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THE HARD-BOILED DIARIESコミュの「効果」THE HARD-BOILED DIARIES

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「最近、お酒に酔えないのよ」

彼女が言った。
少しやつれている。顔色も悪い。
なのに、グラスを次々と空けていく。
いい飲み方とはいえない。
複雑な悩みを抱えているのは知っていた。
いつものバーは避けて、安いけれど景気のいいハプを選んだのは、
少しでも元気を取り戻してほしいからだった。

「おれに酔えばいいじゃないか」
軽口をジャブにして様子を見る。
「あなたに? 悪酔いしそうだわ」
ガードは堅い。手強そうだ。ステップを刻んで回り込む。
「夜明けのリバイバー・カクテル(気付けの一杯)に、
おれのキスはどうだい?」
「気付けには確かに効きそうだけど、おいしくは無さそうだわ」
おっと、いきなりのストレートだ。スウェーバックでかわす。
「良薬は口に苦し、さ」
「毒にも薬にもならない男が、よく言うわ」
良し。おれのペースに乗ってきた。

「でも、君はいつもおれと飲んでる。
何か効能があるんだろう?」
「偽薬効果(プラセボ)かもね」
「偽りは、人の為と書く」
「何が言いたいの?」
「おれは君のためにいる。君のそばにいる。
真実だろうと偽りだろうと、君の役に立てるならうれしい」
「いい言葉ね。誰に教わったの?」
「結婚詐欺師の友人から。こう言えば詐欺にならないってさ」
「いいお友達がいるのね。大切にしてあげて」
「残念ながら、今は別荘にいる。戻ったら奢ってやろう」
「結局、捕まったのね」
やっと笑ってくれた。
やっぱり君には笑顔が似合う。これは口にはしなかった。
すればノックアウトだ。彼女じゃない、おれが。

「リバイバー・カクテル、頂こうかしら?」
思いがけない言葉だった。
クルマを手配してもらおう、と言いかけた時、
彼女はウェイターを呼び止め、
「ウコン・ハイを頂戴」
と言った。
「おい、ウコン・ハイって・・・」
かなり不味い。

「あなたのキスより、数倍美味しいわ。それに効能も確か。でしょ?」

おれは肩をすくめて応えた。

彼女はいつもどおりの悪態と笑顔を取り戻していた。
つまり、おれの勝ちってことだ。

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