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物語が作りたいんだ!!コミュのヒトサライ

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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜「ヒトサライ」〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「またかっ」
怒号に近い声が走る。その声は同じ様な感情を連鎖的に増やしていく。
「これで何人目だ」
「それも同じ様な境遇の子供ばかり」
人々の声は幾重にも重なり、響き渡る。
貧しいと一言では片づけられない様な、この村で悲劇と呼ばれる出来事は行われていた。
村は小さく貧しい。いや、より貧しく小さく、そしてまた違った悲しみを持つようになった。それもこれもこの飢饉のせいだけと片づければどんなに楽だろう。
この村は山岳部にあり、山の斜面を切り崩した小さな畑で小さな貧しい麦や野菜を作るだけしかなかった。それでも十分とは言えないが、村人が暮らせるだけの作物は作れていた。しかし飢饉が襲った。雨は降らず、地は乾き、井戸や清水が湧き出る泉は枯れ、作物は育たず、人々は明日の糧さえ、いや今日生きる為の糧さえ得られずにいた。そしてある人は自分の家で飼っていた家畜を殺して食べたり、食べる事の出来る家畜を持たないある人は生き延びるための糧を求めて村を出て流民となったり、そしてどちらも出来ない人はただただ生きる事を強制的に終了させなければならなかった。
そしてその生きる事を強制的に終了せねばならなかったのは、体力のない老人や子供であった。
その中の多くの者たちは家族に看取られる事が出来、また看取られなくても村の者によって埋められたり出来たのである。
しかしその中で看取られる事も埋められる事もなく、忽然といなくなる者達がいた。
その多くは、いや全員が全員子供で、飢えと病によって明日にも死んでしまいそうな子供達だけが忽然といなくなるのである。まだ比較的体力のある子供は忽然といなくなる事はなく、必ず明日をも知れぬ様な子供だけが夜はいたのに朝にはいなくなっているのであった。
最初のうちは明日をも知れぬ子供だからと言って慰めも出来たのだが、それがすでに十数人に上っているのだから、これはもうただ事では治まらない。飢饉だから仕方がないとは片づけられない。全く別の話である。しかし村人にははけ口のない憤りと理不尽な悲しみにくれるしかなかった。
しかしそれは突然やって来た。
ある男が食料を探しに山中に入り、不思議な建物と人間を見たそうなのだ。
その男が言うには不思議な建物、いや建物と言うほど大きくなく、馬車程度の大きさで見たことの無いような形をしており、また人間も変わった格好をしていたそうだ。近くにはその人間が住むのには丁度良いくらいの洞穴もあって、中から子供のような声がしたようなのだ。
この話を聞いた村人達は人さらいはその人間に間違いないと思い、子供達を取り返そうと話し合った。そして体力のある男達と見てきた男でその人間の住むと思われる洞穴に武器になりそうな農具を持って向かうことにした。
男達は男の案内で近くまでくると確かに不思議な馬車くらいのものがある。近くには洞穴もある。
さらに近くまで行って洞穴の様子をうかがうが中には誰もいなそうで、子供の声もしない。
男が見たという人間もいなそうである。男達は恐る恐る中に入ってみると確かに誰もいない。だがこれまた見たことの無い不思議な物が数多く置いてあった。その人間は出払っているのだろうと思った男達は洞穴の箇所箇所に隠れてその人間を待つことにした。
幾時が過ぎたろう。その人間が洞穴に戻ってきた。その人間は確かに男がみたというように不思議な格好をしていた。しかしその格好を恐れていてもなにもならないと思った一人の男が、その人間の前に飛び出した。
そしてそれに合わせたように箇所箇所に隠れていた男達が一斉に飛び出した。
「おい。お前。さらった子供達はどうした」
男達の一人がそう言ったが、その人間は何も答えない。
次々に男達は同じ問をその人間にぶつけるが、何も答えない。
その声に隠れていた場所から遅れて出てきた男がいた。その男は遅れて出てきたせいか、その人間の背後に立つような格好になってしまった。しかしそれが幸いしたのか、その人間が手のひらに光ものを隠し持っていたのが分かった。男はそれが何かの武器に見えたのだろう。それを奪おうとその人間に体当たりした。それがあまりに勢い良く体当たりしたため、不意をつかれたその人間は正面に立っていた男に体当たりした男ごとぶつかった。
ぶつかった拍子に男の持っていた農具が、その人間の腹に刺さった。
刺さった農具は肉を裂き、赤い鮮血を増殖させ、その鮮血は放出している者より放出させた者達を怯えさせた。
そしてなにより、その人間の口を開けさせたのだ。
その人間は周りで怯える男達には分からないような事を喋ったのだ。
「くそぅ。この傷じゃあ助からないな。俺が死ぬ前に教えておいてやる。まあ半分はわからないだろうがな。」
「あんたらの子供は無事さ。ただここにはいない。戻ってくる事もない。未来で無事に生きているハズさ。俺は未来からタイムマシーンに乗ってやって来た。2000年後の未来からね。その頃世界では戦争が起こって人口が数百万人までに激減した。そしてその戦争で使われた核兵器が同時に副作用を起こした。被爆した人間、特に男の生殖機能を著しく低下させたんだ。それも数世代に渡って。だからどんな事をしても世代が下るにつれて人口はどんどん減っていく。俺が来た頃は数万人までに減っていた。そこで人類は考えた。やっと出来上がったたった一台のタイムマシーンを使って過去の正常な生殖機能を持った人間を未来に連れてこようと。そうすれば人口減少が止められるかもしれない。しかし問題もある。何も考えずにただ連れてきてしまえば、未来が変わってしまうかもしれない。だから考えた。だったらその時代で周りに影響を及ぼさないで死ぬ人間ならば、未来に影響しないかもしれないとね。そこでこの村の様に飢饉や疫病で死ぬ子供なら、未来で簡単に治せるし、影響がない。だから死にかけの子供ばかりさらったのさ。」
「だから安心しなよ。戻ってはこないが、あんたらの子供は生きてるぜ。」
「一つ最後に頼みがある。この時代にここにある機械があっちゃいけないんだ。お願いだ。あんたらがここを出た後、このボタンを押してはくれないか。」
そういうと、その人間は四角い箱を手渡すと
「ここだ。ここを離れたら、このボタンを押してくれ。」
そう頼んだ。男達はその人間の話を総て理解することは出来なかったが、最後の望みだけは叶えてやろうと箱を受け取った。
男達は洞穴から離れ、その人間の言われたように箱のボタンを押すと、不思議な牛車ほどの建物と洞穴が爆発した。中にいた人間ごと。
男達はその爆発を見届けると、村に戻っていった。
その後、男達はこの事は話もせず、話そうともしなかった。

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