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在原業平の魅力コミュの伊勢物語と古今和歌集  第八十三段

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伊勢物語と古今和歌集  第八十三段


  忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや
     雪踏み分けて君を見むとは  (雑歌下 970 在原業平)

「親王が出家なされわび住いなさっていることを、ふと忘れて、夢ではないかと思うことである。かって思ったであろうが、雪を踏み分けて行って、親王にお目にかかろうなどということは」(久曾神昇)

 業平の絶唱である。三代実録によると、惟喬親王は29歳の時に出家されている:「貞観十四年七月十一日。已卯。四品弾正尹惟喬親王。寝疾頓出家為沙門」

 僕はこの歌を古今和歌集ベスト10に入れるが、これは既に伊勢物語にある歌でもある。 古今和歌集では雑歌下に入れてあるが、恋でもないし、羇旅でもないし、四季の歌でもない。幽斎か誰かが、古今和歌集には雑歌こそみるべきものがあると言うたが、この歌をみると、本当にそう思う。

 伊勢物語の第八十三段をみると、この段が二つの話がつながり、その間になんともいえない‘断絶’がある。急変である。岡潔が寺田寅彦の随筆で、確か奥さんの死去に関しての随筆が一番よいと云うてられたが、そこにも‘断絶’があった。 

 伊勢物語第八十二段の前半は惟喬親王の水無瀬への狩りでお供した業平であったが、惟喬親王は業平を引きとめて、帰りたい業平を返さない。そこで、業平は次の歌を詠んだ。

   枕とて草ひき結ぶこともせじ
     秋の夜とだにたのまれなくに

「ここで旅寝の草枕を結ぶことはいたしますまい。秋の夜ならば夜長を頼みにゆっくりもできますが、春の短か夜ではその頼みもむりでしょうから。」(渡辺実)

 しかし、夜を明かしてしまわれ、業平も付き合うはめになった。 しかし、「かくしつゝまうで仕うまつりけるを、思ひのほかに、御髪おろし給うてけり。」と事態は急変する。 伊勢物語の作者はどういう意図で前半の話をもってきたのだろうか。

 前段の第八十二段では惟喬親王は酔って、先に寝所に入られた。業平はもっと親王と盃を交わしたかったのに。しかし、この段では惟喬親王はいつまでも寝所にゆかれず、夜を明かしてしまわれた。惟喬親王に何か鬱屈とした感情が湧きあがり、寝床で転々とするよりは、業平と語り明かすことしか自分の感情を押さえることができなかったのではないか。そこを前段と、本段の前半で用意し、後半の話につなげたのではないだろうか。

 また、後半の歌は、いつまでも親王の傍で話をしたい気持ちがあり、それと前半の歌との対比も面白く、前半のエピソードはこの業平の女性のもとに急ぎたい気持ちを詠った歌の話でなければならなかったのだろう。
 

原文:
むかし、水無瀬にかよひ給ひし惟喬の親王、れいの狩しにおはします供に馬頭なる翁つかうまつれり。日ごろへて宮にかへり給うけり。御送りしてとくいなむと思ふに、おほきみたまひ禄賜はむとて、つかはさざりけり。この馬頭心もとながりて、

   枕とて草ひき結ぶこともせじ
     秋の夜とだにたのまれなくに

とよみける。時はやよひのつごもりなりけり。みこ大殿籠らであかし給うてけり。かくしつゝまうで仕うまつりけるを、思ひのほかに、御髪おろし給うてけり。正月にをがみたてまつらむとて、小野にまうでたるに比叡の山のふもとなれば、雪いとたかし。しひて御室にまうでてをがみたてまつるに、つれづれといとものがなしくておはしましければ、やゝ久しくさぶらひて、いにしへのことなど思ひ出で聞えけり。さてもさぶらひてしがなと思へど、公事どもありければ、えさぶらはで、夕暮にかへるとて、

   忘れては夢かぞとおもふ思ひきや
     雪ふみわけて君を見むとは

とてなむ泣く泣く来にける。
 

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