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アキグレコミュのテノトトクゲのweb小説『裏日本特務部隊』第十四話

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投票結果→1:エリーゼのことを思う


「――――――――――っ!!」

 渡會丈が倒れた瞬間、エリーゼは何か叫んでいた。
 怨嗟とも悲哀とも怒号ともとれる、魂が砕け散るような咆哮。

 それを伴って、私では視認すら出来ない速度でトイフェルに突っ込む。
 並の敵ならそれで勝負が着いたのだろうが、どうやら一筋縄ではいかない相手らしい。

 耳鳴りがするほどの激しい剣戟が始まった。

「……ありゃキレたね」

 臥門と同様、いやそれ以上に彼という存在に私は興味がそそられる。
 まさか半日も経たない内に、彼女にここまで影響を及ぼすとは思いもしない。

「……ここで死なせるには惜しいね」

 拳を握って、私は人知れずそう呟いていた。

 武器や兵器にしか興味の沸かなかった私が、
 生まれて初めて生身の人間に興味を示したのだ。

「おチビちゃん、泣いている暇があったら手伝いな」

 泣きながら渡會丈にしがみついている披験体NO.――
 ……いや、彼女にはもうコーディという立派な名前がある。

 彼女も、既に渡會丈の影響を受けている。

 私があだ名で呼ぶ事に文句を言ったのだ。
 今までは『どんな風に呼ばれても仕方ない』と、そういう顔をしていたのに。

「……博士?」

「そこの死にかけを奥の部屋まで運びな」

 彼女にそう指示を出して、私は準備の為に先に部屋へ向かう。
 すっかり湿ってしまった煙草を吐き捨て、新しい煙草を吹かす。

「これから手術……。いや、只の手術じゃシまらないね」

 私は、元より人間の身体を弄るのは好きではない。むしろ嫌いだ。

 武器と兵器。私の人生はそれに尽きる。

 金属を熱して引き裂き繋げ合わせ、その時の思いつきで形作る。
 火薬や燃料そして弾丸の加工。その実験の度に犠牲になる実験体の悲鳴。

 その過程を経て完成した芸術品の活躍する姿を見るのが……堪らなく好きだ。

 そして、今からそれを人の身体に組み込もうというのだ。
 おそらく生涯で初めてにして、最後の大事件だろう。

「……渡會丈の、改造手術を始める」

 終わるまで、何も邪魔が入らないことを祈るばかりだ。

「頼んだよ、エリーゼ」


◇◆◇◆


「……うぁああっ!」

「ギィッ!」

 私は只がむしゃらに攻撃をしていた。
 戦術も何もない、まるで子供が喧嘩をする時のようなデタラメな攻撃。

 ……それ故に相手の攻撃もまともに喰らうことになる。

「っぐふ!」

 両手を弾かれ、その隙に腹部へと重い衝撃が走る。

 何の小細工もない頭突きだが、
 残っていた角の基礎部分が鳩尾にめり込んで呼吸が圧迫される。

 私の身体はそのまま壁まで吹き飛ばされた。

「ギギッ」

「……っく」

 追撃してきたトイフェルを牽制すべく私は爪を振るう。
 だが手刀を叩き付けられ、左の爪は根本から砕けてしまった。

「っな!」

「グヒッ」

 容赦ない蹴りが、私の脇腹を捉える。
 存外に広い室内のおかげで何とか受け身を取るが、
 折れた肋の痛みですぐには立ち上がれない。

「こんな所で――」

 そこまで言って、ハッとする。
 私は、彼が口にしていた台詞を言おうとしたというのか。

 死すら恐れぬよう教育を受け、
 自身にもそう言い聞かせてきたというのに。

 私は今確かに『死ねない』と、言おうとしていた。

「……っふ」

 私はそれ程までに彼から影響を受けていたという事か。
 そう理解した瞬間、何故か緊張の糸がぷっつりと途切れてしまった。

 壁にもたれ掛かって、溜息を吐いてしまう。

「……今更理解しても、遅いですよね」

 奥の部屋へ運ばれたようだが、あの傷ではもはや助かるまい。

 万能の天才と唱われている敷嶋博士でも、
 満足な医療施設のないこの場所で手術する事は不可能だろう。

「グルルル――」

 私へ向かってきていたトイフェルは、不意に踵を返す。
 動けない私には、止めを刺すまでもないと言っているようだ。

「そっちには――っ!」

 行かせる訳にはいかない。
 私はよろめきながらも追いすがり、残った右の爪を振りかざす。

「ギヒッ」

「っぁぐ!?」

 しかしその攻撃はいとも簡単に避けられ、
 逆に腕を取られて肘から折られてしまった。

「ぐぅぅ……」

 このままこいつの侵攻を許せば、博士もコーディも殺される。
 ……たとえこの身がどうなろうとも、それだけは許す訳にはいかない。

「グッグッグッ」

 笑うように唸り声を上げて、トイフェルはそのまま部屋へと向かう。

「待て――っ」

 私はまだ死んでいない。身体も動かせる。

 ……だが、武器がない。

 銃はおろか、この部屋で私に扱えそうなモノなど――


選択肢:折れぬ心
(【】に選択肢の番号を入力してコメントに書き込むか、
テノト トクゲ宛にメッセージを送ってください)

1:この身そのものを楯にする
2:何とかして扱えそうなモノを探す

コメント(5)

それでは投票〆切マスー。

今回は
1:この身そのものを楯にする
になりましたー。
それでは、三日以内の更新をお待ちくださいー

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