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D*D*CallコミュのHEAD/phones〜ヘッド・フォン〜9

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「むやみに動き回ってもガソリン減るだけだもんな…どうしよう」

「意外に、もうキャンプ場内だったりして」

「お前はほんとポジティブだよな」

「そうか?」

「言い方変えればただの能天気だけど」

「なんだよそれ」

「言葉通りだよ」

「お前なー、人をバカにするのもいい加減にしろよな」

「別にバカになんてしてないだろ。ただ、幸せな奴だなぁと」

「それがバカにしてんだよ!」

「陽ちゃん、どうかした?さっきから元気ないみたいだけど」

「あ、いや…大丈夫です」

「お前、話変えるなよ」

「そういや、優は?」

「おい!これじゃ俺がバカみたいじゃねーか!」

「あっ、いた」

優は陽助と同じ方向からゆっくりと歩いて来た。

「クッソー!あー!もー!行くぞー!優!」

ノブオが呼びかけるが返事がない。しかし、優の場合は大抵それが常だったので、さして気にもしなかった。

優は黙っていた。誰にも言わなかった。聞こえるはずもないのに、人の声が聞こえてきたなんて…。

---俺がおかしいのか?

自分でも理解出来ない事を他の奴等が理解出来るわけがない、優はそう思った。

コメント(2)


ノブオは再び車を走らせた。ガソリンの残量を見ながら、もう少し先まで行ってみる事にしたのだ。
このままここにいてもどうなるわけでもないし、可能性がある限り動き回るしかない。死を考えるのは行くところまで行ってからだ。健太郎は心の中で自分にそう言い聞かせていた。

「なんか同じ景色ばっかでつまんなくないか?」

ノブオは退屈そうにあくびをすると愚痴を言い始めた。

「そんな事言ってる場合かよ」

「だってよ、ほんとなら今頃川で釣りなんかしてるはずだったんだぜ?」

「まったく、お前は…」

「ちょっと待て!バカ扱いはやめろよな」

「じゃあ、グダグダ言わずにしっかり前向いて運転してくれよ」

「俺はタクシーの運転手じゃねーぞ!」

「そっちの方が百倍マシ」

「お前、またバカにしてるだろ!」

「してないよね?陽ちゃん」

「え?…ええ、してないです」

「陽助、まさかお前も俺の事バカにしてんじゃねーだろうな?」

「だから危ないって!ちゃんと前向いて運転しろよ!優も黙ってないでなんとか言ってくれよ………あれ?」

「なんだよ?」

「今…林の中に人がいたような気がしたんだけど…」

「ほんとか?俺を騙すつもりじゃ」

「そんな事するかよ…でも、見間違いかもしれない」

「ビビらせんなよな」

「スマンスマン…ってビビったんだ?」

「なわけねーだろ」

健太郎はもう一度注意して林の中の暗がりに目を向けた。しかし、誰もいない。
やっぱり見間違いだったんだろう……けれど、あれは確かに人の形だったと思う。頭に手足……いや、木がそう見えただけかもしれない。内心はきっとすごく不安なのだろう。

健太郎は確信を持てないまま期待を捨てきれずにいた。すると、再びそれは視界に入った。

「あっ!ほら、やっぱり、いたいた!あそこ!」

林の中を指差して興奮気味に叫ぶ。

「またかよ」

「ほんとだって!いいから車止めて!」

ノブオは車を止め窓から乗り出して健太郎が指差す方向を見る。

「どこだよ?」

健太郎は車から降りて林の中を凝視した。
確かに今…あの暗がりに人の姿があったのに…。

「健太郎、誰もいないぞ?陽助、なんか見えるか?」

「何も見えないですねぇ」

「ほらな。きっと見間違いだろ」

いや、確かに何かがいた。木の影なんかじゃない。あれは意思を持ったナニカだった。

「ちょっと見てくる」

健太郎はそのナニカの正体をつかむべく、林の中に入って行った。

「あ、おい!待てよ、健太郎!」

ノブオが車から降りて健太郎を追って来る。

「あ、ちょっと…」

その後を陽助が追う。

健太郎は変な胸騒ぎを覚えながらも林の奥深くへと進んで行く。冷たい空気が肌にしみて骨まで達しようとしていた。

「…確かこの辺だったと思うんだけど」

健太郎は人影がいた辺りまで来たが、それらしきものはどこにもない。

「なんか分かったか?」

追いついたノブオが後ろから声をかけた。

「見間違いなんかじゃない…」

「誰もいないですねぇ」

「どっかに行っちまったのか?」

「分からないけど」

「ここまで来ていないんだから、いないんだろ。さぁ戻るぞ、健太郎」

「そうですよ」

「……そうだよな」

そして、三人が諦めて戻りかけた、その時。

「うわっ!!」

「なんだ!?この臭いは…オェッ!!」

「臭い!!」

どこからともなく臭ってくる強烈な刺激臭が、三人の脳を次第に麻痺させていく。目の奥、鼻の奥、喉の奥、耳の奥が焼けるように熱い。全身の毛穴からも入り込んでくる臭いに五感は奪われ、やがて三人の体は崩れ落ちていった。そして、一瞬にして周りは真っ白な濃い霧に覆われていく。徐々に薄れていく意識の中で、健太郎はもう一度あの黒い人影を見たような気がした。

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