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無題〜UN TITLE〜コミュの第十四話 KOHMOTO

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「流行ってんだよ、このゲーム!お兄ちゃんだって絶対はまるって!!」
 ゲーム雑誌をバシバシとたたきながら必死に妹の光が訴えてくる。光のおねだりは一度いいだしたら聞かない。粘り強さは一品だ。大抵言いくるめられてというか、根負けしてしまう情けない兄英世である。だが一応は応戦を試みるのである。
うるさげにネクタイを緩めながら妹の光を押しのけ椅子に落ち着くと、光がテーブルにとこれを見よ!と言わんばかりに雑誌を広げてみせる。
「…あのなぁ。大体、いつ僕にゲームをする時間があるっていうんだよ。それにどうせすぐお前は厭きるだろう。流行り流行ってすぐ… 」
 言いかけて製作者のスタッフリストに気になる名前を見つける。ゲームの概要と編集者のコメントの最後に加えるように記載されてある名前の中に『真田比呂(元レッドモンキー)』とある。確か『服部真澄』への聴込みにいつも横槍を入れてくる男の名前と一緒だ。
「真田、比呂…。レッドモンキー…?」
「レッドモンキー知ってたの?! ね、ね!!面白そうでしょ!真田比呂って元漫才師なんだけどイケメンなんだよぉ。しかも頭もいいの!このゲームも結構、難しいらしいんだけど日本の歴史満載らしくって遊びながら勉強もできるって一品なのよ!絵もきれ−だしぃ!それから…」
 『真田』の名前に思わず意識を『服部真澄』の事件へ飛ばした兄の沈黙をゲームに興味を引かれたと勘違いし、どこかの叩き売りの口上かの如く、怒涛のように光が勧めまくる。しかし兄の無反応振りに業を煮やし、兄のワイシャツの両腕部分をつかみ「買ってよぉ〜!!」とゆさゆさと振るいにかける。危うく椅子から落ちそうになった兄は無理やり現実に引戻された。
「わ、分かった!分かったから!頼むからもう少し考えさせてくれ!!」
「考えたって一緒じゃん!早く買ってきてね♪」
 考えるってのはゲームのことじゃないんだが…。と言った兄の言葉など到底耳には入っていない光はこの場はTVドラマへと興味を移して居間へと去っていく。こうなっては買ってくるまで毎日のように同じ事の繰返しになる事が予想できた兄は大きなため息をひとつこぼす。
「おーい、光。ところで僕の食事はどうなってるんだ?」
「ん〜?光はいま大変忙しいので適当にどうぞ。お湯は沸いてるよぉ。」
ちらっとこちらを見たきり軽く頭の上で手をひらひらさせて答える光。
兄英世はいつもの事ながらカップラーメンに湯を注ぎ、妹のマイペースぶりと自分の不甲斐なさとに再び大きなため息をついた。

つづく

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