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三十分作成小説(ベジタブル編)コミュの両翼

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世の中

好きや嫌いだけでは

どうしようもないらしい。


真面目に生きようとも

ふて腐れようとも

世界のルールは何一つ変わらない。

それは当然のことだ。

僕一人のために

この世が動いてるわけではない。

合わせなければいけないのは僕の方。

それは幸せになるために必要なことで

一般的に言われる『常識』



…なんてバカバカしい。

僕は

幸せになることを放棄した。

もう

ツバサ以外を愛さないと決めた。

ツバサと一緒になれないことはわかっているが

それでも僕は想い続ける。

自分の気持ちを誤魔化して惨めに生きるよりも

届かない想いと共に死んだ方がいい。

例えそれが

ツバサが望んでいない僕の生き方だとしても。


時間が経つごとに

ツバサは美しく成長した。

僕らは見た目こそ似ていたが

その輝きには大きな差がついた。

当然といえば当然のことなのかもしれない。

光を浴びて生きるツバサと

影の中で生きる僕。

どちらが綺麗な花を咲かすかなんて

考えなくてもすぐにわかることだった。


進路を決めるとき

もちろん僕はツバサと同じ大学を希望した。

しかし

ツバサはそこに合格し

僕は落ちた。

その大学に近いところもいくつか受験したが

まるで運命が僕の望む生き方を否定するように

全て駄目だった。



生まれて初めて

僕とツバサは離れることになった。



高校を卒業後

ツバサは大学に進学し

僕は地元で就職した。


楽しくも苦しくもない社会人生活。

仕事は忙しく

やることが多かったので

ツバサのことを考えなくても済む時間が出来たのは

唯一のメリットだった。


それでも夜になると

根拠のない妄想と

激しい孤独感で

頭が割れるように痛くなった。


時々送られてくる

ツバサからのメールによって

その痛みは一時的に和らぐが

それでもあっという間に

ツバサを求める気持ちが心を埋め尽くした。


同じような苦しみを

四年間繰り返した。

その間

知人から女性を紹介されたり

女性の方から声をかけられたり

出会いは比較的多かった。

しかし

僕はそれらの全てに関心を持てなかった。


中にはツバサよりも可愛い子がいたのかもしれない。

ツバサよりも優しい子がいたのかもしれない。

だけど

僕が求めているのは可愛いさでも優しさでもなかった。

遠い地で暮らすツバサ。

ただそれだけを求めていた。



大学卒業間近になった

2月のことだった。

卒業論文のまとめで忙しいはずのツバサが

何故か地元に戻ってきた。

しかも親には内緒で

少しでいいから会ってほしいと言われた。

僕はそのツバサの頼みごとに対し

二つ返事で了解した。



小さい頃によく遊んだ

近所の神社での待ち合わせ。

この日は朝から暖かく

外で会うのもそれほど苦ではなかった。

僕とツバサが会うのは1年ぶりのことで

突然の呼び出しは

驚きや疑問よりも

喜びの方が遥かに大きかった。



久しぶりに会ったツバサは

まず笑った。


久しぶり


と言った声が懐かしかった。

僕は何も言わずに

ツバサと同じくらい笑った。


ツバサと僕は

神社の近くにある

大きな切り株に腰を下ろした。

記憶の中では

二人で横になれるくらい大きかった気がしたが

大人になった今では何とか二人が座れるくらいの大きさだった。

しばらくここでの思い出話を交わしていたが

少し会話が落ち着いたとこで

ツバサは話題を変えた。


相談っていうか

報告があるの。

まだお父さんやお母さんにも言ってないんだけど…



僕は嫌な予感がした。

今からツバサが口にしようとしていることは

きっと僕にとって最悪のことだ。


僕は現実を受け入れないために

耳を塞ごうかと思った。

しかしツバサはそれよりも早く

言葉を口にした。





卒業したら結婚するの。



ツバサからの報告を受けた僕は

予想外に

落ち着いていた。

ただ単純に

ツバサが言ったことを頭が理解できてなかったのかもしれない。

そして次の瞬間

僕はほとんど無意識の状態で

ツバサに言葉を返した。


僕は…

ツバサが好き。



…。

それって…?



家族としてじゃなくて

一人の女性として好き。

大好き。

生まれたときから、ずっと。




僕は

隣にいるツバサに

想いを伝えた。

長年積み上げてきた想い。

口にしてみると

案外あっけないものだった。


僕の言葉を聞いたツバサは

しばらく黙って僕を見つめた後

小さな声で

そう、とつぶやいた。

そしてまるで独り言のように

言葉を付け加えた。



…私も

好き。

家族としてじゃなくて

異性として。

でも

ちょっと遅かった

…かな?

今は

一番じゃないの。



うつむきながら

ツバサの言葉を聞いていた僕は

驚きで顔を上げ

そしてツバサの方を見た。

ツバサは優しく微笑んだ後

僕の額に軽くキスをした。



たくさん悩んだし

たくさん苦しんだ。

もし

もう少し早く言われていたら

きっと違う未来を選んでいたと思う。

でも今は

その未来を選ばなくて良かったと思う。

私がそう思えたんだから

きっとそう思える日が来るよ。



ツバサを見つめたまま

固まっている僕を

ツバサは優しく抱きしめてくれた。

喜びと

哀しみが

同じくらいこみ上げてきて

僕の目からは自然と涙がこぼれた。

ツバサに包まれて伝わる温もりは

僕の心の何かを溶かした。



結婚式当日


僕は表現出来ない感情を抱きながら

純白のドレスに包まれたツバサを眺めた。

その感情は

前向きとは言い難いが

居心地の悪いものではなかった。


今ならきっと

他の誰かを愛することが出来る。

僕はそんなことを思いながら

小さな涙をこぼした。


きっとこれが

最後の涙だと思う。

コメント(4)

いいじゃない!じっくり読んだよ!次回作に期待!
> きたじまさん
久しぶりだに(´・ω・`)

色々展開は考えたけど、まぁこれで良かったのかな、と

次も頑張ります(´・ω・`)
> みーやん♪さん
書いてる本人としては

単純に異性愛かな、と思います

気に入って貰えたなら光栄です(´・ω・`)

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