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高木神話コミュの高木の女  第七部 女心とレミファソラ

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携帯の着信音が鳴る。






その着信音は、あまりにも高木だった。


ヴィクトリアの飼っているフェレットがその着信音に震えていた。


ヴィクトリアは電話に出た。

「もしもし…。」




「うん。ヒマ。」











ヴィクトリアは電話を切るとすぐ電話帳を開き、
働いている店に電話をかけた。


店員がその電話に出ると小さくかすれた声で、
「今日は体調が悪いので休みます。」
そういってすぐ電話を切られてしまった。






さあ、ヴィクトリアが慌ただしく今日の服と化粧の準備を始める。

その慌ただしさに驚いたフェレットはベットの陰で丸まった。


軍艦マーチが流れ、
「大ヒット御礼」の旗が揺れた。


ソーラン、ソーラン




ソーラン節を口ずさむほどに、ヴィクトリアは完全に乗っていた。







待ち合わせ場所は市ヶ谷だった。

待ち合わせ時間ちょうどに着くと、高木はすでにプロントの前で腕を組んで待っていた。

浮かれているヴィクトリアとは反対に、ドンフライ高木はどこかムッとしていた。

高木が無言で歩き出したので、ついて行った。



ヴィクトリアがせっかくお洒落をしたのに、そのことに関して高木は突っ込んでくれなかった。

本当に高木は昔から、女心とレミファソラがわかっていなかった。


その後も、沈黙が続いていた。







無言のまま高木に連れて来られた場所は釣堀だった。


「考え事でもしようぜ。つり堀池 巧で。」

高木はそう言うと、完全にひとりの世界に入ってしまった。

「つり堀池巧?」








かつて、清水エスパルスに在籍していた選手だったという事実は後に、店のママに教えてもらった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−


退屈をしたヴィクトリアは魚を見ていて思った。


釣堀の魚は、
釣られては水槽に戻され、また釣られては戻される
ということを繰り返している。

エサには困らないが、重労働に疲れた顔を見せていた。




魚は何を考えてるのか。







私のやってるキャバクラも男を泳がせているようで、本当は自分が水槽の中で泳がされているのと同じ。




まったく、パクパクしてんじゃねえよ。



働いている自分を、つい想像してしまった。






釣堀はみんなで魚を釣ろうとするからエサのあげ過ぎで、水槽が緑色で臭くなっていた。




釣った魚にエサをあげ過ぎて緑色に濁っていた。

豚骨スープに紅しょうがを入れ過ぎていた。



ヴィクトリアは高木に話し掛けた。




「ねえ、もし神様が私を手のひらに乗せてるとしたら、水はこんな緑色に見えてるのかな?」





すると高木は口を開いた。







「木を見ずに森を見れば、林があったことに気付く。」




「え?」

意味わかんない。


会話が噛み合わない。
この人、天然?


すると高木がまた口を開いた。

「サングラス取ってから見ねえとわかんねえよ。」




ヴィクトリアのかけているサングラスはレンズよりシャネルのマークの方が大きかった。



そう言われるとヴィクトリアはサングラスを外した。


するとヴィクトリアは、ピンときた。





いつの間にか日が暮れかけていて、
夕暮れに染まった市ヶ谷の釣堀は緑ではなく、誰が見ても、





きれいなオレンジ色だった。





神が見てもそう答えてしまうくらいきれいな光景だった。







二人はまた話さなくなった。



今度は沈黙を静かに楽しんだ。






ヴィクトリアは考えていた。


キャバクラを辞めようかな。







夏が終わると、サングラスをはずす。



高木の一言はヴィクトリアに夏の終わりを告げた。








手についたエサは臭くて洗っても洗っても、ニオイがなかなか取れなかった。



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