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無題〜UN TITLE〜コミュの第十一話 KOHMOTO

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 とにかく、あの服部少年に記憶を少しでも取り戻してもらい話を聴き出さない限りには話が進まない。なんと言っても唯一の当事者なのだ。ただ、被害者なのか加害者なのかそれすらも彼の記憶に懸っている。
 ひたすら通ってついに今日でついに三ヶ月目。最近の若い奴ら、といっても諸先輩方から言わせれば僕なんてまだまだひよっこ同然なのだが、特に、そう、例えば妹の光、だ。つい先月だか先々月に流行った曲をすでに「懐かしい」と言うのだ。十年ひと昔という言葉はあいつには存在しないのだろうか。いや、世間がそうさせるのか。ほんの三ヶ月の間に世の中の情報はどんどん書き換えられて行くのだ。この事件だって三ヶ月前にはマスコミも挙って取材だなんだと取上げて報道され「お父サンのためのワイドショーランキング」でも群を抜いていた。それが今じゃ「そんな事件もあったね程度」だ。何の関係も興味のない輩らにはただの通りすがりの情報の一つなのだ。当事者にとっては未解決な状態には変わりないというのに…。
だからこそ僕の聞き込みに懸っているのだ!事件解決のために服部少年の記憶を今日こそは!と意気込んでナースカウンターの横を通り過ぎようとする僕にすっかり顔なじみになってしまった婦長が声をかけてきた。
「あら、西園寺くん。服部くん、今日は外出しちゃってますよ。」
婦長の後ろから若い看護婦がクスクスと笑いながら言葉をを加えてくる。
「刑事さんも大変ですね。なんか、いつもタイミング悪いって言うか」
待て。昨日の担当医の話、というかいつも付き添ってる真田比呂とか言う男の話だとまだしばらくは外出どころか病室を出ることもままならないような状態だと…。
「刑事さんって、毎日のように来ますけど他にお仕事無いんですかぁ?」
「ちょっと、その言い方、まずいわよ」
「え、あ、ごめんなさい!じょ、冗談ですよ、世の中事件だらけですもんね!」
いやあ、なんかグッサリと突き刺さる冗談ですね。あはは。
「それより、いつ戻るんですか?もちろん外泊じゃないですよね?外出できるくらいなんだからそろそろ話聞けますかねぇ。」
 出鼻を挫かれ情けな気な僕に対し、婦長がいつものことですというように
「どうですかね。西園寺くんてば、なぁんかタイミング悪いから」
と笑いあう。当たってるだけに何も言えないが、はい、そうですね、何て話で終わるわけにもいかないのだ。すると意味ありげに若い看護婦が告げた。
「でも、もう帰る頃だと思いますよ。そろそろ日も暮れる頃だし、ねぇ」

つづく

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