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在原業平の魅力コミュの伊勢物語と古今和歌集  第八十二段 世の中に

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伊勢物語と古今和歌集  第八十二段 世の中に


 伊勢物語の第八十二段は比較的長く、しかも豊かな抒情性があり、美しい段の一つといえるだろう。惟喬親王は水無瀬の離宮への桜狩りに毎年行かれるのだが、これにいつものことだが右馬頭と言う人(業平)がお供をした。今回はこれに紀有常もお供を申し上げた。

 さて、この段には歌が六首詠まれるが、その内、古今和歌集には四首採用されている。業平朝臣の歌三首と紀有常の歌一首である。しかも、連続して採用されているのではなく、春歌上、羇旅歌二首、雑歌上と一組を除いてバラバラである。

(1)
渚の院にて桜を見てよめる
   世の中にたえてさくらのなかりせば
     春の心はのどけからまし  (春歌上 53 在原業平朝臣)

「この世の中にまったく桜の花がなかったならば、あわただしく散ることもなく春はさぞかしのどかであろうに」(久曾神昇)


 原文では「いま狩する交野の渚の家、その院の桜いとおもしろし。その木のもとにおりゐて、枝を折りてかざしにさして、かみ、なか、しも、みな歌よみけり。馬頭なりける人のよめる。」 とあり、桜が大層見事に咲いているから、どのような歌を詠むのかと思うと、期待に反して、桜がなければ、春の心はのどけからましとひねくれた歌を詠う。 そこで、別の人が次の歌を詠んだ。

   散ればこそいとど桜はめでたけれ
     うき世になにか久しかるべき

 業平の歌をたしなめたような感じがある。 

(2)
惟喬親王の供に狩りにまかりける時に、天の河といふ所の川のほとりに下りゐて、酒など呑みけるついでに、親王の言ひけらく、「狩りして天の河原に至るといふ心をよみて、盃はさせ」と言ひければよめる
   かりくらし織女にやどからん
     あまのかはらに我はきにけり  (羇旅歌 418 業平朝臣)

「一日中狩りをして日を暮らし、今夜は織女星に宿を借りよう。天の河原に私は来てしまったのであるから」(久曽神昇)

 原文では「交野を狩りて、天の河のほとりにいたるを題にて、歌よみて杯はさせ」と若干の異同がある。歌を詠んだ上で一杯飲もうというのだから、即興性の強いものとなるのは仕方がないであろう。この歌は非常に単純、直截的である。


(3)
親王、この歌を返す返すよみつつ返しえせずなりにければ、供にはべりてよめる
   一年にひとたびきます君まてば
     やどかす人もあらじとぞ思ふ  (羇旅歌 419 紀有常)

「織女星は一年にただ一度だけ来られる牽牛星を待っているのだから、その他には宿を貸すような男などあるまいと思う」(久曽神昇)

 惟喬親王は返歌できなかった。同じような歌を詠もうとしていたら、業平にもってゆかれたのだろうか。では別の趣向でと考えるが、妙案が出ない。そこで、有常が助け舟。久曽神昇は宿貸す男と解釈されるが、伊勢物語の原文からみれば、渡辺実の解説(「新潮日本古典集成」)にあるように、この人は織女星であろう。親王(牽牛)を待つ女性は、親王だけを待つのだから、業平のような男に宿を貸すわけがなかろうと、有常は業平をからかったわけである。

(4)
惟喬親王の狩しける供にまかりて、宿りに帰りて、夜一夜酒を呑み物語をしけるに、十一日の月も隠れなむとしける折に、親王酔ひて内へ入いりなむとしければ、よみはべりける
   あかなくにまだきも月のかくるゝか
     山の端にげて入れずもあらなん  (雑歌上 884 業平朝臣)

「まだじゅうぶんに堪能しないのに、はやくも月は西山に没してしまうのであるか。山の端が逃げて行って、月を入れないようにしてほしいものであるよ」(久曽神昇)

 惟喬親王は酔われてお休みになるという。業平はまだ宵の口とでもいうのだろうか、酒には強い業平と想像されるが、面白くないので、「あかなくに」と詠んでしまった。惟喬親王を月に例えたか、逃げないようにしてくれといわんばかりである。

 これに和すかのように、有常も次の歌を詠む:

親王にかはり奉りて、紀有常、

   おしなべて峰もたひらになりななむ
     山の端なくは月もいらじを

「どの山の峰も一様に平らになってほしい。山の稜線というものがなければ、月が沈むこともなかろうに。」

 何か、山の稜線が身分の違いを示す一線のようである。君たちと同じ身分であれば、いつまでもドンチャン騒ぎをしていられるのだが。有常は惟喬親王の気持ちを忖度したのだろうか。


原文
「むかし、惟喬の親王と申す親王おはしましけり。山崎のあなたに、水無瀬といふ所に宮ありけり。年ごとの桜の花ざかりには、その宮へなむおはしましける。その時右馬頭なりける人を常に率ておはしましけり。時世へて久しくなりにぬれば、その人の名忘れにけり。狩は懇にもせで酒をのみ飲みつゝ、やまと歌にかゝれりけり。いま狩する交野の渚の家、その院の桜いとおもしろし。その木のもとにおりゐて、枝を折りてかざしにさして、かみ、なか、しも、みな歌よみけり。馬頭なりける人のよめる。

   世の中に絶えて桜のなかりせば
     春の心はのどけからまし

となむよみたる。また、人の歌、

   散ればこそいとど桜はめでたけれ
     うき世になにか久しかるべき

とて、その木の下はたちてかへるに、日暮になりぬ。御供なる人、酒をもたせて、野より出できたり。この酒を飲みてむとて、よき所を求め行くに、天の河といふ所にいたりぬ。親王に馬頭おほみきまゐる。親王ののたまひける、「交野を狩りて、天の河のほとりにいたる題にて、歌よみて杯はさせ」とのたまうければ、かの馬頭よみて奉りける。

   狩り暮らし棚機津女に宿からむ
     天の河原に我は来にけり

親王歌をかへすがへす誦じ給うて返しえし給はず。紀有常御供に仕うまつれり。それがかへし、
   一とせにひとたびきます君まてば
     宿かす人もあらじとぞ思ふ

かへりて宮に入らせ給ひぬ。夜ふくるまで酒飲み物語して、あるじの親王、ゑひて入り給ひなむとす。十一日の月もかくれなむとすれば、かの馬頭のよめる。

   あかなくにまだきも月のかくるるか
     山の端にげて入れずもあらなむ

親王にかはり奉りて、紀有常、

   おしなべて峰もたひらになりななむ
     山の端なくは月もいらじを
 

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