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映画を語るコミュの「天はすべて許し給う All That Heaven Allows (1955)」

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いつまでたっても国内版が発売されないので、痺れを切らして北米版のDVDを購入してしまった、タイトルはダグラス・サーク監督の「天はすべて許し給う All That Heaven Allows (1955)」である。

クライテリオン社から発売されているので50年以上も前の作品とは思えないほどの映像の美しさである、テクニカラーの魅力が存分に堪能出来る発色の良さ、約4500円もしたが、この映像の美しさだけでも価値のある作品であった。

テクニカラーを簡単に説明すると、赤・青・緑の3本のネガフィルムを同時に専用のカメラで撮影し、1本のポジに焼く方式である。色彩とコントラストを幅広く調節出来るのと、褪色が無い為に何十年経過しても立体的な美しさを保つ事ができる。開発された当時は画期的な方法だったのであろうが、コスト重視の現代ではまず不可能な撮影方式である。代表的な作品には「風と共に去りぬ」があげられる。なお現代でもその商標名だけは残っているので耳にした方も多いであろう。

「天はすべて許し給う」は、アメリカの小さな田舎町を舞台にして、中流家庭の未亡人と若い庭師の関係を主軸に、それを取り巻く人々との関係を描いたメロドラマである。

冒頭の街並はどこかで見た事があると思ったら、「グレムリン」のキングトン・フォールズや「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のヒル・バレーと同じ場所、つまりユニバーサルスタジオのセットであった。セットではあるがアメリカの古き良き街の姿がそこにはある。ダグラス・サークは50年代のハリウッドで活躍をし、同じようなメロドラマを次々と作り上げ主婦のハートを鷲掴みにしていた。この作品でも窓や鏡を効果的に使った構図、絶え間なく流れ続けるドラマティックな音楽、どぎついまでの色彩設計、様式的な表現や抑えたセリフ回しで内面を暗示する俳優達の演技等々、舞台出身の監督ならではの表現方法で、シンプルなメロドラマに強い説得力を与えている。英語字幕での鑑賞ながら、その語り口の巧さと圧倒的な映像美で物語に引き込まれていった。

物語の最後で主人公達の恋はハッピーエンドを迎える。しかし周囲の反対を押し切ってまで結ばれた2人の先に待つものは一体何なのであろうか。それは雪景色の中から近づいて来る1頭の鹿が全てを物語っている。この鹿こそが、これから待ち受けている主人公達の姿なのだという事を。

ダグラス・サークは生前のインタビューの中で、ハッピーエンドについて「絶対的な終わり。そのあとには何もない」と語っている。しかし物語のその後をあれこれと想像する事こそが、観客の大いなる楽しみでもある。タランティーノは「パルプ・フィクション」の中で「ダグラス・サーク・ステーキというのは、表面がカリカリだけれど中身は地獄みたいに血が滴るんだ」と語らせていた。つまり台詞や演技で説明するのではなく、ハッピーエンドの先に待ち受ける悲劇的な結末を暗示させる演出で、作品をより味わい深いものに仕上げているのだ。だからこそ現代も活躍する多くの監督達に深い影響を与えているのである(トッド・ヘインズ、フランソワ・オゾン、ジョン・ウォーターズ、ジョン・ウー、ティム・バートン、クェンティン・タランティーノ等々)。

冒頭にも書いたように、サークの作品は日本ではほとんどソフト化されていない。しかし日本のドラマや韓流ドラマにも影響を与えているので、一日でも早く気軽に観られるようになって欲しいものである。

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