以下、最近観た映画と短評。
◇「彼らは生きていた」
これは、「LOTR」のピーター・ジャクソン監督が、第一次大戦当時の記録映像を元に、撮影スピードを調整、着色をし、音入れをして最近の映像のように仕上げた映画。
第一次大戦当時の記録映像は、音声記録なしのモノクロ。また、当時の映像で、人々の動きがぎくしゃくして見えるのは、フィルムを手回しで撮影していた為、速度が一定でなく尚且つ、毎秒のコマ数も少なかった為。
そこで、本作のスタッフは、当時のフィルムを修正し、着色するだけでなく、最新のデジタル化技術で毎秒24コマになるよう、必要に応じ足りないコマ映像を合成するなどしている。そして、読心術により、撮影された兵士が何を喋っているかを解析し、音声も合成……そんな気の遠くなるような作業の末に当時のフィルム映像を、第二次大戦後のフィルムカメラで撮ったようなレベルにまで引き上げている。
映画は、当時の記録映像そのままで始まるのだが……戦場にカメラが移った後、カラーとなり、画面一杯に広がる……これには思わず引き込まれるような迫力があった。
そして、そこに写し出されている人が、記録された歴史の一コマではなく、そこにいた、ひとりの「人間」である、と実感するのだ。
描き出されるのは、戦争と言う愚行……人々は、戦争が“記憶”されているうちは、その愚行を繰り返すまいとするが、“歴史”になった途端に、それを美化し、繰り返す事になる。
過去の戦争を決して“歴史”にしない為にも、この取り組みは有意義なものと感じた。
あと、本作の邦題は、久々にいいタイトルをつけたものだなぁ、と感心した。
◇「ヲタクに恋は難しい」
これは、オタクカップルの恋の行方を描いた同題の人気コミックを、高畑充希&山��賢人の共演で映画化したもの。
監督は「銀魂」の福田雄一。
26歳のOL、桃瀬成海は、転職先の会社で幼馴染の二藤宏嵩と再会。
オタクである事がバレて失恋したばかりの成海は、素性をよく知るゲームオタクの宏嵩ならば気を遣わなくてよいから、と交際をスタートするが……
この映画、ミュージカル仕立てとなっている。
高畑充希はしっかり歌える女優だし、ミュージカルシーンも有効に使われている箇所もある。
(ミュージカルそのものを否定するような内容で、腹立たしいとさえ言えた「ダンス・ウィズ・ミー」よりはマシ)
ただ、ミュージカルシーンの撮り方がまるでなってないのには苛々するし、また、成海の独白としての利用が多く、彼女がひとり歩きながらミュージカル演出になって行くのが繰り返されるのも工夫がない。また、物語を進める力が弱く、ドラマが失速していく感があるのも残念だ。
ドラマを失速させると言えば、福田作品定番の佐藤二朗とムロツヨシだけど、これが完全に滑っているのにも関わらず延々と続けるのは白ける以上に気の毒だ。
映画としては、原作コミックを題材に“オタク”と言うものをネタとして扱って見ました、と言う感が強く、本物のオタク層は怒りを買いかねず、一般向けとしては敬遠されてしまうだろう……そもそも、原作コミックが、オタク向けの「オタクあるある」で、身内の自虐ネタのような内容だったのだから、映画として
広く一般向けにするのは向いてない内容だろう。それを、ミュージカルにして、と言う企画から外しているように思えてならない。
◇「グリンゴ」
これは、シャーリーズ・セロンが製作・出演を兼任したコメディ。
真面目に働いてきたものの、上司に裏切られ、人生のどん底に突き落とされたハロルドは、復讐を計画。偽装誘拐を演じて、身代金の強奪を企む。
だが、真相を知らない上司は、その誘拐を利用しようとして……
これは、いささか露悪的なブラックコメディだが、あまり面白がる事が出来ず、ちょっと残念……それにしても、シャーリーズ・セロンは自ら製作してまで、こんな下衆な役をよくやるよなぁ……
◇「影裏」
これは、第157回芥川賞受賞の同題小説を「るろうに剣心」シリーズの大友啓史監督が映画化したもの。
出演は、綾野剛と松田龍平。
転勤で盛岡に移り住んだ30歳の今野秋一。慣れない土地に戸惑い、友人も出来ず孤独に過ごしていた彼は、同僚の日浅典博と言葉を交わすようになる。次第に心を許し、酒を酌み交わしたり、渓流釣りに行ったりしながら親交を深める2人だったが……
これは正直よく判らない話だった。
「人間には裏がある」と言う、当たり前の事を2時間かけて納得するだけではないか?
俳優の演技は悪くないし、物語はもっと哲学的なものを含んでいるのだろう。
その点では、映画版で入れられた主人公がゲイ、と言う設定は余分だったような……?
あと、映画冒頭、パンイチでベットに横たわる綾野剛――お尻小さく、足細く……途中までは女性の身体と見えてしまった。
◇「淪落の人」
これは、香港を代表する俳優、アンソニー・ウォン主演によるヒューマンドラマ。共演は、新人のクリセル・コンサンジ。
香港の女性監督オリヴァー・チャンによる長編デビュー作で、昨年の大阪アジアン映画祭にて「みじめな人」のタイトルで上映、観客賞を受賞した注目作。
事故で半身不随となった中年男チョンウィン。妻とは離婚、息子とも離れて暮らし、人生に希望を見いだせないでいた。
そんなある日、若いフィリピン人女性エヴリンが、住み込み家政婦としてやって来るが……
この映画、「最強のふたり」の香港版のような設定だが……これは、「夢」を諦めた2人が、夢を取り戻し、再び未来に向かって歩き出す物語。
これは、いい話だし、感動もする――個人的にはもう少しユーモアがあってもよかったかな、と思うが、まずは文句なしの内容と思う。
欲を言えば、折角、アクの強い怪優、アンソニー・ウォンを起用しているのだ、もうちょっと彼の煩悩を見せてもよかったかなぁ、と。
エヴリンが入浴中にやかんが沸いてからのシーンは、チョンウィンがてっきりやらかす、と思っていたんだけど……監督、女性なので、厭らしくなくまとめた感じだろうか?
あと、チョンウィンがエヴリンの母親を怒鳴りつけ、
「親がいつも正しいとは限らない」
とエヴリンを諭す言葉には、“母”国(メインランド)中国に対する香港の気持ちが入っているようで……この映画が撮影されたのは2018年だけど、現在作ったら、もっとその辺厳しい言い方になったんじゃないか、って思ってしまった。
PS
“AVマラソン”中に見ていたのは滝澤ローラ。ちょっと前、中国で大人気だったやつだなぁ。
◇「T−34 レジェンド・オブ・ウォー(完全版)」
これは、本国ロシアで大ヒット、日本でも昨年10月に公開され、戦闘シーンの迫力が話題となり、ヒットした戦車アクション「T−34 レジェンド・オブ・ウォー」のインターナショナル版に26分のシーンを追加したロングバージョン。
この映画、昨年秋にインターナショナル版を観ており、それよりは26分長くなったが……これを観ると、ここから26分、よく切ったよな、と言う感じ。
そのくらい、無駄に思える部分がなく、長くなっている気がしない。やはり、よく出来た映画だなぁ、と感心した。
映画終了後、場内からは拍手が沸き上がった。それも久しぶり。
◇「グッドバイ」
これは、太宰治の未完の遺作をケラリーノ・サンドロヴィッチが独自の視線で完成させ、読売演劇大賞最優秀作品賞を獲得した戯曲「グッドバイ」を映画化。
主演は大泉洋。舞台版にも出演した小池栄子がヒロインのキヌ子を演じる。
雑誌編集長の田島は複数の愛人たちと別れるため、ガサツだけど実は美人のキヌ子と嘘夫婦を演じるが……
この映画、確かに面白い……ただ、後半ちょっと失速するのが残念だけど。
それにしても、小池栄子はイイ女だなぁ……
◇「ACCA13区監察課」
これは、オノ・ナツメの人気漫画を原作に2017年に放映されたテレビアニメシリーズの後日譚をオリジナルストーリーで描くもの。
クーデター騒ぎから1年が経った首都バードン。新体制となったACCAでは1周年を祝う祭事を控え、ジーンらそれぞれの思いが交錯し……
元のアニメも知らず、予備知識なしで観るもんじゃないな、反省。
◇「1917」
これは、サム・メンデス監督による戦争映画。
第一次世界大戦中の1917年、フランス西部戦線。
英国陸軍兵士スコフィールドとブレイクは、エリンモア将軍から重要な任務を命じられる。それは、翌朝までに最前線の部隊へと向かい、後退するドイツ軍への追撃を準備するマッケンジー大佐に作戦中止の命令を届けるというものだった……
戦場をどう描くのか……映画に課せられた使命に、サム・メンデス監督は考え、その結果として、その状況に観客を放り込む、リアルタイム・ワンカット撮影――ただし、実際には複数のカットをCGで繋いだものだし、途中、主人公が意識を失って暗転するシーンがあるので、ワンカットではないが――で描き出した。その緊迫感と臨場感は、確かに一見の価値あり。確かによく出来ており、映像としては完成度は凄く高い。
でも、戦場ゲームのようなビジュアルには抵抗のある人もいるだろうし、ワンカットで見せる、と言う映像演出を重視した分、ドラマは希薄だなぁ……
◇「スキャンダル」
これは、アメリカのテレビ局FOXニュースで起きた実話を映画化した社会派ドラマ。
監督は、「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」のジェイ・ローチ。
2016年、FOXニュースの元人気キャスターだったグレッチェン・カールソンがCEOのロジャー・エイルズをセクハラで告発する。
一方、看板キャスターのメーガン・ケリーは、ドナルド・トランプ大統領候補との対決姿勢を打ち出す事で、大きな注目を集めるが、トランプ陣営からの攻撃から護ってくれない社の対応には不満を抱いていた……
それにしても、事件から3年かそこらで実名映画化してしまうアメリカ映画と言うものに感心する――まぁ、この事件の後で、ハリウッドでも告発があり、「MeToo運動」が盛り上がったと言う社会変化があったからこそ出来るようになった、とも言えるか……
映画はエンターテイメントと言うよりは、実録ドラマ寄り。セクハラ被害者の女性も、自らの欲する地位を手に入れるため甘んじてそれを受け入れていた、と描くことで、セクハラ問題の根深さと複雑さを見せるが、その結果、映画としてはいささか盛り上がりに欠けると共に、オチも今ひとつスカっとしないものになっているように思う。まぁ、実名ものとして仕方ない、とも言えるが。
あと、そこまでやらなくても、と思ってしまったのはシャーリーズ・セロンで、メーガン・ケリーと言う有名キャスターを演じるが故に、己の美貌を封印してしまっている……まぁ、過去に「モンスター」を演じたから今さら驚きはしないが、オスカー獲得も納得ではある。
◇「スウィング・キッズ」
これは、「神と共に」のD.O.主演のヒューマンドラマ。
監督・脚本は、「サニー 永遠の仲間たち」のカン・ヒョンチョル。共演はブロードウェイで最優秀ダンサーに贈られるアステア賞を受賞したジャレッド・グライムス。
朝鮮戦争中の1951年、米軍捕虜収容所のイメージアップのために、捕虜たちのダンスチームが結成されることになる。
ダンスが得意で、収容所内でダンスホールを運営していた黒人下士官のジャクソンに指導された、北朝鮮軍兵士、中国軍兵士、韓国内反動分子など、身分も立場も異なる彼らは“スウィング・キッズ”としてクリスマス公演に臨むが……
これはなかなか面白いし、中心となるタップダンスは、実力のあるジャレッド・グライムスは勿論、D.O.らも見事なパフォーマンスを見せており、見応え充分。
往年のビッグバンドスタイルのジャズ、そしてタップダンスも今となってはむしろ新鮮だ。
韓国映画らしく、国家分断が重要なテーマとなっており、国家や人民を引き裂いたイデオロギーへの疑問を投げかけるなど、単なる音楽映画に収まらないテーマと、メッセージ性を持っている。
中盤、若いふたりが激情を解き放って踊るシーンがあり、ここで使われる音楽がジャズではなく、1980年代ロック……さすがに時代的に違和感を感じたが、なるほど、と納得したのはそれがデヴィッド・ボウイであった事。
国家やイデオロギーを前に、「何者にも縛られない自由な魂」を唄うとなれば……まぁ、そう言うことか。
惜しい、と言うか残念だったのは、最後の悲劇だ。
確かに韓国映画らしいと言えばそうなのだが……そこは、主人公の兄が全てを理解して身代わりとなる、でよかったのではないだろうか?
その前のステージパフォーマンスが文句なかっただけに、最後はほろ苦くても、綺麗にまとめて欲しかったのだが、あれじゃホロ苦いどころかぶん殴るようなものだろう。
◇「アダムズ・アップル」
これは、アナス・トマス・イェンセンがマッツ・ミケルセンとタッグを組んだ人間ドラマ。
仮釈放されたアダムは更生のために田舎の教会へ送られる。ところが指導役の聖職者イヴァンをはじめ、この教会はどこかおかしかった。
キリスト教の知識がないので、物語を理解し切れたとは言えないのだが……宗教、或いは信仰と言うもののひとつの形を描くものだろうか?
それを「おかしい」と描いているのがまだ救いかも知れないが……
◇「羅小黒戦記」(2回目)
これは、中国のファンタジーアニメ。
https://heicat-movie.com/
2回目の鑑賞だけど、やはり面白いし、動きには視点移動に独自の緩急があって気持ちよい。
それにしても、こんなのを今後相手にしなきゃならんとは、日本アニメも決してうかうか出来ないだろう。
◇ 「チャーリーズエンジェルズ」
これは、2000年代に、ドリュー・バリモアらが出演し、人気となったアクション映画シリーズを、世代も時代設定も一新し再映画化したもの。
本作で“エンジェル”を演じるのは、「トワイライト」シリーズのクリステン・スチュワート、「アラジン」のナオミ・スコット、イギリスの新星エラ・バリンスカ。
監督・出演は、「ピッチ・パーフェクト」シリーズのエリザベス・バンクス。
新エネルギーを生み出す装置“カリスト”の開発者エレーナは、その欠陥に気付き上司に訴えるが却下されてしまう。
不安を覚えた彼女は国際機密企業チャーリー・タウンゼント社に連絡、待ち合わせ場所に現れたボスレーと名乗る人物に証拠を託すが……
この映画、アクションもプロットも新鮮味に欠け、世界を股にかける割にはスケール感も乏しい。
とは言え、旬の女優らを揃え、彼女らをまとめると共に、監督を務めるエリザベス・バンクスが描くエンジェルたちがとにかく元気で、いかにも現在の映画らしくはある。
クリステン・スチュワートの美貌、エラ・バリンスカの長身を活かした見事なアクション……これに対し、ナオミ・スコットは「アラジン」の時のように歌って踊る訳にも行かず、見せ場を作れなかったのはちょっと気の毒だった。
ただ、この映画、興行的には、本国で大コケしており、続編は望み薄のようなのが残念だ。
今週は、月曜に、
「名もなき生涯」
「ミッドサマー」
水曜に、
「Red」
を予定。
「スマホを落としただけなのに 2」
は見送る予定。
来週は、
「初恋」
「野生の呼び声」
「レ・ミゼラブル」
「霧の中の少女」
「黒い司法」
「劇場版 SHIROBAKO」
「子どもたちをよろしく」
は観たい……となると、来週も大変だ。
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