの」を突き止めるというもので、あまりにも漠然としているにも関わらず、エピクトはあらゆるデータを照合した結果、驚くべき事実を突き止めるが・・・。
辞典の欠落の件とか、「失われた形跡」が面白すぎる。
そして失われたものがこれまた面白すぎる。
なんか恨みでもあるのか(笑)
他人の目
「研究所」のグレゴリー・スミルノフとチャールズ・コグズワースは、最近発明した再現相関機(タイムマシン)のほろ苦い結果について話し合っていた。
発明は成功だったが、その結果歴史の真実がわかり、それはことごとくロマンをぶち壊す結果になったのだ。
そしてチャールズが完成させたという大脳走査機にも、同じ心配をするグレゴリーだった。
大脳走査機は他人の目で世界を観ることができる機械だった・・・。
他人の目から観た世界は全く異なっているかもしれないと化夢宇留仁もよく考える。
例えばAさんとBさんの視界が階調反転していても、それぞれの話は食い違わないし、その違いは露見しない。
その違いを実際観てみようという機械というわけで、同じようなことを考えるんだとラファティに(勝手に)親近感を覚えた(笑)
この「研究所」シリーズはどれも面白い。
一期一宴
マックスキーという奇妙な男がいるという連絡を受けたジョン・サワーワインは、早速「バーナビイの納屋」という酒場に行ってみた。
マックスキーは死人のようなやせ細った男だったが、大量に飲み食いするうちに身体が光り輝き、どんどん元気になっていった。
意気投合した2人はその後も飲み歩き、暴れまくるが、マックスキーが何百年も前の記憶があると話し・・・。
なんだかよくわからんが楽しそうなのでよろしい(笑)
千客万来
突然スカンディアの人々が地球上に現れ、猛烈な勢いで人数を増していった。
あらゆる場所はスカンディア人で溢れかえり、それは地球人のプライバシー空間にまで及び・・・。
なんだかよくわからんが楽しそうなのでよろしい(笑)・・・ってよくないか(笑)
ちうわけで初ラファティだったが、実に面白かった。
奇想もそうだが、それに巻き込まれた人々の方が奇妙なほど物分りがよかったり、変に頭がよかったり(特に子供)と、テンポを落としそうな部分はスパッと無くしているところが素晴らしく、むしろ本題の奇想部分よりも目立っているかも(笑)
とはいえやはりどの作品もまさに「奇想」と言えるものばかりで、面白いのだが作品ごとに「そっちかい!」とか「結局そこかい!」とか「なんでやねん!」とか、全然違う方向に脳が揺さぶられるので、少々疲れる。
この内容で全21作、合計500ページ超えはしんどすぎる(笑)
分冊にしてほしかった(笑)
巻末の解説ではラファティのコンベンションでの様子など、彼の人となりを紹介しているのだが、SFを書くきっかけのしょうもなさや、コンベンションではまともに会話せずに人にぶつかりまくったり、ラファティに会った編集者のジュディス・メリルの「知性のかけらも感じられない」という感想(笑)など、これがまた爆笑ものだったと記しておく。
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