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物語が作りたいんだ!!コミュのSun And Moon

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「あなたを愛していました。」



水たまりは台風が過ぎ去って清々しく晴れる空を映したがっているが、都会の水たまりにはそんな余裕はなく、人や車の行き交う中で常に水面を揺らしているため、空さえ写し込む暇さえない。
本格的な夏にはまだ早く、台風が持ち去った湿気の為に過ごしやすい。だから立番をするにはとても適した日だろう。
立番をしているのは小島郁夫。今年で警察官になって3年目である。警察官になって、意気込みと意識は人並み以上にはあるが、まだ経験という点においてはまだ乏しく、それもあってか端からみるといっこうに警察官に見えない。本人もそれを自覚しているのか、常に警察官であろうと心がけているらしい。
小島の勤務している交番は、大通りから少し入った住宅街の中にある。少し先には公園もあるし、住宅街もあってか都会にしては緑も多い。道行く人も普段に見慣れた人がほとんどで、これと言った事件事故も少ない。
だからこの立番の仕事も比較的多いだろう。だが立番自体は若手に回される事が多く、この日も小島の当番であった。立番はずっと立っている時間が長いため、比較的嫌がられるのだが、しかし小島はこの立番は嫌ではなかった。街を行き交う人々を見るのが好きだったというのもあるし、それに常に警察官であろうと心がける小島にとって、全ての仕事はそれの一つであったのだから。
だが理由はそれだけではなかった。
立番をしながら視線を辺りにおくっている。行き交う人、行き交う車達を見回す。時間も夕暮れ時とあって日差しも柔らかく、そのせいだろうか視線に入る人達の表情も心なしか柔らかい。この時間になると、小島はある方向に視線を送ることが多くなる。
今日もそれは小島の視線の先に現れた。
だんだん時間と共に大きくなり、姿がはっきりしてくる。今日は大きな買い物袋を抱え、危なげな足取りでゆっくり歩いている。
いつもこのくらいの時間になると、この交番の前を歩いてくる女性だった。
数ヶ月前に初めて彼女を見て、一目惚れした。
その日も立番をしていた。その目の前をただ横切っただけだったが、その姿に一瞬で目を奪われていた。肩より少し長い栗色の髪、優しく透き通った瞳、凛とした表情と流れるような立ち姿に。
その日以来、このくらいの時間に見かける事が多かった。
名前も素性も知る事なく、目の前を通り過ぎるその女性。
その姿をただ見つめる。それは心を奪われた小島の小さな秘密であった。
いつもと同じく通り過ぎる、はずだったのだが今日は違っていた。
大きな買い物袋を抱える彼女は、そのせいでとても危なげな足取りで、しかもそこかしこにある水たまりでさらに危なげになる。そして小島の目の前で、彼女の抱えていた買い物袋は足取りの危なげな彼女の手を離れ、引力の運命に従って地面に落ちてしまった。地面に落ちた買い物袋から抜け出した野菜達は、持ち主の好まざる水遊びに興じ、転げ回る。
その遊び回る野菜達を悲しそうな表情で見つめる持ち主は、落胆という名のため息を一つ吐くと、少し茶色く濡れた野菜達をしゃがんで集め始めた。
それを目の前で見ていた小島は、彼女を手伝うため、小島もしゃがんで野菜達を集め始める。
「あっ、すみません。ありがとうございます。」
そうお礼をいう彼女と小島の顔が向き合った。
「綺麗だ・・」
心の中で小島は呟いた。いや実際に呟いたのかもしれない。
「えっ?何か・・・」
「い、いえ何でもありません。」
小島は慌てて否定し、野菜達を拾い始める。
確かに、その時見たものは確かに美しかった。うっすらと悲しく困った感情に化粧され、いつも見る顔ではなく、また違った顔であった。
小島は恥ずかしさのあまり彼女と顔を合わせる事が出来ず、彼女に背を向け、ただ黙々と野菜を拾い続ける。
彼女はそんな小島を少しはにかんだ笑みで見ながら、野菜達を拾い始めるのだった。
そんなに数多くない汚れてしまった野菜達を拾い終わると、彼女は小島に礼を言い、足早に立ち去った。小島はその立ち去る後ろ姿を、ただただ見送っていた。名前も知らない、一人の女性の姿を。


あれ以来、彼女とは顔を合わせたら軽く挨拶する程度で、それ以上に進展する事もなく、小島にとっては無為と思える日々が続いた。
そんな日常のある日、小島は本署にいた。
本署は街の中心街から外れていた所にあり、逆に街の外れにある、と言った方が早いくらいだ。小島の勤務している交番の方が街の中心に近くにある為、そのせいで本署は小島の勤務する交番から遠い。だからという訳でもないが、毎日交番勤務に入る前に本署に立ち寄るのだが小島はあまり親近感をおぼえない。「職場」という意味では、勤務している交番と一緒なのだが、本署で働く人達は「同僚」という感じをおぼえない。結局のところ、小島はあの交番が好きなのだ。
小島がいるのは2階にある大会議室だ。詰め込めば、50人くらいが座れるスペースのある部屋で、大きな事件があった時は捜査本部などが置かれる。
本署は建ってから数十年経っているらしく、いたるところが汚い。重みのある言葉でいえば数々の歴史が刻まれているのだろうが、それ以上に老朽化が激しいので、ここで働く署員達も苦労している事が多いらしく新舎屋建設を望んでいる。
小島も本署に馴染めないのはこの老朽化のせいだな、と責任転嫁してみたりする。
しばらく部屋にいると、担当者らしき人が入ってきた。
「よし、集まったようだな。では説明をはじめる。」
担当者は説明をはじめた。
ここに集まった人間は10人程度、それも比較的若手に属するものがほとんどで、小島は今回の内容を知らされていない。数日前に今日、ここに来るようにと言われただけだ。だからここにいる人間達も前もって内容を知らされていないのだろう。
「今回、君達にやってもらうのは主に警備になる。君達も知っているだろうが、日本産業電機の汚職事件で中心人物とされる会社幹部がうちの所轄の若林町に住んでいる。」
日本産業電機の汚職事件。最近、一番話題の事件だ。
日本産業電機が自社の製品を独占的に国に対して納入されるように代議士、官僚に賄賂を贈ったという贈賄事件。日本産業電機が賄賂を贈った代議士、官僚は総勢十数名と言われている。これが検察の捜査の結果、明らかになった後、日本産業電機は一幹部が行った事とし会社側の関与を否定した、と言った事件だ。
「若林町と言えば、そうだ、小島の交番の近くだな。今回、その幹部の自宅に強制捜査が入る。それの警備をうちの署が担当する事になった。」
周りからざわめきが起こる。
今一番の事件がこんな身近にあることに、他の署員も驚いたようだ。小島もまさかこんな身近にあるとは思わないし、ましてや勤務する交番のすぐ近くにその幹部が住んでいようとは思わなかった。何気ない、いつもの交番からみる風景が小島の頭をよぎる。静寂とした街並み。そこを毎日通る見慣れた人達。そこは小島にとって犯罪とは無縁な、ある種無菌室の様な錯覚さえ憶えさせる場所だった。
小島の交番がある若林町一帯は新興住宅地の割に犯罪が多くない。いや住宅街であるから空き巣や強盗が多くなるハズだが、若林町は珍しく犯罪が少ない。それもあって最近は大きな家、俗にいう豪邸と言われる家が建つ事が多い。だから会社幹部が住んでいてもおかしくないだろう。
そんな事を考えていると、担当者の説明が終わった。担当者は当日はしっかり頼むと最後に言ったが、結局は警備の仕事であるからあまり自分には関係ないだろうとその時は思っていた。


人々は好奇の目を向け、その人々の好奇の代弁者を語る記者やマスコミは我先にと争う。
そんな中、小島は押し迫る人々を抑えようとするが、好奇心の群れと化した人々を抑えようと必死になっていた。
小島に与えられた職務は警備といっても報道陣や野次馬を整理する仕事で、屋敷は豪邸と呼ぶにふさわしい造りをしておりぐるっと高い塀に囲まれ、屋敷への入り口は正面の門しかない。そしてそのすぐ脇が小島に与えられた場所だった。中を見るにはその辺りしかなく、あとはクレーンでも使わなければ中を見ることはかなわない。つまり小島の与えられた場所はマスコミや野次馬が一番押し寄せる場所であった。
小島は何度も人の波に押し潰されそうになりながらも、自分に与えられた職務を全うしようとしていたが、何度目かのどよめきの時についに崩れてしまった。押し寄せる人波のせいで小島は完全に屋敷に向かい合う状態になってしまった。その時丁度どよめきが起こる。
屋敷の中から会社幹部とみられる容疑者が私服警官によって連れ出される。人々の好奇の目は容疑者に集まった。しかし小島の視線は容疑者にはなかった。容疑者が玄関から出てくる瞬間、玄関の陰から見つけた。
彼女だった。
あの目を奪われた彼女。
あの彼女が、容疑者の家の中にいたのだ。彼女は容疑者の家族、ないし身内のものかもしれない。彼女を知るきっかけがこんな場面であろうとは。容疑者の家族、そしてその容疑者を捕まえた人間の一人。それが小島と彼女の普通ではない関係だった。


現場での仕事が終わると、小島は本署に急いだ。小島は担当者にお願いをして容疑者の資料を見せてもらう。小島は容疑者自身に興味があるフリを装いつつ、家族構成に目をやる。そこには丁寧に写真付きで家族構成が調べてあった。
そこをじっくり探すと、あった。彼女だ。
紀島秀一郎の長女、紀島実咲。大学生。紀島家は父秀一郎、母公恵、実咲の3人家族。家族構成だけを見れば、なんの変哲もない家庭の様にみえる。しかし実際は大きな事件の渦中の家族であり、小島にしてみれば自分と反対側、つまり捕まえなければならない家族であった。
そんな事を考えていると、ふと思うことがあった。
「この家族、3人ですよね?父親が捕まったら、誰が生活をみるんでしょう?」
資料をみせてくれた担当者になんとなく聞いてみると
「さあ?」
担当者は興味なさそうな口調で答えた。担当者にしてみれば、そんな事を聞く小島の方がよほどおかしく見えるらしく、怪訝な表情をしている。
小島自身もこんな事を考えるなど思ってもみなかった。今までは加害者、被害者。捕まえる対象と守る対象がいるだけだった。今までは被害者の擁護やその家族を守る事には気を付けていた。しかし加害者、容疑者の家族の事など考えたこともない。小島がこんな事を考えるのは、紀島実咲をある種の被害者としてみているかもしれない。
父親が事件の容疑者として捕まった。それによって紀島実咲は容疑者家族となった。しかし紀島実咲自身、犯罪をおこした訳でもない。そして日本産業電機は事件自体を紀島秀一郎の独断とし、会社としての関与を否定する一方、日本産業電機は紀島秀一郎を解雇した。それによって紀島家は家長を失い、同時に収入を失った。つまり紀島秀一郎を除く紀島家の人間をとりまく環境は被害者家族のそれとほとんど変わらないのではないのか、小島はそう考え始めていた。
明くる日、小島は紀島家の前にいた。
昨日ほどではないがまだ報道陣もまばらにおり、住宅街とは不釣り合いな風景がそこにあった。しかしそれとは反対に屋敷はしんと静まり返り、窓という窓、カーテンや雨戸が閉め切っていて中を伺い知る事はできない。
まるで昨日の出来事が遠い昔の事のような雰囲気が漂っていた。小島は何も出来ず、見守る事も出来ず、ただ眺めているだけだった。


あれから数ヶ月経ち、小島はパトロールの時には必ず紀島邸を見回りする事が日課のようになっていた。紀島邸の周りにはあの頃のような喧騒はなく、今は誰も住むことない紀島の屋敷にはただ静けさの残骸だけが残っていた。
そして事件も風化されていたが小島は事件を風化させる事は出来ずに、それどころか紀島実咲に対する思いは大きくなる一方であった。
それは憧れから起こった慕情であり、それとともないやりきれない自分に対しての感情も含まれていた。
小島は彼女の存在を変化させる側にいた。つまり彼女の父親を捕まえる側に小島はいた。一般的に言えば、その事によって彼女は不幸になっただろう。それは小島の望むものではなく、反対にそれから守りたいのが本音であった。小島はそのジレンマに苛まれていた。本音とは逆の行動をとらなくてはならない自分、そして紀島実咲を守れなかった自分に苛まれていた。
ある日、夜間のパトロールに出かけていた。
若林町はさすがに住宅街で、夜は昼間以上に静寂で風もなんだか少し冷たい。
小島はなんとなく今日に限っていつものパトロール経路から少し遠くまで足を運んだ。そこは若林町の端で電車の線路が走っている為、人もあまり住んでおらず、あまりパトロールに来ない。その為、この辺の地理に小島はあまり詳しくなかった。そのせいでもないが、小島は比較的分かり易いその線路に沿って走る路地を歩いていた。
路地は薄暗く正直少し怖い、さらに吹く風が冷たく怖さに追い打ちをかけていた。小島は今日に限ってこの場所をパトロールしようと思った自分を呪った。早く交番に戻ろうと先を急いだ時、なにか叫び声らしきものを聞いた気がした。小島は足を止め、その声らしきものの聞こえた方におそるおそる進んだ。
その時はっきり聞こえた。叫び声だ。小島はその声を聞くと走り出した。
路地のさら奥、線路のすぐ脇の袋小路になっている場所で女性が男に襲われていた。女性はボロボロに切り裂かれた服をまとい、路地の角に追いつめられていた。男は捕まえた獲物を追いつめる狼のごとく女性にジワリジワリと近寄っている。女性は小島の姿を見つけると叫んだ。
「助けて!」
その声に反応した男は振り返り、小島をみつけた。瞬間、歓喜に満ちた男の顔が見る見るうちに不安と怒気に包まれていく。男は自分の優位を暴力によって確立し、その暴力によって相手を追いつめる。その事に喜びを感じ、それを快楽とする。しかしその行為が小島の出現によって邪魔され、また追いつめた相手に一瞬でも救いを考えされたその事に怒りを感じていた。
「なにをしている!」
小島は男に問いつめた。男が何をしようとしていたのは明かであったが、相手に自分をはっきり認識させる為に声をかけた。
「たすけてください!」
「うるさいっ!!」
女性の嘆願の声をうち消すかの様に、男が怒鳴る。
「うるさいっ!うるさいっ!!」
男は何度も叫ぶ。自分の怒りを放出するかのように。自分を奮い立たせるかのように。男の目には怒りが満ち、その視線は小島を見据えている。男の感情は完全に小島に向けられていた。小島は男の視線を受ける事無かったが、男がいつ動いてもいいように男の動きをみながら、女性の方に視線をおくった。
目を疑った。追いつめられ弱々しく袋小路の角に座り込んでいるのは紀島実咲だった。
間違いない、紀島実咲だ。
紀島の屋敷からいなくなっていたが、まだこの町にいたのだ。驚きもあったが、また紀島実咲に会えた事に小島は純粋に喜びを感じたが同時に怒りをも持った。
男の犯罪に対する怒りではない。慕情の対象である紀島実咲を傷つけた男に対する、ただ単純な怒り。そしてその怒りは男の手に欲望で光るナイフをみた事で加速していく。
不幸になっていった紀島実咲をさらにこの男が不幸にする。その事が許せない。前は不幸になっていく紀島実咲をただ見ている事だけで何も出来なかった自分が今、この男を排除する事によって紀島実咲を守る事が出来る。それは小島にとって喜びであったが、それは歪んだ歓喜でもあった。
「動くな」
そう言うと小島は腰の拳銃を抜き、構える。
しかし男はそれを見ると、怖じけるどころか不敵な笑みを浮かべながらナイフをちらつかせ、紀島実咲に向かいなおした。
それを見た瞬間、小島の指は動き引き金を引いた。と同時に暴音と赤がその場に散った。
怒りと嫉妬。紀島実咲を傷つけるものへの怒り。自分さえも触れたことない紀島実咲へ触れることへの嫉妬。それが小島の指を動かしていた。それはもう一警察官としてではなく、ただの男の欲望ゆえの行動であった。
そして小島の指はその欲望に逆らう事無く立て続けに2度、3度と動いた。欲望のはけ口と化した弾丸は男の体にめり込み、その都度、暴音と共に赤い血を空にまき散らす。そしてその血は小島の体に降り注ぐ。まるで欲望に染まる小島を示すかの様に。
完全に男はその場に倒れ込み動かなくなると、小島は紀島実咲に近づく。返り血を浴びた小島を紀島実咲は怯えながらも見つめたが、光の加減かその表情はよく見えなかった。
「大丈夫ですか?」
そう言いながら路地隅に倒れ込む紀島実咲にゆっくり手を差し伸べた。
人を撃ったわりには冷静に見える、その手はもう守護者の手ではなく、汚す者の手であった。怒りと嫉妬の欲望は人を撃った高揚感と裂かれた服から覗く紀島実咲の肢体を見たとき、完全に歪んだ感情に変わっていた。
紀島実咲にはそんな事は分からず、小島の差し伸べられた手をとろうと手を伸ばす紀島実咲の姿を小島は欲望に染まった笑みで見ていた。
手と手が触れ合う瞬間、遠くで声がする。
「おーい。誰かいるのか。」
その声を聞いた瞬間、小島は我に返った。
数人の男達がやって来た。小島の放った銃声を聞き駆けつけてきたのだ。男達は小島達の姿を見つけると一人は警察を呼びに駆けだし、何人かが近寄ってきた。
「大丈夫ですか?」
恐る恐る声をかけると自分達の来ていた服を紀島実咲に掛けてやったりしていた。
小島はただ呆然と立ちつくしそれを見ていた。
小島は後悔した、自分が支配されたモノに。
自分は紀島実咲を守りたいと思った。確かに結果的には紀島実咲を助けた事になるだろう。しかしそれは声がし、聞こえた事で我に返って思いとどまっただけに過ぎない。もしあそこで声を聞く事がなかったら、自分もあの男と同じになっていただろう。いやそれ以上にそれを望んでいた。
それが許せなかった。欲望を生んだ自分に。欲望に支配された自分に。守ろうと思ったものを守れなかった自分に。
そして虚ろの中、遠くでサイレンが聞こえた。


「・・・・・年の実刑に処す」
裁判長の乾いた声が響く。
小島は被告席にいた。
小島は紀島実咲を守る為に男を撃った。そして殺した。市民を守る、それが職務の警察官であったとしても相手を殺してよい訳ではない。ましてや威嚇の為に撃ったのだけならまだしも、3発撃って完全に相手を殺している。相手がナイフを持っていたとはいえ、明らかに過剰防衛だった。
そして小島の刑が決まった。殺人罪と。
しかし小島の耳にはそんな裁判長の判決の声など入らなかった。小島にはあの時の自分への後悔、ただそれしかなかった。
そんな虚ろな目をして傍聴席に座る小島を傍聴席に座る紀島実咲はじっと見ていた。
そして裁判長が閉廷を指示すると検察に促され小島は立った。しかし検察と違う方向へ小島は歩いていった。小島の目の前には傍聴席に座る紀島実咲がいた。
小島はその弱々しい口から伝えた。

「あなたを愛していました。」

未来も感情も過去に変えて。

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