オープニングから緊迫感溢れる展開に息をのむ、薄闇の中、浜辺の豪邸を逃げ惑う美女とナチ服姿のデブ親父、執拗に追い続ける剣を持った人物、寝室に隠れ眠ったフリをする美女の口元に突きつけられる銃口、目を見開き恐怖のあまり絶叫する美女、そしてその絶叫が、主人公ケリーの歌う「Find It」に被さる、暴力的に物語に引き込む巧みな演出力、見事の一言である。さらにドライブ感溢れる「Come With The Gentle People」が流れる中、アメリカ横断地図をバックにその後に展開するシーンを取り入れたフラッシュ・フォワードの素晴らしさ、ソフトフォーカスがかかった中での恋愛描写のおかしさ、名曲揃いのサントラの中でも、最もメロディアスな「In The Long Run」を演奏するシーンで、メンバーとマネージャーの現在と過去をオーバーラップさせる見事さ等々、凡庸な監督が何人束になっても敵わない「巨乳映画の巨匠」の実力を、嫌という程見せつけてくれる。