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200×年映画の旅コミュの2007年10月上旬号(その他邦画旧作・2)

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「斑女 はんにょ」(10月13日 シネマアートン下北沢)
1961年/監督:中村登

【★★★★ 軽さとシリアスが巧みにミックスされ、絶妙なバランスを保った、都会派のモダンな風俗劇】
 シネマアートン下北沢の2本目は中村登「斑女」。
 中村登の映画は、5年前、2002年のGWに三百人劇場で18本を観て、良くも悪くも、松竹大船の優等生として、世に言う大船調を実践する律儀さを感じましたが、この「斑女」は観逃してしまったので、これは今回初めて観る映画です。
 タイトルの字面(“まだらおんな”ではなく“はんにょ”と読みます)からは、何やら古風で和風なお話を勝手に想像していたのですが、冒頭のタイトルバックには賑やかなイラストが採用され、谷川俊太郎・作詞、武満徹・作曲、ペギー葉山・唄による軽快な主題歌が流れるので、呆気にとられました。そして、実際の映画は、コメディと呼べるほど笑える部分はないものの、銀座のホステスの生態を主題にして、軽いタッチの作りが貫かれた風俗劇になっており、しかも岡田茉莉子、山村聰というコンビが軽い芝居の応酬を見せる点において、5年前に観て最も心を動かされた傑作「河口」を想起させたのであり、中村にもまだまだわたくしの知らない佳作があるのだということを思い知らされました。
 タイトル・クレジット明け、画家の山村聰が東京タワーの絵を描いているところに、北海道の夫のもとから義弟を連れて駆け落ちしたものの、その義弟とも別れて独り暮らしする決心をしたという岡田茉莉子が、義弟・佐々木功から逃げようとして姿を現わすところから、物語が始まります。電話ボックスに隠れる岡田。追ってくる佐々木を追い払う山村。佐々木が去って、岡田を食事に誘う山村。再び姿を現わしたものの、山村も姿を消して途方に暮れる佐々木。そこにサングラスに派手な衣装という出で立ちで現れる、銀座クラブ・ホステスで山村の愛人の芳村真理。そこにいると思った山村がいないことで、芳村が佐々木を連れて心当たりのあるレストランを訪ねると、案の定、山村が岡田と食事しており、岡田は、別れたいと思っていた佐々木と鉢合わせしてしまいます。
 このあと、芳村はパトロンの山村にせがんで、東京タワーの見える高級マンションへの引越しを了承させ、芳村がそれまで住んでいたアパートに岡田と佐々木が転がり込むことになり、義弟といつまでもズルズル同居するわけにいかないと思った岡田は、佐々木に住み込みの仕事をあてがうべく、アパートの管理人・沢村貞子に依頼し、その沢村は早速ラーメン屋の配達夫としての住み込み仕事を佐々木に紹介し、沢村のところに居候として転がり込んでいる大阪娘・倍賞千恵子(これがデビュー作です)が佐々木に想いを寄せて接近を試み、主人公の岡田自身は、芳村が働く銀座のクラブでホステスの同僚として働き始め、そんな岡田のことをひそかに目当てにする山村や、宝石商の杉浦直樹が常連として店に通いつめる、といった具合に、物語はテンポよく進行してゆき、岡田がホステスとして世俗にまみれながらも、女性としての愛情を向ける先を求めて苦悩する姿や、同僚の芳村や峯京子らがホステスとして男を操ってゆく姿を、浮き彫りにしてゆくのです。
 芳村という愛人がありながら、岡田にも色目を使う山村や、岡田に気がある素振りをしながらも、外国からの宝石ディーラーに岡田を譲って平然としている杉浦など、字面で書くとドロドロとした愛憎劇が展開しそうに思えるかも知れませんが、中村登にドロドロは似合わず、あくまでも軽いタッチの会話劇としてサラリと成立させてしまう血液サラサラの洒落人ですから、この映画も、軽さとシリアスが巧みにミックスされて絶妙なバランスを保った、都会派のモダン風俗劇になっているのです。
 愛人の山村におねだりするばかりでオツムが空っぽの姐ちゃんと思われた芳村が、ちゃっかり初恋の男と結婚準備をしており、一定の貯金が溜まったら、山村には律儀な別れを告げて、恋人のもとに走るという、恋の女としての実像を示したり、コツコツと金を溜めていた峯が、今度は陶器会社の御曹司という触れ込みの佐藤慶から結婚話を持ち出されて幸福の絶頂を味わっていた矢先、実は結婚詐欺師だった佐藤によって財産の一切合財を盗み取られて、精神のバランスを崩してしまい、結局は恋する相手を見つけられなかった自分への恨みつらみを吐くなど、弱い女の実態を表したり、一度は山村の次なる愛人の座に納まろうとした岡田が、結局は当初の駆け落ち相手だった佐々木を選ぶという、古風な女としての素顔を見せたりといったふうに、小市民的な幸福に立ち返ってゆくあたりも、中村らしい理性と知性が働いているように思えました。
 わたくしが観た中村の映画の中でも上出来の部類だと思います。武満徹のコミカルな主題歌も洒落ています。


「宴」(10月13日 シネマアートン下北沢)
1967年/監督:五所平之助

【★ 岩下志麻の科白回しも、眼を剥いた芝居も、ヒステリックで浅慮な役柄も我慢がならず、演出も貧相】
 この日のシネマアートン下北沢の3本目は、五所平之助の「宴」。
 これまた初めて観る映画でしたが、わたくしは岩下志麻という女優がとことん苦手なのだということを痛感するばかりで、彼女の眼を剥いた大芝居が耐え難く思え、語尾を上げたセリフ回しが鼻につく一方でした。
 中山仁扮する、二二六事件に連座する陸軍青年将校へのプラトニックな想いを胸に抱いたまま、川辺久造が演じる能楽師と愛のない結婚をして、川辺も自分も不幸なまま結局は破局を招き、揚げ句の果ては処刑された中山への愛に殉じて命を絶つという岩下の役柄も、浅慮で、身勝手で、ヒステリックという、女性性の弱点とされる特徴をすべて併せ持ってしまったとしか見えず、東京に異例の大雪が降ったという日に中山を歌舞伎見物に誘った岩下が、早めに帰ったほうがいいのではないかと正論を口にした中山を甘ったれた声で制した上、全ての交通機関がストップしたため歩いて帰らざるを得なくなると、凍傷を起こしかけたり、気を失いそうになったり、中山に迷惑をかけ続けるばかりで、観ていてイライラさせられっ放しだったのであり、「だから女のバカは手に負えなくてイヤなんだ」などという女性蔑視の言葉が口から漏れてしまうのでした。
 五所亭の演出も、斜陽期の撮影所事情を反映しているとはいえ、狭苦しくて安っぽい絵しか作れず、肝心の二二六事件の描写も、スタジオの書き割りに雪の議事堂が描かれただけ、という実態が憐れですらありました。

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