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THE HARD-BOILED DIARIESコミュの「口説く」THE HARD-BOILED DIARIES

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「最高の口説き文句って何かしら?」

いつものバーで彼女が尋ねた。

「君を口説くときに、おれが使った言葉さ」
「あれは最低ね。あんな単純な言葉で口説かれる女なんているかしら」

じゃあ、なんで君はおれの隣に座って飲んでるんだ?と言いかけたがやめといた。

「チームのメンバーのことよ」

彼女は今、チームを率いている。そのチームの話が酒の肴になることが多い。
メンバーの成功談、そしてリーダーとしての彼女の失敗談。
笑ったり、悔しがったり、失望したりの忙しい酒になっている。
おれはそれを黙ってそれを聴いている。
最近の肴はやや湿っぽい。

若いメンバーは能力があるのに、それを使おうとしない。
自分に足りないものがあると自覚しながら、それを補う努力をしない。
いつも自分のことだけ考えている。チームというのは名ばかり。気持ちはバラバラ。
何よりも野心がない。本気にならない。
そんな若者たちのモチベーションをどう扱ったらいいか、
上司として、どんな言葉をどう伝えれば、彼らは動き出すのか、そういう質問だ。

最近気に入りの、というか彼女の影響で飲み始めたバーボンを傾けながら訊いた。

「おれが君を口説くときなんて言った?」

彼女はちょっと呆れ顔で言う。

「だから、これはそういう話じゃないの。ビジネスの、ううん、チームの話。
 真剣な話なの。茶化さないで」

君を口説くとき、おれだって真剣だったさ。

「いいから、答えろよ。憶えてるんだろ?」

「『おれには君が必要だ』、よ」

「男と女だろうがチームだろうが、人と人との繋がりはそうは変わらない。
『私にはあなたが必要だ』と言ってやれ。どんな言葉よりも効果がある」

彼女はバーボン・ソーダを空けて言った。

「そうね。少なくとも『愛してる』よりは効果があったわ」

おれは彼女にその言葉を言ったことがない。
彼女の台詞はおれへの痛烈な嫌味だ。

それでも、君はおれの隣にいる。君にもおれは必要なのさ。

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