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映画を語るコミュの「THE HILLS HAVE EYES(2006)」

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現在、日本で封印されている映画やTVシリーズの中で、最も有名なのは以下に挙げる3本であろう。

「ウルトラセブン」の第12話である「遊星より愛をこめて」は、本放映と再放送では特に問題視されることはなかった。しかし、1970年10月に発行された「小学二年生」の付録「かいじゅうけっせんカード」に「スペル星人・ひばくせい人・(おもさ百キロ〜1まんとん)・目からあやしい光を出す」という文章があった。これがある女子中学生の目に留まり、被爆者関係団体であった少女の父親は編集部に抗議文を送った。やがて、この事件が新聞で報道され、抗議運動は各団体に拡大し全国的な動きとなった。抗議を受けた円谷プロは同年10月21日付けで謝罪の意を回答し、スペル星人に関する資料を公開しないことを約束した。40年近く経過した現在でも、欠番扱いになったままである。

映画版「ノストラダムスの大予言(1974)」は、劇中で核実験により南方の原住民が被爆をし、放射能の影響で食人化して探検隊に襲いかかる場面や、核戦争で滅亡した後に放射能の影響でミュータントとなったデザインが、実際の原爆症による奇形をデフォルメしたものであったことなどが差別的であると取り沙汰された。抗議を受けた東宝は公開から4ヶ月後にはそれらの描写の一部をカットし、修正版フィルムと差し替える措置をとった。その後、音源こそはソフト化されたが、現在に至るまで再公開もビデオ・DVD発売もされないままである。

「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(1969)」は東映の配給により公開された怪奇映画で、石井輝男の監督作品である。江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」と「孤島の鬼」をベースに「屋根裏の散歩者」などの諸作品をミックスした物語となっている。今ではほとんど口にする事の無くなった「裏日本」という台詞や、常人を次々と奇形に作り変えて孤島に閉じ込めるという設定が、差別を連想させるとしていまだにソフト化されていない。しかし名画座などでは時々上映されるので、上記の2作品よりは比較的鑑賞しやすい作品である。

2006年にアメリカで公開されて大ヒットしたホラー映画「THE HILLS HAVE EYES」は、無修正版のDVDも発売され、続編までもが公開された作品であるが、日本では封印されたままである。理由は上記3作品の要素を全て含んでいるからである。

「THE HILLS HAVE EYES」は昔からの映画ファンなら、悪名高い「サランドラ」のリメイクと言った方がわかりやすいであろう。ウェス・クレイヴンの監督作品で、シトヘス恐怖映画祭でグランプリを獲得したが、東宝東和の誇大広告が酷く、ほとんどの観客が劇中にまったく登場しない「ジョギリ・ショック」なる言葉に騙された。私も当時「金を返せ!」と呟きながら劇場を後にした記憶がある。今回の「THE HILLS HAVE EYES」は設定こそはオリジナルに忠実なのだが、様々な要素を付け加える事によって単なるリメイク作品以上の出来映えとなっている。

トレーラーの事故のため、砂漠のド真ん中で立往生する一家。だが核実験場にほど近いその荒地には、突然変異を起こした野蛮な食人一族が住んでいた。

*以下、オリジナル版と同じ展開ですが、未見の方には少しネタバレがあります。

片手にガイガーカウンターを持ち、放射能防護服に身を包んだ調査員達が次々に虐殺される冒頭の場面、異形の大男が放つ強烈なつるはしの一撃が観る者全ての胸に深く突き刺さる。生きたまま炎に包まれる父親やショットガンでの頭部破壊、トレーラーハウスでの死闘、バラバラ死体のプールに閉じ込められたり切断される手足、さらには死体をむさぼる獣のような男等々、情け容赦のない残酷描写の連続である。これらがスピーディーな展開とカットの短い編集で抜群の緊張感と恐怖感を生み出している。

監督のアレクサンドル・アジャは前作の「ハイテンション」で一躍有名となった。80年代に量産されたスラッシャームービーを見事に現代に蘇らせた作品で、こちらも残酷描写の凄まじさが評判になった。ラストのドンデン返しは賛否両論があったが、個人的にはオーソドックスな展開の物語を上手く裏切ってくれたので高く評価している。今回の「THE HILLS HAVE EYES」も同じようにシンプルな展開だが、前作以上の残酷描写とハイテンションな演出で、観る者全てを圧倒させる。

オリジナル版より恐怖が増した原因は、食人一家を得体の知れない存在にした事であろう。オリジナル版の食人一家はよく喋り家族会議まで行う。ウェス・クレイブンはそのように描く事で、加害者と被害者の暴力の対等さを描いていたのだが、肝心の恐怖感が失われてしまっていた。今回のリメイク版でも無線でのやり取りはあるが、明確な家族関係を描いてはいない。それにより個々の存在が不気味になり先の読めない不安感から恐怖を与えるのである。それは彼らが暮す家の描写にも言える、オリジナル版ではただの洞窟で原始人みたいな生活で間抜けであったが、リメイク版では放射能の影響でミュータント化した姿を強調させ、核実験場に廃墟となった街(マネキンがいるモデルハウス)で暮すように変更されている。彼らはその家の中に死体を溜め込み、食料として解体するのである。その家の場面に登場する放射能で異常に頭が肥大した男の姿を見れば、なぜこの作品が日本で封印されたのかがよくわかるであろう。

ただの恐怖映画で内容が何も無いじゃないか、という批判もあるがそれはナンセンスである。観客はより強い刺激と恐怖を求めて劇場に足を運ぶ。今回の「THE HILLS HAVE EYES」は現代の若い観客達と、オリジナル版の酷さを知る観客達にも同じように恐怖を与えた、つまり多くの観客達をその恐怖と残酷描写で虜にしたのである。

今後もこの作品が日本で公開される可能性は低いので、輸入版を手に入れてでも観る価値のある真の傑作である。

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