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おも詩ろ荘コミュの管理人地下倉庫(けいきょう作品トピ)

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 言いだしっぺが作品トピックス作らないわけにはいかないわけでありまして。
 こちらで拙作披露させていただくことといたします。
 なるべくお返事したく思っていますので、短いものから長いものまで、感想、批評、キツイ一撃、よろしければお寄せくださいませ。

コメント(22)

  メカこいさん


 さあ、こいさん着きましたで
 思い出の法善寺、水掛け不動さんへ

 覚えたはりまっかこいさん
 わてが初めて<Fuji-Yoshi>に
 奉公に上がった晩
 こいさんがここに連れて来てくれはったのを

 こいさんはお不動さんに
 一心に
 ギ、ギガガ 
 いうて長いこと
 その銀色の機械の手ぇ合わせてくれはった
 分かってます、ええ分かってますともこいさん
 「はよう立派な板場はんになりいや」いうて
 わてのために願かけてくれてはったんでっしゃろ
 わかってますともこいさん

 わては、わてはあの時から
 こいさんに惚れてしもうたんです

 こいさんもこんな半人前の気持ち
 ギ、ギガガ
 いうて受け入れてくれはった
 嬉しおました
 わてほんまに嬉しおました

 けれど惚れおうてはいても人とメカ
 強烈なロケットパンチの一撃と引きかえに
 親方はんが二人の仲をどうにか許してくれはった後も
 世間の風は冷とうおましたなあ
 いいえ、いいえ、辛かったのはわてだけやおまへん
 こいさんのほうが、もっと、もっと……

 ギ、ギガガ

 ほらこいさん見とくなはれ
 水掛け不動さんの肩のところ欠けたままですわ
 あれはあのときこいさんが
 その可愛らしい口、ピーガシャッって開いて
 噴射しはったジェット水流の勢いが強すぎて
 苔ごと吹っ飛ばしたからですわ
 こいさんのやさしい気持ちが
 ああして残ってるの見ると
 わて、わて・・・・・・

 ギ、ギガガ

 三年、三年待っとくれやすこいさん
 立派に修行つんで三年経ったら
 きっと一人前の板場になって帰ってきますさかい
 そしたら、そしたらこいさん
 そのときは晴れて夫婦に・・・・・・

 こいさん
 ギ、ギガガ
  
 (ひしっ)

 あ、こいさんちょっとキツイ
 こいさんキツイです
 キツイってこいさん
 こ、こいさん、ほらわての骨ボキボキいうてる
 こい、さん、わて鼻血でてきた
 こ、いさ、ん、わ〜耳血も出てきた
 
 あ〜、あ〜
 あ〜、わてもうあきまへんわ
 うわっ、目ん玉落ちよった
 
 こいさん
 三年待てまへんでしたかあ・・・・・・

 ギ、ギガガガ


  <参照 十二村哲作詞(飯田景応作曲、藤島恒夫歌唱)
    「月の法善寺横町」>
 じゅらいちさん、コメントありがとうございます。
 「漫画や映画では、ギャグやパロディーというジャンルが確立してるのに、どうして詩ではあまりそういうものを見ることがないのだろう」と思うところがありまして、その手のものを書いていきたいと思うワタクシがおります。
 でも書きあがったものを読み返すと、いつも「ラジオ放送用のコント(小咄)原稿」とどこが違うのだろう、と凹まなくもないのであります。
けいきょうさん、

>いつも「ラジオ放送用のコント(小咄)原稿」とどこが違うのだろう、と凹ま>なくもないのであります。

んなこたないですよ。
読者に何らかの感慨をもたらすことが詩という形で出来れば上等だと思います。
それが笑いであっても何がいけないのでしょうか?
もし詩の世界がそれを認めない慣習があるのなら、あなたはラッキーです。
その道をひたすらに突き進み、詩の革命者になってください。

ぼくは前からこの詩は大好きでしたよ。
 しましんさん。
 お褒めにあずかり光栄です。そう、これ某感想トピでしましんさんに「おもしろかった」と書いてもらったものの若干の改稿であります。
 にしても「革命者」・・・おぉぉ、が、がんばります・・・

 でもこういうもの実はまだ「一人称」でしか書いたことなくてですね、ていうか「一人称でしか書けない」のです。まあ書き方としては「まだそれでいいのかな」というところもあるのですけれども。
  増殖お父さん


 朝起きると、お父さんが増えていた

 ばさり、ばさ、ばさり
 ず、ずずーっ、んぐっ
 しゅふしゅふしゅふ、おえぇーっ、んがらーっ、ぺっ
 ぶっ、ぶりゅりゅりゅっ、ぷぴぴっ、ぶぴっ

 わたしはお母さんに
 お父さんの下着とわたしのものといっしょに洗わないで
 なんて言ったりしないし
 まーそれなりにありがたいなあと
 素直に思っているから
 今どきデキタムスメなのではないかと
 うぬぼれていたのだけれど

 さすがに四人いっぺんはキツイな

 何言ってるんだ洋子目が覚めたら毒虫になっていたヤツだっているんだぞ洋子
 そうだぞ洋子おまえは普段から本を読まないからそんなことも知らないんだ洋子
 いいなあ洋子今日から収入四倍だぞおこづかい増えるぞ洋子
 おーい洋子紙ないんだ紙取ってくれ洋子

 あのさあ、どうでもいいけどさあ
 いいかげんうっとうしいんですけど
 お父さんお父さんお父さんお父さん

 「ね、最近生え際スッゴイ後退してきたよね」

 家を出る間際言ってやった
 ふん、勝手に増える父親になんか
 これくらいのこと

 待ちなさい洋子!
 待ちなさい洋子!
 待ちなさい洋子!
 待ちなさい、あ、だから紙取ってくれって洋子ぉっ!

 少しだけスッとした気分で
 いつもの千恵との待ち合わせ場所に行くと

 おはよーヨッチね家庭科の課題やってきたわたしほとんどおばあちゃんに手伝ってもらったんだへへへやっぱりバレるかな
 おはよーヨッチうちのお母さん今日寝過ごしちゃってさあお弁当入れてくれなかったんだだからわたし今日学食だよほんとおいしくないよね学食ってば
 おはよーヨッチやだよねー一時間目から体育なんてさほんとヤダとりあえず最初に運動場走らせるのだけはやめてほしいよねサイアクー
 おはよーヨッチねね聞いて聞いてわたしちょっとやせたんだよまあそりゃヨッチにはかなわないけどさあでもヨッチちょっとやせすぎだようわたし心配になるときあるもんあっそうだじゃあ今日さ帰りにお好み焼き食べに行かない行こう行こうねねねけってーい

 やっぱりお父さんも友だちも
 ひとりでじゅうぶんだよ
  爆発お父さん


 ぼんっ

 お父さんさあ
 そのコトバはやめなさいって怒るから
 言わないようにしてるけど
 我慢できないよわたし
 言っちゃうからね

 ウザイんだけどマジで

 思い出したよ前さ、四人に増えた時もさ
 今日と同じで
 お母さん婦人会の日帰り旅行で出かけた後だったよね
 やめてくんないかな
 こうやって二人きりになった時
 ヒトリムスメの気を引こうとするの

 事故じゃないよね違うよねわざとだよね
 だって見てたもんちゃんと
 わたしがイスに座るの見計らってるの その瞬間
 ニチャッ
 って笑ったの 
 ちゃんと見てたもんわたし

 あーあー
 わたしにお父さんこびりついちゃってるよ

 顔を洗って制服着替えて(ほんとめんどくさい)
 家を出るとき言ってやったんだ

 「このハゲチャビン」

 お父さんの残骸が
 何かぷんすか言ってるみたいだったけど
 無視してドアをドバンと閉めた

 待ち合わせ場所に慌てて行くと
 いつものように千恵が待ってて

 おはよーヨッチ遅かったね

 ニチャッ

 わたしもう今日は学校休む
  殺意の夏


 駅裏の路地、昼下がりの喫茶店
 いつもの奥の席に座ってわたしは
 小さなノートをそっと開く

 店の外はきっと炎天下
 でもお休みのわたしには
 わたしだけの時間をたゆたうわたしには
 何の関係もないこと
 寒すぎない冷房も
 オルゴールで流れるモーツァルトの小ささも
 字を書くには困らない照明の暗さも
 無口な髭のマスターも
 何もかもがちょうどいい

 天気予報は夕方から雨
 きっと涼しくなるだろうから
 それまではここに居よう
 カップを持ちあげれば
 柔らかな香ばしさが鼻をくすぐって
 大好きなブルマンをひとくち
 それからわたしはペンをとる
 そして、ただ心のままに・・・

   三日月にぶら下がったフェアリー
   ねえ、そんなところで遊んでないで
   わたしの部屋にやってきて
   ほら、流れ星に跨った友だちが見えるわ
   お願い、二人で伝えに行って
   あの人のもとへ
   わたしのこの思いを

 うふふ
 さあ、ここからどうしようかしら
 うふふふふふ・・・
   
  
  <カランコロンカラン>

 うわあっ、すずしっ 涼しいわあ、この世の極楽やぁ
 しかし何や薄暗い店やな、これ
 え〜っとイマデガワはんわいなあ
 居てはった居てはった イマデガワはんえろう遅れてしもてすんまへん
 あんたみたいな高給取りえらい待たせてしもて
 いやいやいや、あきまへんあきまへん もう青息吐息ですわうちなんか
 しかし何やいなこの喫茶店 おしぼりも持って来ぃひんのかいな
 あ、来た来た そうそうお待たせやでぇトロいのは牛でもするでぇオネェちゃん
  <パンッ>
 いやぁ暑い ほんまに暑いわぁ今年の夏は
 ちょっと失礼しまっせ
  <グシッグシッグシッグシッ>
 あ〜チベとうて気持ちエエわぁ オネェちゃんすまんけどおしぼりもう一本持ってきてんか
 はいはい何度もすんまへんなオネェちゃん
 いやぁ駅からここまで歩いてくるだけで首から胸から汗でズクズクですわあ
 またこれちょっと失礼しまっせ
  <ゴグシュグッシュゴシュッグゴゴシュッ>
 いやぁほんまチベとうて気持ちエエわあ
 あ、お冷いただきまっせ のどカラカラですねん
  <ングッングッングッンググッ>
 ふはぁっ 生き返りまんなこら
 しかしこれもうちょっと冷房強ぅしてもエエんとちゃいまっかイマデガワはん
 ねえ、入ったときは涼しい思うたけど、慣れたら何や頼りないですわ
 マスター、ちょっとマスター! もうちょっと冷房キツうしてえな そうそう強うして、弱したらアカンがな
 ほんま夏の喫茶店がぬるこいような冷房でどないすんねんな
 髭の手入れするヒマあるんやったらギンギンに冷房きかせとけっちゅうねん なあイマデガワはん
 え、何ご注文? うーんそやなあ、アンタ貰おかオネェちゃん
 ゲヒャヒャヒャ セクハラ言いまんのかこういうの なあイマデガワはん
 冷コーや冷コー 夏は冷コー かわいいあの子の名前はレイコ、ちゅてな
 ゲヒャヒャヒャヒャ オネェちゃんここ笑うとこやで なあイマデガワはん
 何ミルクいるかやて? えーごほん、それはあれかオネェちゃん、アンタのお乳か
 ゲヒャヒャヒャヒャヒャ やっぱしセクハラ言いいまんのかこういうの なあイマデガワはん
 ゲヒャヒャヒャヒャヒャ
 ゲヒャヒャヒャヒャヒャ……

 
 死ね、死ね、死ねえぇっ!!
 イマデガワもついでに死んどけえぇっ!!

  

  (本作は中島らも『ビジネス・ナンセンス事典』(集英社文庫)の「下品」の項を若干の参考とさせていただきました)
 じゅらいちさん、よしたかさん、コメントありがとうございます。なんだか過分な感想いただきまして、なんともはや恐縮です。
 「読み手をどん引きさせつつ、笑わせることはできないか」という芸の部分にこだわったような作品でして。
 もうちょっとコンパクトに収めたかったのですが、これだけの行数かかってしまいました。
 あと中島らものエッセイで参考にしたのはオッサンの下品な行動の描写です。
彼の文章への「返詩」みたいなところもありますので、いつか『下品』こちらにて紹介させていただきます。
  動詞と形容詞の問題


 ある、は動詞で
 ない、は形容詞

 おもしろいですよね
 そこに在ったら動くもので
 なければかたちになるなんて

 そうね、おもしろいね

 いっぱしの文学青年を気取る
 ぼくを見てあなたは
 ほほ笑みながら
 グラスをグビッとやったのだ
 心配するほどの濃さの
 ウイスキーロックを、グビッと

 そのあとぼくはきっと
 好きだった本や映画や女の子のことを
 あなたに話したのだろう
 会うたびいつもおなじみの

 動詞である理由は実は簡単で
 あなたがあなたとして
 在ったから、ぼくはあなたと
 出会えて、会いに行って、お酒を飲んで
 そんなふうに笑って

 でも形容詞である理由がまだ分からないでいる
 もうあなたが
 亡いことを、ぼくは
 どんなかたちにして留めていればいいのだろう

 朝が来ても目覚めなかったという
 ないことのありようを聞いたって


 ある、は動詞で
 ない、は形容詞

 そうね、おもしろいね
ぼくは、この詩を浅草橋のホームで読んで、「やっ」と小さく叫んで、右手を左耳の上のあたりに運んで、ポリポリと掻いたよ。氷解とはこのことですね。
 いえいえ。なんともはや、みっともなく。
 どうしようかと迷ったのですが、自身の「ケリ」として公開させていただいた次第なのでした。
斬新ですごい。読んでいくうちに惹きつけられて引きつけを起こしかけました。
星新一さんを想起してしまいました。あははは。
新ジャンル確立のお人ですね、けいきょうさんって。
すばらしい。更なる作品に期待してます。
 わわわ、過分なコメントありがとうございます。
 最近はほとんど書けてなくて、おまけにPCが逝去され「もうこのまま『おも詩ろ荘モバイル管理人』として余生をまっとうするか・・・涙」と悲観的になっていたのですが、これも何かの機会なので、「原稿用紙に手書き」という原点に立ち返ってみようと思っています。
 せっかく個人部屋作ったことだし、ここにもちゃんと作品晒さないとなあ、うむ。
【現代詩・ヤクザパロディシリーズ】
 ?石垣りん「悲劇」より


  悲喜劇

 
 京浜国道を霊柩車が走ってきた。
 ヤーさんが歩いてゆく、前方から

 と、運転席と助手席で
 二人の男が笑っている
 (見たことある顔だな)
 何やら話しながら
 ことに助手席に座っている赤ら顔の大男が
 まことに愉快そうに
 ワッハッハ、と声がきこえそうな表情で
 笑っているのである

 静かな運転
 霊柩車はヤーさんのかたわらを通り過ぎてゆく
 うしろには柩がひとつ
 文句のないお客様である

 そのあとからベンツ、セルシオ、リンカーンが続いた
 いずれ一目で分かる筋者
 ひっそり、刺し違える覚悟で乗っている
 それも束の間
 葬列はゆるやかに走り去っていった

 「あっ、てめぇ」
 ヤーさんは気づいて振り返り、手を挙げて叫んだ、
 芝居の演出者のように
 「てめぇら源田石組の
  その棺桶はコンクリ詰めのホトケだろう
  まさかうちの親分じゃねぇだろうな
  おい待てこの野郎」

 広い大通りのまんなかで
 である。
  スケルトンお父さん

 
 うわぁ コーヒー流れてってるよ
 おぉ 心臓ってあんなにドクドク動くんだ
 あれが肺で、あれが胃か 肋骨って頑丈そうだな
 理科室の人体模型のとおりになってるよ

 ちぇ 油断してたなあ
 まさかお母さんが家にいる時にやるなんて
 交通立ち当番の日を狙ってくるとは

 でもさ 何が腹たつってその知らん顔だな
 やめてよねそうやってこっちうかがうの
 我が親とはいえ不気味なんだから
 頭蓋骨にチラ見されるのは

 あとね タイミング悪すぎ
 この前の生物の試験範囲そのまんまだもん
 うわーお父さん勉強になるぅ、なんて
 言ってほしかったら一週間前にやれっつうの

 何も言わずに家を出た
 その後わたしドアから顔だけ、にゅっ
 そう、表情は限りなく深刻に
 声は出したことない低さで

 「お父さん、肺に黒い影、あるよ」

 ドバタンッ(よ、洋子ぉっ)

 ふんだ知るか ざまあみろ怪奇骸骨男め
 イカレルムスメの嘘にさいなまれて今日を過ごせ

 
 あれ、千恵遅いな

 ごめーんヨッチ寝過ごしちゃったぁ

 ぷぷっ まだまだだな千恵
 それじゃただの全裸だよ
 我が父の域には達していないとみえる

 わ、ヨッチ髪切ったんだねすごく似合ってるよ

 えーっとね、んーっとね千恵
 ひとつ訊きたいんだけどさ
 前から来る人来る人みんな千恵見て
 動けなくなったり
 飛び下がったり
 叫び声上げたりしてるのは
 わたしも理由が分かるんだけどさ
 今十二月でしょ で、あんたさっきから
 唇青むらさき色に変ってて
 鼻水激しく垂れてきてるよね

 ううーんわわわたたしもももかかか髪ききき切ろっかなななな
 イイイイイイメージチチチチェンジジジしししてみたかったんんだだだだ
 ヨヨヨヨヨヨッチどどどどどどう思ううううううう

 ほら、そうやって歯がガチガチ鳴ってて
 全身ガタガタ震えてるんだけどさ

 千恵、あんた透けてるんじゃなくて
 ただすっぽんぽんで歩いてるだけなわけ?
  プリンお父さん


 何それ
 頭の上のそれ
 ピュンってちょっと出てるの
 白々しくテレビ見てないでさ
 訊いてほしいんでしょ
 だから訊いてあげてるじゃない
 ほら答えなよ
 それ何だってのよ

 お母さん同窓会だもんね
 麗しき日曜の午後
 ひさびさ念願の父娘水いらず
 お父様にこんなに愛されて
 洋子は幸せにございますぅ 
 ってか
 
 ははん
 バカみたい

 何よ
 何なのよ
 何だってのよ
 そんなピュンと出た頭で睨んだって
 怖くもなんともないわよ
 訂正するわ
 
 バカみたいじゃなくって
 バーカ

 痛っ

 何で
 何でよ
 何で叩くわけ
 信じられない
 何で叩かれなきゃいけないわけ
 ほんと信じられないよ
 もういいかげんにしてよ
 何よ 何なのよ
 冗談じゃないわよ
 ピュンと出たこれ何なのよっ
  
 プッチン

 あ 折れちゃった

 
 「ここで臨時ニュースをお伝えします映像をごらんくださいこのように先ほどから高校生の娘を持つ父親が彼女をええつまりままま愛娘を突然強く抱きしめるという現象が全国各地津々浦々隅から隅までずずずいっと発生しています起きているんですってばわたわたわたしにも高校一年生のむむむ娘がいますいるのですいるのだってばあああ理恵理恵理恵おまえへの愛が愛が愛が愛がこぼれるこぼれてくるこぼれ出てくる止められない止められやしない止められないんだ帰る今からすぐ帰るぞお父さんは帰ったらおまえを抱きしめて抱きしめて抱きしめてやる抱きしめずにおくものかおぉーんおんおんおぉーんおんおんおおん」

 
 いやだ 何よ これ

 ちょっと
 折れたピュンと出たの持って
 何にやにや笑ってるのよ

  パパが戦車でやってくる

 
 べつにデートってわけじゃ
 ぜんぜんそんなのじゃないし
 楽譜を買いにいくだけだし
 二人で

 キュラキュラキュラ キュラキュラキュラ
 (洋子)

 合唱コンクール
 伴奏に選ばれたわたしと
 指揮を押しつけられた彼と
 二人で

 キュラキュラキュラ キュラキュラキュラ
 (洋子、洋子)

  俺できないよあいつらふざけて選んだだけだもん
  大丈夫だよ同じ手の振りふり返してるだけでいいから
  そうなの
  うんわたしのピアノ聴いて同じ動き繰り返してたらそれでいいよ
  そんなもんなの
  うんそんなもんだよ

 不安そうな目が
 ちょっとよかったんだ

 キュラキュラキュラ キュラキュラキュラ
 (洋子、洋子、洋子)

 だから
 今度の日曜いっしょに楽譜探しに行こう
 って
 どっちから言いだしたわけじゃなくって
 やっぱり指揮者と伴奏者は
 ちゃんと連携してなきゃならないし
 さ

 キュラキュラキュッ

 あ、いた

 弾込めぇー
 たたた
 弾込めぇっ

 えへへ
 待たせたっていいよね

 照準合わせー

 ごめん
 遅れちゃった

 落ち着いてー
 照準、落ち着いて合わせー

 あの素晴らしい愛をもう一度、なんて
 超古い歌だよね結局センセの趣味じゃん
 うん、うん、うん
 でもいい歌だよね
 わたしもそう思う

 照準良ーし

 え、え、え
 そんなに学校いるときと雰囲気ちがう
 かな……

 テーっ!

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